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33話 お話したいことがございます。
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ガーーッ、ガーーッ……
「会いたかったよ、ララ」
「ちょっと触らないでくださいっ、門前課長!」
「いいじゃないか。どうせ店で同じことするんだ。なぁ触らせろよ。毎週指名してる客だぞ」
「だから、ここ会社です!」
「社内がスリルあって興奮するんだよ。ヘルス嬢のこと、黙ってやってんだから少しはサービスしろ。ひひひひひ……」
ガーーッ、ガーーッ……
「い、いやぁぁぁ……」
──な、何よ、これは!?
東薔薇から貰った音声データを聴き、私は大変ショックを受けていた。はっきり“門前”と呼んでるし、確かに尊敬してる部長の声で間違いない。これでララ様が風俗で働き、そこへ部長が通っていたこと、それに社内で脅しながらセクハラしていた事実が伺える。
『花……あなたが彼に特別な感情を持ってたようだから言い出しにくかったの』
『ララ様、大変辛い内容です。でもこれは有力な情報です。私はこの事実を警察と人事に告発し、その上で部長と面会致します』
少し涙ぐんた。ララ様が可哀想だと思った。それと同時に部長がそんな人だったなんて悲し過ぎる。
いえ……だが、しかしだ。これは絶対許される話ではないっ。
カタカタカタカタッ……!
私は言いようの無い感情をぶつけるため、荒々しくキーボードを叩きまくりながらメールを打った。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
件名: セクシャルハラスメントの告発
人事労政Gr 女性相談室担当者様
購買部外注課の綾坂花と申します。この度、重要な事案についてご相談があり、ご連絡差し上げました。
三年前、当部に所属していた伊集院ララ様(風俗嬢殺人事件の被害者)が、当時の上司であり現在の部長である門前真照氏からセクシャルハラスメントを受けていた事実が明らかになりました。
すでに警察からの問い合わせもあるかと思いますが、添付のボイスレコーダーを確認する限り、門前氏が頻繁に伊集院様の風俗店を訪れていたこと、彼女への脅迫などが聞き取れます。
遺憾ではありますが、警察に情報提供を行いますので、門前氏の海外出向を保留していただくようお願い申し上げます。
購買部外注課 綾坂花
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
『花、感謝してるわ』
『いいえ、あの音声を聞いた以上、疑う余地はありません。ララ様の証言が事実ですから……』
私に宿ったララ様の魂。それを他人に説明するのは難しいけど、真実は一つしかないのだ。
それから私は人目を避けて屋上に向かい、警察に通報した。捜査は難航していたようだが、この情報はかなり有力な手がかりとなったようだ。
そしてデスクに戻ると、人事労政Grからすぐに返信が届いていた。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
RE: セクシャルハラスメントの告発
綾坂様
大変貴重な情報提供、ありがとうございます。この件については警察とも捜査協力を行っております。事の重大さを考慮し、勝手ながら執行役員にも相談を進めております。そのため、警察への連絡についてはしばらくお待ちいただければと存じます。
人事労政Gr 女性相談室
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
いえ、もうしちゃいましたよ。しかし、これで一旦は彼の出向は保留にされるでしょう。
このメールは無視して、直ちに警察から指定されたアドレスへ音声データを送信し、それと同時に自分の携帯へも送信した。
さて、準備は整いました。私はアポイント無しで、総勢二百名のフロアトップである部長席へ向かう。
「……門前部長、ご挨拶に伺いました」
オンライン会議が終わったばかりの部長に声をかけた。
「ん、君は?」
いつも優しく微笑んでくれる部長だけど、今はその目がいやらしく見える。
「外注課の綾坂花です。お時間を頂けないでしょうか?二人っきりでお話したいことがございます」
「会いたかったよ、ララ」
「ちょっと触らないでくださいっ、門前課長!」
「いいじゃないか。どうせ店で同じことするんだ。なぁ触らせろよ。毎週指名してる客だぞ」
「だから、ここ会社です!」
「社内がスリルあって興奮するんだよ。ヘルス嬢のこと、黙ってやってんだから少しはサービスしろ。ひひひひひ……」
ガーーッ、ガーーッ……
「い、いやぁぁぁ……」
──な、何よ、これは!?
東薔薇から貰った音声データを聴き、私は大変ショックを受けていた。はっきり“門前”と呼んでるし、確かに尊敬してる部長の声で間違いない。これでララ様が風俗で働き、そこへ部長が通っていたこと、それに社内で脅しながらセクハラしていた事実が伺える。
『花……あなたが彼に特別な感情を持ってたようだから言い出しにくかったの』
『ララ様、大変辛い内容です。でもこれは有力な情報です。私はこの事実を警察と人事に告発し、その上で部長と面会致します』
少し涙ぐんた。ララ様が可哀想だと思った。それと同時に部長がそんな人だったなんて悲し過ぎる。
いえ……だが、しかしだ。これは絶対許される話ではないっ。
カタカタカタカタッ……!
私は言いようの無い感情をぶつけるため、荒々しくキーボードを叩きまくりながらメールを打った。
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件名: セクシャルハラスメントの告発
人事労政Gr 女性相談室担当者様
購買部外注課の綾坂花と申します。この度、重要な事案についてご相談があり、ご連絡差し上げました。
三年前、当部に所属していた伊集院ララ様(風俗嬢殺人事件の被害者)が、当時の上司であり現在の部長である門前真照氏からセクシャルハラスメントを受けていた事実が明らかになりました。
すでに警察からの問い合わせもあるかと思いますが、添付のボイスレコーダーを確認する限り、門前氏が頻繁に伊集院様の風俗店を訪れていたこと、彼女への脅迫などが聞き取れます。
遺憾ではありますが、警察に情報提供を行いますので、門前氏の海外出向を保留していただくようお願い申し上げます。
購買部外注課 綾坂花
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『花、感謝してるわ』
『いいえ、あの音声を聞いた以上、疑う余地はありません。ララ様の証言が事実ですから……』
私に宿ったララ様の魂。それを他人に説明するのは難しいけど、真実は一つしかないのだ。
それから私は人目を避けて屋上に向かい、警察に通報した。捜査は難航していたようだが、この情報はかなり有力な手がかりとなったようだ。
そしてデスクに戻ると、人事労政Grからすぐに返信が届いていた。
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RE: セクシャルハラスメントの告発
綾坂様
大変貴重な情報提供、ありがとうございます。この件については警察とも捜査協力を行っております。事の重大さを考慮し、勝手ながら執行役員にも相談を進めております。そのため、警察への連絡についてはしばらくお待ちいただければと存じます。
人事労政Gr 女性相談室
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
いえ、もうしちゃいましたよ。しかし、これで一旦は彼の出向は保留にされるでしょう。
このメールは無視して、直ちに警察から指定されたアドレスへ音声データを送信し、それと同時に自分の携帯へも送信した。
さて、準備は整いました。私はアポイント無しで、総勢二百名のフロアトップである部長席へ向かう。
「……門前部長、ご挨拶に伺いました」
オンライン会議が終わったばかりの部長に声をかけた。
「ん、君は?」
いつも優しく微笑んでくれる部長だけど、今はその目がいやらしく見える。
「外注課の綾坂花です。お時間を頂けないでしょうか?二人っきりでお話したいことがございます」
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