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23話 ご自身の立場を理解されてないようね。
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「綾坂さん。なーんであなた如きが東薔薇様と秘密を共有してるの?わたくしに報告しなさいよ~!」
事前にサプライズを聞かされていなかった絵梨花はご機嫌斜めの様子。いえ、それだけではない。私と主任が親しくしていたことも気に喰わないのだ。ちょっと言い返そうかと思ったけど、サプライズが無事終了するまで問題は起こさない方が賢明だと判断した。
“綾坂さん、池園さん、準備オッケーですか?”
唐突にイヤホン式のインカムから主任の声が聞こえてくる。「はい」とお返事したけど、絵梨花の猫撫で声で上書きされた。
“はーい。東薔薇様~、いつでもどうぞ~”
既に謝恩会は始まっている。私は絵梨花に花束を渡し、会場のステージ袖で待機していた。
“綾坂さんは控室へ向かってください”
“かしこまりました、主任”
部長のご挨拶が聞けないのは残念だけど、専務をエスコートしなければならない。
まぁ役割があった方がかえって気が楽でもある。丸テーブルにちょこんと腰掛けても皆さんと上手くコミュニケーションを取れるか不安だったのだ。
『さぁ、そろそろ絵梨花に引導を渡す時間になったわねー』
『はい、最終宣告です。ララ様』
控室から主任の指示通り、神を会場入口までご案内するとちょうど部長の挨拶が終わり、大きな歓声が聞こえてきた。絵梨花が愛想振りまいて花束を渡す姿が少し痛々しく感じる。そして……
“池園専務取締役、御登壇”
司会進行の主任がPC操作をして画面が切り替わった。スクリーンに映し出されたもう一つのサプライズに会場内からざわめきが聞こえてくる。
突然の神御来光に動揺する会場を見て絵梨花も大満足の様子。自分の力を誇示できるとでも思っているのでしょう。何の花束贈呈なのか考えれば分かりそうなものだけど、浮かれた彼女は理解されていない。そして、ステージ袖に戻ってきた彼女は御父様の威光を笠に着て、私への視線も冷酷そのものだ。
「その目障りな胸って本物だったのね~。わたくし、てっきりお詰め物でもしてるのかと思ってましたわ。オホホホホ……」
はいはい、そうですか。返事する気もないから聞こえないふりしとこ。
「ふん、そんなに胸を強調して男性を惑わそうなんて最低よぉ。いやらしいわね~」
流石に腹が立つ。あなたも結構な露出ですわよ? 純白ウエディングドレス擬きに胸元ぱっくりって、お気づきにならないのかしら。
「まさか、東薔薇様を狙ってるんじゃないでしょうね? まぁ、あなたでは無理だと思うけど~」
悪態つくにも程があるな。最後だから言わせておこうと思ったけど、少し反撃しますわ。
「池園さん、私のことより御父様のご挨拶を聞いてあげてください」
「はぁぁ?何であなたにそんなこと言われなきゃなんないのよ!」
「最後のご挨拶ですから!」
「さいご……?」
まだご自身の立場を理解されていないようね。
私はボイスレコーダーのスイッチを絵梨花の目の前でOFFした。
「あなたの悪態は全て録音しました。なので今からはオフレコです」
「なっ……!?」
絵梨花は突然の反撃に驚きのあまり言葉が詰まった。
「専務は子会社へ出向が決まったわ。謝恩会に呼ばれたのはそのご挨拶。これはどういう意味か、馬鹿なあなたでも理解できるわよね?まぁ、大きな後ろ盾を失ってご愁傷様だこと。うふふ。……では、感謝を込めて花束贈呈をお願いしま~す」
潮目は変わる。ここからだ。
事前にサプライズを聞かされていなかった絵梨花はご機嫌斜めの様子。いえ、それだけではない。私と主任が親しくしていたことも気に喰わないのだ。ちょっと言い返そうかと思ったけど、サプライズが無事終了するまで問題は起こさない方が賢明だと判断した。
“綾坂さん、池園さん、準備オッケーですか?”
唐突にイヤホン式のインカムから主任の声が聞こえてくる。「はい」とお返事したけど、絵梨花の猫撫で声で上書きされた。
“はーい。東薔薇様~、いつでもどうぞ~”
既に謝恩会は始まっている。私は絵梨花に花束を渡し、会場のステージ袖で待機していた。
“綾坂さんは控室へ向かってください”
“かしこまりました、主任”
部長のご挨拶が聞けないのは残念だけど、専務をエスコートしなければならない。
まぁ役割があった方がかえって気が楽でもある。丸テーブルにちょこんと腰掛けても皆さんと上手くコミュニケーションを取れるか不安だったのだ。
『さぁ、そろそろ絵梨花に引導を渡す時間になったわねー』
『はい、最終宣告です。ララ様』
控室から主任の指示通り、神を会場入口までご案内するとちょうど部長の挨拶が終わり、大きな歓声が聞こえてきた。絵梨花が愛想振りまいて花束を渡す姿が少し痛々しく感じる。そして……
“池園専務取締役、御登壇”
司会進行の主任がPC操作をして画面が切り替わった。スクリーンに映し出されたもう一つのサプライズに会場内からざわめきが聞こえてくる。
突然の神御来光に動揺する会場を見て絵梨花も大満足の様子。自分の力を誇示できるとでも思っているのでしょう。何の花束贈呈なのか考えれば分かりそうなものだけど、浮かれた彼女は理解されていない。そして、ステージ袖に戻ってきた彼女は御父様の威光を笠に着て、私への視線も冷酷そのものだ。
「その目障りな胸って本物だったのね~。わたくし、てっきりお詰め物でもしてるのかと思ってましたわ。オホホホホ……」
はいはい、そうですか。返事する気もないから聞こえないふりしとこ。
「ふん、そんなに胸を強調して男性を惑わそうなんて最低よぉ。いやらしいわね~」
流石に腹が立つ。あなたも結構な露出ですわよ? 純白ウエディングドレス擬きに胸元ぱっくりって、お気づきにならないのかしら。
「まさか、東薔薇様を狙ってるんじゃないでしょうね? まぁ、あなたでは無理だと思うけど~」
悪態つくにも程があるな。最後だから言わせておこうと思ったけど、少し反撃しますわ。
「池園さん、私のことより御父様のご挨拶を聞いてあげてください」
「はぁぁ?何であなたにそんなこと言われなきゃなんないのよ!」
「最後のご挨拶ですから!」
「さいご……?」
まだご自身の立場を理解されていないようね。
私はボイスレコーダーのスイッチを絵梨花の目の前でOFFした。
「あなたの悪態は全て録音しました。なので今からはオフレコです」
「なっ……!?」
絵梨花は突然の反撃に驚きのあまり言葉が詰まった。
「専務は子会社へ出向が決まったわ。謝恩会に呼ばれたのはそのご挨拶。これはどういう意味か、馬鹿なあなたでも理解できるわよね?まぁ、大きな後ろ盾を失ってご愁傷様だこと。うふふ。……では、感謝を込めて花束贈呈をお願いしま~す」
潮目は変わる。ここからだ。
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