30 / 36
30話 むむむむりですよ!人殺しなんて!
しおりを挟む
あれから絵梨花は姿を現さなくなった。やはり御父様の出向先である子会社に異動したようだ。そしてお局も数日後、付属病院に行くことが決まった。希望部署は全て不採用だったけど、病院から事務の緊急募集があり、直ぐに採用されたらしい。
そんなお局が最後の出社で私に挨拶してきた。
「あ、綾坂さん、今から異動するね。これまで本当にすいませんでした」
「は……はい。お元気で」
「あの、翔くんのこと、よろしくお願いします」
ん?えっと、よろしくって言われてもね。つか保護者ですか、あなた?
確かに私は毎週彼のマンションに出入りして一見恋人っぽいけど実はまだまだなのです。何とか進展させたいのは山々ですが……
そう言おうとした。でも彼女はダンボール抱えて早々フロアから去って行こうとする。そんなお局を後ろから見送るしかなかった。
『花、これでモラハラは解決したわねー』
『はい。今後はコミュ症を克服しながら頑張っていきます。ララ様、ご指導ありがとうございました』
心の底からそう思う。
よくぞ私に宿ってくれた。この偶然に感謝しなければね!
『まぁ確かに凄い偶然よねぇ。だって殺人犯見つけちゃったもん』
えっ……?
『最初の出会い、覚えてる?わたくし、お店で太客に殺されたって言ったわよね?』
そ、そうだった。思い出した。ララ様はその犯人を見つけ出し、復讐するために私に宿ったのだ。
『本当ですか?因みにどなたでしょうか?』
『驚かないでね。“門前真照”、ここの部長さんよ』
『は、はぁ?じ、冗談はよしてください!』
何言ってるんです?あの御方が風俗狂いで殺人犯だなんて人違いもいいところだ。
『間違いない。でも時間がないわ。彼は逃亡するつもりで海外出向を志願したの。花、復讐よ!』
い、いやいや、そんな奇想天外な話って。
『落ち着いてください。証拠はありますか?』
『彼はわたくしの名刺を持ってるはず。あと、もしかしたら携帯もね』
『それだけでは……ん、確かにララ様の携帯持ってたら怪しいな』
だけど聞いて素直に認めるとは思えないし、名刺や携帯などの証拠品は処分してるに違いない。
『彼を問い詰めるわよ』
『ララ様、仮に部長が犯人だとしたらどうしますか?わ、私、殺人とか出来ませんよ!むむむむりですよ!人殺しなんて!』
『うふふ。最初はそのつもりで憑依したけど、途中から気が変わったわ。大好きな綾坂花を犯罪者にしたくないからねー』
では?
『とにかく、彼と面談するしかない。自白させて自首してくれればそれでいいの』
う、うーむ。部長にお時間頂くのは何とかするとして、問題は証拠も薄い中でどうお話を詰めればいいのかな?
『あの、そもそも何で殺されたのです?』
ララ様のことは深く知らない。ご実家が茶道の家元で何故か風俗嬢を生業にしていたくらいだ。面談する上であらましを知っておかないとお話にならない。それに、尊敬する部長が殺人犯とはどうしても思えないのだ。
『そうね。詳しく話しする時が来たわねぇ』
ララ様には助けて頂いた恩がある。今度は私が力になりたい。どういう結果であろうと必ず解決してみせましょうとも!
そんなお局が最後の出社で私に挨拶してきた。
「あ、綾坂さん、今から異動するね。これまで本当にすいませんでした」
「は……はい。お元気で」
「あの、翔くんのこと、よろしくお願いします」
ん?えっと、よろしくって言われてもね。つか保護者ですか、あなた?
確かに私は毎週彼のマンションに出入りして一見恋人っぽいけど実はまだまだなのです。何とか進展させたいのは山々ですが……
そう言おうとした。でも彼女はダンボール抱えて早々フロアから去って行こうとする。そんなお局を後ろから見送るしかなかった。
『花、これでモラハラは解決したわねー』
『はい。今後はコミュ症を克服しながら頑張っていきます。ララ様、ご指導ありがとうございました』
心の底からそう思う。
よくぞ私に宿ってくれた。この偶然に感謝しなければね!
『まぁ確かに凄い偶然よねぇ。だって殺人犯見つけちゃったもん』
えっ……?
『最初の出会い、覚えてる?わたくし、お店で太客に殺されたって言ったわよね?』
そ、そうだった。思い出した。ララ様はその犯人を見つけ出し、復讐するために私に宿ったのだ。
『本当ですか?因みにどなたでしょうか?』
『驚かないでね。“門前真照”、ここの部長さんよ』
『は、はぁ?じ、冗談はよしてください!』
何言ってるんです?あの御方が風俗狂いで殺人犯だなんて人違いもいいところだ。
『間違いない。でも時間がないわ。彼は逃亡するつもりで海外出向を志願したの。花、復讐よ!』
い、いやいや、そんな奇想天外な話って。
『落ち着いてください。証拠はありますか?』
『彼はわたくしの名刺を持ってるはず。あと、もしかしたら携帯もね』
『それだけでは……ん、確かにララ様の携帯持ってたら怪しいな』
だけど聞いて素直に認めるとは思えないし、名刺や携帯などの証拠品は処分してるに違いない。
『彼を問い詰めるわよ』
『ララ様、仮に部長が犯人だとしたらどうしますか?わ、私、殺人とか出来ませんよ!むむむむりですよ!人殺しなんて!』
『うふふ。最初はそのつもりで憑依したけど、途中から気が変わったわ。大好きな綾坂花を犯罪者にしたくないからねー』
では?
『とにかく、彼と面談するしかない。自白させて自首してくれればそれでいいの』
う、うーむ。部長にお時間頂くのは何とかするとして、問題は証拠も薄い中でどうお話を詰めればいいのかな?
『あの、そもそも何で殺されたのです?』
ララ様のことは深く知らない。ご実家が茶道の家元で何故か風俗嬢を生業にしていたくらいだ。面談する上であらましを知っておかないとお話にならない。それに、尊敬する部長が殺人犯とはどうしても思えないのだ。
『そうね。詳しく話しする時が来たわねぇ』
ララ様には助けて頂いた恩がある。今度は私が力になりたい。どういう結果であろうと必ず解決してみせましょうとも!
0
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説


極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スカイ・コネクト
宮塚恵一
現代文学
「センパイ、どこでも空はつながってるんすよ」
杉並蓮司は趣味の野鳥観察以外には外へ出ることもない、日々をただ惰性で生きる青年。
普段のように大学の元後輩である花恋と川沿いを歩いていると、高校時代の後輩、真琴と再会する。
真琴は大学の演劇サークルの座長になっており、蓮司が昔書いた脚本を劇の題材に使いたいと申し出る。
六華 snow crystal 8
なごみ
現代文学
雪の街札幌で繰り広げられる、それぞれのラブストーリー。
小児性愛の婚約者、ゲオルクとの再会に絶望する茉理。トラブルに巻き込まれ、莫大な賠償金を請求される潤一。大学生、聡太との結婚を夢見ていた美穂だったが、、

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる