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8話 闘わないといけない相手なのだ。
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『こんな怪文書をプリントするのですか……?』
それは、お局が花びらを千切ってニタニタしてる画像にコメントを添えた内容だった。
“告発します。陰湿極まりないモラハラを僕たちは決して許さない!有志一同より”
ゆ、有志って誰よ?そんな人いるはずがない。男性を装ってるけど明らかに私が作成したものだとバレバレよね。余りにもしらじらしいよ?
『しらじらしくていいの。一枚プリントして』
『印刷してどうすると?』
『見たところ、お局はファックスをよく使うわね』
『はい。お取引き様とのやりとりは多いですね』
『廃紙の再利用でトレイに混ぜれば、いずれ彼女の目に入るはず』
つまりは、お局だけに知らしめるってこと?
『受信された用紙を取って裏に気がつく。うふふ、見ものねぇー』
そんな挑発めいた行為は凄くリスキーだと思う。どんな仕返しが待ってるか……ララ様の言う“じわりじわり大作戦”とは一体何なんだろう?
『その前に、お考えを聞かせてください』
『まぁ単純なことよ。真の敵は絵梨花とお局。後は流されてるだけだから二人を倒せば、取り巻く環境は変わっていくわ』
まぁ、そうかもしれない。いやでも、そこが難しいのでは?
『先ずは宣戦布告することが大事なの。風当たりはきつくなるけど、そのうち花の魅力に跪いた男性陣と一緒に、いびり倒してやるから』
えーと……果たしてそう上手くいくかな?特に私の魅力に跪くってあたりがどうも引っかかる。
「「「何なのコレ!?アンタこそ陰湿ね!」」」
なんて逆ギレしないかな。とっても心配だ。
お局はいわば、叩き上げの怖い先輩。入社以来、優しくされた覚えがない。後輩の絵梨花に追従してるのは、役員のお嬢様であると共に綺麗でカリスマ性があるから。彼女を中心に持っていけば自分の立場は主流で安泰だと計算してるのだ。本当は絵梨花が配属しなければ自分がリーダーだったと、僻んでいるはず。
だけどいかんせん、ズボラで職務遂行能力は残念な部類に入る。明るく振る舞ってはいるけど、自分の実力を悲観して内心は穏やかではないだろう。常にストレスを抱えている。
そして、そのイライラを私にぶつけてくる。やはり、いつかは闘わないといけない相手なのだ。
私は意を決する。
タイミングよく、お局が後輩モブ男子とサボりに行ったのを見計らい、プリントした怪文書をファックスのトレイに仕舞い込んだ。もう後には引けない。
ドキドキしながらその時を待つことに──
『ところで花、このフロアーは二百人くらいの席があるけど、気になる男性はいないの?』
なっ、何ですか唐突に?
『どうもあなたの意識の中に一人いるんだよねぇ』
『ララ様、心を読まないでください。そんなんじゃありませんから!』
『うーん、結構おじ様ね?』
『無我の境地!』
思考をストップさせなければ読まれてしまう。
私は別に好きとか、そう言う感情ではなく尊敬と申しますか……人と上手く接することが苦手な私に、あの御方だけは暖かい目で見てくださるのです。励ましてくださるのです。だから迷惑をかける真似はしたくないし、酷い目に遭ってもこの部署に踏み止まっているのです。
『なるほど、フロアトップの部長さんね』
いかん。読まれた。
『……はい。先日、海外出張から戻られて現在、休暇中です』
『なーんだ。強い味方がいるじゃない』
『いえ、部長を巻き込まないでください』
『まぁ状況次第ね。鶴の一声って大っきいからね』
なるべくその様な事態にならないことを切に願いたい。
『あ、お局が戻って来たわよ。随分長くサボってるじゃない』
いよいよその時がやってきた。私はPC画面を見るフリをして、透明なアクリル板越しに彼女の様子を伺った。
それは、お局が花びらを千切ってニタニタしてる画像にコメントを添えた内容だった。
“告発します。陰湿極まりないモラハラを僕たちは決して許さない!有志一同より”
ゆ、有志って誰よ?そんな人いるはずがない。男性を装ってるけど明らかに私が作成したものだとバレバレよね。余りにもしらじらしいよ?
『しらじらしくていいの。一枚プリントして』
『印刷してどうすると?』
『見たところ、お局はファックスをよく使うわね』
『はい。お取引き様とのやりとりは多いですね』
『廃紙の再利用でトレイに混ぜれば、いずれ彼女の目に入るはず』
つまりは、お局だけに知らしめるってこと?
『受信された用紙を取って裏に気がつく。うふふ、見ものねぇー』
そんな挑発めいた行為は凄くリスキーだと思う。どんな仕返しが待ってるか……ララ様の言う“じわりじわり大作戦”とは一体何なんだろう?
『その前に、お考えを聞かせてください』
『まぁ単純なことよ。真の敵は絵梨花とお局。後は流されてるだけだから二人を倒せば、取り巻く環境は変わっていくわ』
まぁ、そうかもしれない。いやでも、そこが難しいのでは?
『先ずは宣戦布告することが大事なの。風当たりはきつくなるけど、そのうち花の魅力に跪いた男性陣と一緒に、いびり倒してやるから』
えーと……果たしてそう上手くいくかな?特に私の魅力に跪くってあたりがどうも引っかかる。
「「「何なのコレ!?アンタこそ陰湿ね!」」」
なんて逆ギレしないかな。とっても心配だ。
お局はいわば、叩き上げの怖い先輩。入社以来、優しくされた覚えがない。後輩の絵梨花に追従してるのは、役員のお嬢様であると共に綺麗でカリスマ性があるから。彼女を中心に持っていけば自分の立場は主流で安泰だと計算してるのだ。本当は絵梨花が配属しなければ自分がリーダーだったと、僻んでいるはず。
だけどいかんせん、ズボラで職務遂行能力は残念な部類に入る。明るく振る舞ってはいるけど、自分の実力を悲観して内心は穏やかではないだろう。常にストレスを抱えている。
そして、そのイライラを私にぶつけてくる。やはり、いつかは闘わないといけない相手なのだ。
私は意を決する。
タイミングよく、お局が後輩モブ男子とサボりに行ったのを見計らい、プリントした怪文書をファックスのトレイに仕舞い込んだ。もう後には引けない。
ドキドキしながらその時を待つことに──
『ところで花、このフロアーは二百人くらいの席があるけど、気になる男性はいないの?』
なっ、何ですか唐突に?
『どうもあなたの意識の中に一人いるんだよねぇ』
『ララ様、心を読まないでください。そんなんじゃありませんから!』
『うーん、結構おじ様ね?』
『無我の境地!』
思考をストップさせなければ読まれてしまう。
私は別に好きとか、そう言う感情ではなく尊敬と申しますか……人と上手く接することが苦手な私に、あの御方だけは暖かい目で見てくださるのです。励ましてくださるのです。だから迷惑をかける真似はしたくないし、酷い目に遭ってもこの部署に踏み止まっているのです。
『なるほど、フロアトップの部長さんね』
いかん。読まれた。
『……はい。先日、海外出張から戻られて現在、休暇中です』
『なーんだ。強い味方がいるじゃない』
『いえ、部長を巻き込まないでください』
『まぁ状況次第ね。鶴の一声って大っきいからね』
なるべくその様な事態にならないことを切に願いたい。
『あ、お局が戻って来たわよ。随分長くサボってるじゃない』
いよいよその時がやってきた。私はPC画面を見るフリをして、透明なアクリル板越しに彼女の様子を伺った。
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