わたくしのこと“干物女”って言いましたよね?

鼻血の親分

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31話 そんな過去があったなんて…

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『まず、わたくしが風俗嬢になった理由だけどー』
『は、はい。……ゴクン』

これは覚悟を決めて聞かねば!あえて今まで聞かなかったララ様のヒストリー。だって殺人とか身近にあり得ないし普通に怖いからね。

『簡単に言えば、お金を稼ぐためよ。海外で暮らす夢があったからね』
『お金……ですか』

話を要約するとこうだ。才能溢れる彼女は大学卒業後に実家へ戻り、茶道の道に進むというレールが敷かれていた。でも、お家を継ぐ気はなく、ご両親の反対を押し切って就職したのだ。そのため援助がなくなり都会でギリギリの生活をしていたらしい。

『生活も苦しかったけど、子供の頃から毎年旅行してた海外に素敵な思い出がたくさんあってね、いつか移住したいって考えるようになったの』

なるほど。で、手っ取り早く稼ぐ方法として風俗嬢……なのか?うーむ、私には到底理解し難い思考回路だ。

『ヘルスだから、本番ないし』

いやいや、そういう問題じゃないよ。

しかし、ここから想像を超えた展開が待っていた。偶然にしては出来過ぎなのだ。

『わたくし、実は購買部、部品購買課だったの』
『……はい?』
『まぁ、一年で退職したけどね。花の先輩よ』

えっと、同じ会社?しかも購買部ですって?つまり、ララ様もこのフロアに居たってこと?

『その時の課長が門前だったのよ』
『ええええぇぇぇぇーーーー!?』

余りにも衝撃的な情報に、私の脳味噌はパンク寸前になった。

な、何故もっと早く言ってくれなかったの!?

『言うタイミングが無かったし。でね、彼には良くしてもらってたけど……』

ララ様はOLしながら風俗で働いていた。そこへ部長がたまたま店舗に訪れてバレたそうだ。そこからおかしな関係になっていく。勤務中、人の居ない所でセクハラし放題と彼は色情狂へ変貌したのだ。

信じられないよ。あの部長が?

お話を聞いてもピンとこなかった。

『結局、セクハラされるのが嫌で会社辞めちゃったけどね』

その後は風俗嬢一本で稼いでいたけど、足繁くララ様の元へに通う部長は交際を迫っていたらしい。それは余りにもしつこく、家を調査するなど最早、彼はストーカーになっていた。

『わたくし、会社でセクハラされてたボイスレコーダー(携帯)の存在をチラつかせて、ストーカーをやめさせようと接客中口論になって……』

それで激昂した部長は、お部屋にあった果物ナイフを盗んで仕事終わりのララ様を店舗近くで待ち伏せし、背後から無理やり刺したという。

『酷いです。自分勝手も甚だしい』
『多分、会社に訴えることを恐れて、わたくしを刺し殺し携帯を奪って逃げたと思うの』
『ララ様、そのボイスレコーダーは本物ですか?それとも脅しですか?』
『本物よ。わたくしも花みたいなこと、してたのよね』

そうだったんだ。気丈に見えたララ様だけど、そんな過去があったなんて……部長の変貌と言い、未だに信じられない話だ。

だけど何の証拠もない。どうやって彼を問い詰めればいいの?

『一つ、方法と言うか可能性があるわ』
『それは?』
『そのボイスレコーダーのデータを当時の教育係にメールしてるの。彼に相談してたけど……結局動いてくれなかったわ。なので、まだ保存してるか分かんないけどね』
『誰ですか?その頼りない教育係って?』
『部品購買課でわたくしと歳が近い人ってだいたい分かるでしょ』

ん?だから……?ハッ!

つい、あの男性が浮かんでしまった。

『ああっ、もしかして主任ですかっ!?』



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