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19話 彼と直接お話したことないのに!
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「あのぉ、PCの調子が悪いんです……」
有志一同なる男性陣のシナリオ通り、ビンゴゲームの機材を持ち帰った私はPCの異常に気がつき、後輩モブ男子の元で手続きを行った。
終始、絵梨花やお局のニヤけた視線が突き刺さる。そしてBCCで情報を共有した上司も、ちらりと注目してるようだ。
とはいえ、何もアクションしてくれないのね。
「綾坂さん、後は僕にお任せ下さい」
「は、はい。宜しくお願い致します」
妙な気分だ。下手くそな演技してるからかな?
『花、本当の意味で有志一同になったわね』
『そうであれば彼らの心変わりは何でしょう?』
『そうねぇ、花が自信持ったからじゃない?』
自信……ですか。
確かに全容は解禁してないものの、スタイルや目元は見た目でも分かるくらい美しくなった。それから髪を染めて気を使うようになった。爪も綺麗だ。自信と直結してるか不明だけど、反撃を試みるくらい精神的に強くなった。
でも、それだけではないと推測する。
彼らが絵梨花の傲慢さに嫌気を差したのも一因だけど、私の知らない何かが働いてるのだ。絶対王者に不利な状況が、この空気を生み出したのではないだろうか……?
その解答は有休明けの日、思いがけない人からヒントを貰うことになる。
出勤してPCを見ると、私のシリアルナンバーに戻っていたので問題なく立ち上がり、データが無事だったことを確認した。
何ごともなかったかのようだ。有志一同が絵梨花を裏切って私を助けてくれたのか。……感謝のメールを送らねば。と、同時に彼のことモブと呼ぶのはやめよう。
ふと、受信画面を眺めていたら、有休の間に色々な情報が飛び交っていたようだ。絵梨花が主任を誘って景品を購入した経緯など、彼が私をBCCに入れて返信してるから、全ての動きが掴める。そして、有志一同からの業務完了メールもあった。まずはお礼の返信をすることに。もちろん、上司をBCCに入れて。
その時、不意に一通の新着メールが届いた。
ん?これは……?
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
件名: 謝恩会の相談
綾坂さん、急ぎお話があります。会議ブースまでお越しいただけますか?
東薔薇ハルト
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
うわぁぁ……怖い!なんでしょうこれ!彼と直接話したこともないのに、どうしてこんな連絡がくるの!?
『ララ様、恐ろしいです。恥ずかしいです。BCCだけで結ばれた奇怪な関係でどのように振る舞えばいいのでしょう? ……ララ様?』
最近のララ様はたまに反応がないことがある。眠っているらしい。こんな大事な時にアドバイスがもらえないのは辛い。でも、ただちに行動しなければ。
ああっ、もう、どうしたらいいのよ!
幸い、今日は絵梨花やお局が在宅なので彼女たちの目を気にせずに済む。
よし、堂々としよう。根拠のない自信だけど胸を張って背筋を伸ばして歩こう。
──そして、脚を組んで偉そうな彼を前に私はおっぱいをぶるんぶるん揺らせながら登場した。鼻息も少々荒い。極度の恐怖や緊張、恥ずかしい気持ちを隠すかのように戦闘態勢なのだ。
「綾坂です。用件を伺いにまいりました!」
「あ、ああ……」
少しばかり彼は引いている。私のただならぬ雰囲気を感じ取ったのだろう。それにしても、胸元をじろじろ見るのはいかがなものか?かなり失礼だ。
「ま、まぁ、座って」
「はい」
彼は一枚の資料をテーブルに置いた。私が作成した席表だ。
「謝恩会でサプライズを計画している」
「サプライズ……ですか?」
「祝いの花束をもう2つ追加で発注してくれないか?グレードは高い方がいい」
「承知しました。……で、この件については」
「もちろん、池園さんにはまだ知らせていない」
「なぜですか?これまでの指示は彼女を通して来たはずですが?」
「話せば理由が分かる。ただし内密にしておいてくれ」
「了解しました」
「それに先立ち、もう一つお願いがある」
「はい?」
焦らすわね、もう何なのよ。
「……さんの席をホテルに用意させるよう手配してくれ。席は一番上座だ。ここ!」
えっ、その方って……!?
有志一同なる男性陣のシナリオ通り、ビンゴゲームの機材を持ち帰った私はPCの異常に気がつき、後輩モブ男子の元で手続きを行った。
終始、絵梨花やお局のニヤけた視線が突き刺さる。そしてBCCで情報を共有した上司も、ちらりと注目してるようだ。
とはいえ、何もアクションしてくれないのね。
「綾坂さん、後は僕にお任せ下さい」
「は、はい。宜しくお願い致します」
妙な気分だ。下手くそな演技してるからかな?
『花、本当の意味で有志一同になったわね』
『そうであれば彼らの心変わりは何でしょう?』
『そうねぇ、花が自信持ったからじゃない?』
自信……ですか。
確かに全容は解禁してないものの、スタイルや目元は見た目でも分かるくらい美しくなった。それから髪を染めて気を使うようになった。爪も綺麗だ。自信と直結してるか不明だけど、反撃を試みるくらい精神的に強くなった。
でも、それだけではないと推測する。
彼らが絵梨花の傲慢さに嫌気を差したのも一因だけど、私の知らない何かが働いてるのだ。絶対王者に不利な状況が、この空気を生み出したのではないだろうか……?
その解答は有休明けの日、思いがけない人からヒントを貰うことになる。
出勤してPCを見ると、私のシリアルナンバーに戻っていたので問題なく立ち上がり、データが無事だったことを確認した。
何ごともなかったかのようだ。有志一同が絵梨花を裏切って私を助けてくれたのか。……感謝のメールを送らねば。と、同時に彼のことモブと呼ぶのはやめよう。
ふと、受信画面を眺めていたら、有休の間に色々な情報が飛び交っていたようだ。絵梨花が主任を誘って景品を購入した経緯など、彼が私をBCCに入れて返信してるから、全ての動きが掴める。そして、有志一同からの業務完了メールもあった。まずはお礼の返信をすることに。もちろん、上司をBCCに入れて。
その時、不意に一通の新着メールが届いた。
ん?これは……?
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
件名: 謝恩会の相談
綾坂さん、急ぎお話があります。会議ブースまでお越しいただけますか?
東薔薇ハルト
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うわぁぁ……怖い!なんでしょうこれ!彼と直接話したこともないのに、どうしてこんな連絡がくるの!?
『ララ様、恐ろしいです。恥ずかしいです。BCCだけで結ばれた奇怪な関係でどのように振る舞えばいいのでしょう? ……ララ様?』
最近のララ様はたまに反応がないことがある。眠っているらしい。こんな大事な時にアドバイスがもらえないのは辛い。でも、ただちに行動しなければ。
ああっ、もう、どうしたらいいのよ!
幸い、今日は絵梨花やお局が在宅なので彼女たちの目を気にせずに済む。
よし、堂々としよう。根拠のない自信だけど胸を張って背筋を伸ばして歩こう。
──そして、脚を組んで偉そうな彼を前に私はおっぱいをぶるんぶるん揺らせながら登場した。鼻息も少々荒い。極度の恐怖や緊張、恥ずかしい気持ちを隠すかのように戦闘態勢なのだ。
「綾坂です。用件を伺いにまいりました!」
「あ、ああ……」
少しばかり彼は引いている。私のただならぬ雰囲気を感じ取ったのだろう。それにしても、胸元をじろじろ見るのはいかがなものか?かなり失礼だ。
「ま、まぁ、座って」
「はい」
彼は一枚の資料をテーブルに置いた。私が作成した席表だ。
「謝恩会でサプライズを計画している」
「サプライズ……ですか?」
「祝いの花束をもう2つ追加で発注してくれないか?グレードは高い方がいい」
「承知しました。……で、この件については」
「もちろん、池園さんにはまだ知らせていない」
「なぜですか?これまでの指示は彼女を通して来たはずですが?」
「話せば理由が分かる。ただし内密にしておいてくれ」
「了解しました」
「それに先立ち、もう一つお願いがある」
「はい?」
焦らすわね、もう何なのよ。
「……さんの席をホテルに用意させるよう手配してくれ。席は一番上座だ。ここ!」
えっ、その方って……!?
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