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22話 完膚なきまで打ちのめしたい!
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お局がエスカレーターの前でそわそわしていた。誰かを待ってるようだ。
面倒くさいな。私もそこで神と異名を持つ池園専務をお迎えしなきゃならないのにぃ。
『ララ様、彼女は何をしてるのでしょうか?』
『男を待ってるに決まってるわ』
『え? お局にそんな男性はいないと思いますが』
『ふふん。今日は一段と厚化粧よねー。張り切っちゃって。楽しみねぇ』
彼女に浮いた話など聞いたことがない。絵梨花Grのミーティングを盗撮、盗聴している限りでは皆無なのだ。
誰なの……?
その時、不意にメールが届いた。翔様からだ。
“花さん、今ホテルに着きました”
まぁ、態々のご連絡嬉しいですよ。私もあなたに逢いたい。専務が到着するまでに逢えればいいな。
するとエスカレーターから大声が聞こえてきた。お局の声だ。しかも猫撫での半オクターブ高音で。
「翔くーーん!」
はいぃぃ!?翔くーんですって!?
『やっぱりね。彼女は翔のファンなのよ』
『ど、どういうことでしょうか?』
『翔から聞いたことがあるの。書道クラブの先輩に好かれてるって』
あ、そうだ。翔様とお局は繋がってたんだ。
『でも、翔は全くその気がない。花、見せつけてやりなさい。ついでに東薔薇の前でもね!』
えっと、見せつけるって言われても──
だけど、私もエスカレーターの前に行かなくてはならない。神をエスコートする任務があるのだ。仕方ない。彼女の近くに行きたくはないけど……
やがて、翔様が上がってくる姿が見えた。お局は私が近くに居ることすら気づかないくらい彼に釘付けなご様子。
「まぁ、素敵なスーツだことぉ!」
何やら近所の叔母さんがアイドル相手にはしゃいでるみたいだ。
「お久しぶりですね」
「ようこそ、いらっしゃいました。えへへ」
あんなデレデレしたお局を見たことがないわ。いっつも怒って怖い印象しかないからね。
彼女が翔様にベタベタ引っつきながら会場に行こうと振り向いた瞬間、私の仁王立ちしてる姿が目に入ったようだ。途端にデレ顔からキッっと鬼の形相へ変化する。「退きなさいよ!」とでも言いたげな素振りに思わず後退りした。
こ、こわっ!
でも、翔様も同時に私に気づいたのだ。
「わぁー、花さんだー!」
「えっ!?し、翔く……ん?」
見せつけてやるチャンスが到来した。自信は然程ないけど。
「翔さん、連絡ありがとうございます。お待ちしてました」
「あ、そのドレスって?」
「お姉様のお借りしてます。私には派手ですけど」
「いいや、すごく似合ってるよ。綺麗だ」
「ありがとう、嬉しいですわ」
完全に二人の世界に入っていた。お局はぽつんと取り残され、口を大きく開いて固まっている。私は専務のお迎えなどほっといて彼をエスコートしてしまった。オロオロしながら後を歩くお局に、ララ様からの失笑が聞こえてくる。
『うふふ、動揺してるわねー。お局ったら』
さらに、翔様と親しくしてる姿は絵梨花や主任の目にも映った。
「あっ……」
明らかに東薔薇主任は私を目で追っている。
『いいわね、花。皆んなジェラシーに燃えてるわ』
『は、はい』
自分でも信じられない現象が起こってる。だけど驚いてる場合ではない。今日こそは絵梨花やお局を完膚なきまで打ちのめしたいのだ。
私の“反撃”は始まったばかりなのです!
面倒くさいな。私もそこで神と異名を持つ池園専務をお迎えしなきゃならないのにぃ。
『ララ様、彼女は何をしてるのでしょうか?』
『男を待ってるに決まってるわ』
『え? お局にそんな男性はいないと思いますが』
『ふふん。今日は一段と厚化粧よねー。張り切っちゃって。楽しみねぇ』
彼女に浮いた話など聞いたことがない。絵梨花Grのミーティングを盗撮、盗聴している限りでは皆無なのだ。
誰なの……?
その時、不意にメールが届いた。翔様からだ。
“花さん、今ホテルに着きました”
まぁ、態々のご連絡嬉しいですよ。私もあなたに逢いたい。専務が到着するまでに逢えればいいな。
するとエスカレーターから大声が聞こえてきた。お局の声だ。しかも猫撫での半オクターブ高音で。
「翔くーーん!」
はいぃぃ!?翔くーんですって!?
『やっぱりね。彼女は翔のファンなのよ』
『ど、どういうことでしょうか?』
『翔から聞いたことがあるの。書道クラブの先輩に好かれてるって』
あ、そうだ。翔様とお局は繋がってたんだ。
『でも、翔は全くその気がない。花、見せつけてやりなさい。ついでに東薔薇の前でもね!』
えっと、見せつけるって言われても──
だけど、私もエスカレーターの前に行かなくてはならない。神をエスコートする任務があるのだ。仕方ない。彼女の近くに行きたくはないけど……
やがて、翔様が上がってくる姿が見えた。お局は私が近くに居ることすら気づかないくらい彼に釘付けなご様子。
「まぁ、素敵なスーツだことぉ!」
何やら近所の叔母さんがアイドル相手にはしゃいでるみたいだ。
「お久しぶりですね」
「ようこそ、いらっしゃいました。えへへ」
あんなデレデレしたお局を見たことがないわ。いっつも怒って怖い印象しかないからね。
彼女が翔様にベタベタ引っつきながら会場に行こうと振り向いた瞬間、私の仁王立ちしてる姿が目に入ったようだ。途端にデレ顔からキッっと鬼の形相へ変化する。「退きなさいよ!」とでも言いたげな素振りに思わず後退りした。
こ、こわっ!
でも、翔様も同時に私に気づいたのだ。
「わぁー、花さんだー!」
「えっ!?し、翔く……ん?」
見せつけてやるチャンスが到来した。自信は然程ないけど。
「翔さん、連絡ありがとうございます。お待ちしてました」
「あ、そのドレスって?」
「お姉様のお借りしてます。私には派手ですけど」
「いいや、すごく似合ってるよ。綺麗だ」
「ありがとう、嬉しいですわ」
完全に二人の世界に入っていた。お局はぽつんと取り残され、口を大きく開いて固まっている。私は専務のお迎えなどほっといて彼をエスコートしてしまった。オロオロしながら後を歩くお局に、ララ様からの失笑が聞こえてくる。
『うふふ、動揺してるわねー。お局ったら』
さらに、翔様と親しくしてる姿は絵梨花や主任の目にも映った。
「あっ……」
明らかに東薔薇主任は私を目で追っている。
『いいわね、花。皆んなジェラシーに燃えてるわ』
『は、はい』
自分でも信じられない現象が起こってる。だけど驚いてる場合ではない。今日こそは絵梨花やお局を完膚なきまで打ちのめしたいのだ。
私の“反撃”は始まったばかりなのです!
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