15 / 36
15話 何でもかんでも私に押し付けて!
しおりを挟む
ふむむむむむっ……
『花、とても上手だわ。プロ並みねぇー。と言ってもわたくしが書いたようなものだけどね』
自分でも信じられないでいる。それは見事な楷書体だった。いざ集中してみれば、姿勢から筆の持ち方や筆使いなど自然な流れで書ける!書けるのだ!
『は、はい。すごいです』
この摩訶不思議な現象はなに?私は自身の能力に加え、ララ様のスキルまで身につけたのだろうか。
だとすると、精神統一によって潜在能力が引き出されたのだ。そのメカニズムは解明できないが、これは大きな自信に繋がる。
『ララ様、絵梨花に完了メールを送ります』
これでお局に頭を下げる必要はなくなった。ざまぁみろだ!
敵の思惑を外した嬉しさで胸がいっぱいだった。そして小さな反撃を思いつく。
早速フロアーに戻り、賞状をスキャンしてPDFに変換した。絵梨花に証拠を見せつけてやるのだ。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
RE: ご依頼の件
池園さん、宛名書きが完了しましたことをご報告致します。PDFをご確認ください。
綾坂花
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
勿論、東薔薇主任へのBCCも忘れない。絵梨花の傲慢な命令文も是非、見てもらいたいものだ。
私は五メートル先の絵梨花の様子をアクリル板からそっと覗く。メールを開いた彼女は顔が引き攣っていた。直ぐにお局を手招きして二人でPDFを眺めている模様……
あの悔しそうな顔ったら傑作だ!記念写真撮りたいくらいだわ!
『してやったわね、花!』
『はい。スッキリしました』
絵梨花からの返信は無かったけど、程なく主任からメールが届いた。BCCで。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
RE: 謝恩会の準備
東薔薇様、
賞状が完成しました。引き続き打ち合わせ通り、席表の作成を進めます。各課世話役からの出欠も整っておりますので、どうぞご安心ください。
池園絵梨花
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
RE: 謝恩会の準備
池園さん、ありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。
東薔薇ハルト
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
『うふふ。東薔薇の内通で絵梨花の動きが丸見えになったわねー』
そこは謎だ。何を考えてるのか不気味ではある。だけど、お陰で次の手が読めることは助かるわ。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
RE: ご依頼の件
綾坂さん、ホテルの席表を速やかに完成させなさい。席表案を参考に。
池園絵梨花
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
そう来ると思った。こんなの楽勝です。
ファイルを開くと、三十幾つの丸テーブルに二百五十人もの席表案が記されていた。思ったよりは大変な作業だったけど、挫けない。
すると、また馬鹿女からメールが届いた。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
RE: ご依頼の件
話変わるけど、今週の業務報告資料も宜しく。両方とも今日中にね。
池園絵梨花
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
『またか!何でもかんでも私に押し付けて!』
流石に怒りで身体が震えてしまう。
『花、これも上司へ送ってやりなさい』
『勿論、そうします。絵梨花のメールは全て、然るべき上位に送ります。BCCで!』
私は猛烈な勢いでタッチタイピングを繰り返す。絵梨花Grのサボり盗撮も出来ないくらいに集中した。
優先は業務報告ね。よし、送信。
毎週、完璧な報告資料を作成している。これを絵梨花は自分が作成したかのように上司へ報告しているのだろう。単に転送しているだけなのに。
上司も上司。いつも私が作成していると知らないのか不思議で仕方ない。全てバラしてやろう。
お次は席表だ。ここでゲストテーブルがあることを知った。購買部の謝恩会だけど、各部テーブルも一つ用意されている。そこで生産管理部のテーブルに“伊集院翔”と名前が記されていた。
ええっ?翔様も謝恩会に呼ばれてたんだ!?
『花、とても上手だわ。プロ並みねぇー。と言ってもわたくしが書いたようなものだけどね』
自分でも信じられないでいる。それは見事な楷書体だった。いざ集中してみれば、姿勢から筆の持ち方や筆使いなど自然な流れで書ける!書けるのだ!
『は、はい。すごいです』
この摩訶不思議な現象はなに?私は自身の能力に加え、ララ様のスキルまで身につけたのだろうか。
だとすると、精神統一によって潜在能力が引き出されたのだ。そのメカニズムは解明できないが、これは大きな自信に繋がる。
『ララ様、絵梨花に完了メールを送ります』
これでお局に頭を下げる必要はなくなった。ざまぁみろだ!
敵の思惑を外した嬉しさで胸がいっぱいだった。そして小さな反撃を思いつく。
早速フロアーに戻り、賞状をスキャンしてPDFに変換した。絵梨花に証拠を見せつけてやるのだ。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
RE: ご依頼の件
池園さん、宛名書きが完了しましたことをご報告致します。PDFをご確認ください。
綾坂花
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
勿論、東薔薇主任へのBCCも忘れない。絵梨花の傲慢な命令文も是非、見てもらいたいものだ。
私は五メートル先の絵梨花の様子をアクリル板からそっと覗く。メールを開いた彼女は顔が引き攣っていた。直ぐにお局を手招きして二人でPDFを眺めている模様……
あの悔しそうな顔ったら傑作だ!記念写真撮りたいくらいだわ!
『してやったわね、花!』
『はい。スッキリしました』
絵梨花からの返信は無かったけど、程なく主任からメールが届いた。BCCで。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
RE: 謝恩会の準備
東薔薇様、
賞状が完成しました。引き続き打ち合わせ通り、席表の作成を進めます。各課世話役からの出欠も整っておりますので、どうぞご安心ください。
池園絵梨花
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
RE: 謝恩会の準備
池園さん、ありがとうございます。引き続きよろしくお願いします。
東薔薇ハルト
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
『うふふ。東薔薇の内通で絵梨花の動きが丸見えになったわねー』
そこは謎だ。何を考えてるのか不気味ではある。だけど、お陰で次の手が読めることは助かるわ。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
RE: ご依頼の件
綾坂さん、ホテルの席表を速やかに完成させなさい。席表案を参考に。
池園絵梨花
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
そう来ると思った。こんなの楽勝です。
ファイルを開くと、三十幾つの丸テーブルに二百五十人もの席表案が記されていた。思ったよりは大変な作業だったけど、挫けない。
すると、また馬鹿女からメールが届いた。
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
RE: ご依頼の件
話変わるけど、今週の業務報告資料も宜しく。両方とも今日中にね。
池園絵梨花
─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─
『またか!何でもかんでも私に押し付けて!』
流石に怒りで身体が震えてしまう。
『花、これも上司へ送ってやりなさい』
『勿論、そうします。絵梨花のメールは全て、然るべき上位に送ります。BCCで!』
私は猛烈な勢いでタッチタイピングを繰り返す。絵梨花Grのサボり盗撮も出来ないくらいに集中した。
優先は業務報告ね。よし、送信。
毎週、完璧な報告資料を作成している。これを絵梨花は自分が作成したかのように上司へ報告しているのだろう。単に転送しているだけなのに。
上司も上司。いつも私が作成していると知らないのか不思議で仕方ない。全てバラしてやろう。
お次は席表だ。ここでゲストテーブルがあることを知った。購買部の謝恩会だけど、各部テーブルも一つ用意されている。そこで生産管理部のテーブルに“伊集院翔”と名前が記されていた。
ええっ?翔様も謝恩会に呼ばれてたんだ!?
1
お気に入りに追加
98
あなたにおすすめの小説


極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スカイ・コネクト
宮塚恵一
現代文学
「センパイ、どこでも空はつながってるんすよ」
杉並蓮司は趣味の野鳥観察以外には外へ出ることもない、日々をただ惰性で生きる青年。
普段のように大学の元後輩である花恋と川沿いを歩いていると、高校時代の後輩、真琴と再会する。
真琴は大学の演劇サークルの座長になっており、蓮司が昔書いた脚本を劇の題材に使いたいと申し出る。
六華 snow crystal 8
なごみ
現代文学
雪の街札幌で繰り広げられる、それぞれのラブストーリー。
小児性愛の婚約者、ゲオルクとの再会に絶望する茉理。トラブルに巻き込まれ、莫大な賠償金を請求される潤一。大学生、聡太との結婚を夢見ていた美穂だったが、、

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる