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是故空中、無色無受想行識、無眼耳鼻舌身意……
お経の声が響く中、私と直人、松本絵梨は奇しくも長嶺理子の命日である9月2日にお寺でダイアリーを燃やすお祓いを行っていた。
昨日ダイアリーに記載した通り、美咲とお局は嫌々出社して人事労政Grから取り調べを受け、始末書を書かされたようだ。彼女たちは1週間後に異動と、1ヶ月後に懲戒処分が下ることが決まった。
それから森田課長も異動するらしい。
そして、橘太郎はどうなったのかと言えば、社長兼CEOと面談した結果、子会社へ出向を告げられたと聞いた。事実上の更迭だ。
ことの顛末は会社の良識に委ねたけれど、相応な判断に一安心したところだった。
これで全て解決したのだろうか?いや、何かすっきりしない。私自身もこれから変わらなくてはならないと思う。いつまでも干物女と思われてはいけない。そう決心に至った13日間であり、この儀式はその締めくくりでもある。
「高野さん、秘密を守ってくれてありがとう。あんなに酷いことしたのに、貴女は寛大で感謝しています。宜しければこれからも友人としてお付き合いしてください」
「いいわよ。ダイアリーで繋がった戦友だからね」
「はい。ところで山田係長は……」
そうだ。あいつも人事に呼ばれていたんだ。絵梨の話では、予定通り海外に出向はするけど幹部登用試験は自らが辞退したらしい。まだ若いし、本人なりに何らかのけじめをつけたいのだろう。まぁ一度冷静になるのは良いことだね。
「では、ひと足先に帰りますね。あとはお二人で……うふ」
松本絵梨は私に気を遣ってるようだ。と言いますか、私が直人に気があることがバレていたんだと、この時、気がついた。
絵梨が去って二人っきりになると、ちょっぴり恥ずかしく緊張が走った。急に胸がドキドキしてしまう。何かお話しなければと焦った。
「高橋さん、これで一区切りつきましたね。この度は大変お世話になりました。ありがとうございました」
「いえ、私自身も気が済みました。高野さんの相談のお役に立つことができて良かったです」
よし、ここで告白まではいかないけど、このままお別れするわけにはいかない!
「あ、あの!これからも時々お会いしたいです!」
やばっ、自分で言っておいて身体中から火が出る勢いで熱くなっている!
「ええ、こちらこそ喜んで」
「えっ?いいのですか?」
「高野さんは誠実で賢く素敵な方ですね。今回のことでよく分かりました」
爽やかな眼差しを向けられ、真っ赤になってる自分を恥じる気もないくらい、ここが勝負どころと認識した。
「では、直人って呼んでいいですか?」
「あ、はい。では私も真由美さん?」
「真由美でお願いします!」
「真由美……ハハ、なんか照れちゃいますね」
「うふふ。直人、帰りましょう!」
私は直人の手を握り歩き出す。そして彼も温かく握り返してくれた。
……それから半年後、橘太郎は裁判で処分が下り、懲戒解雇されることになった。ちなみに資産は全て長嶺さんのご遺族に渡された。
そしてその頃、私たちは正式にお付き合いすることになった──
*橘美咲視点
「あーあー、もう人生最悪よー。お父様は犯罪者になるし、家も売り飛ばされてボロボロの借家暮らしだしー。くそう、全てあの干物女のせいだ。復讐してやりたいぃぃ……ん?なにこれ?こんなのあった?」
荷物を整理してると、見慣れない手帳のようなものが紛れ込んでいた。パールの装飾が施された表紙は少し高級な雰囲気を醸し出している。
「日記?」
その裏表紙にはこう書かれていた。
『書かれていることが実際に起こる日記』
── END ──
お経の声が響く中、私と直人、松本絵梨は奇しくも長嶺理子の命日である9月2日にお寺でダイアリーを燃やすお祓いを行っていた。
昨日ダイアリーに記載した通り、美咲とお局は嫌々出社して人事労政Grから取り調べを受け、始末書を書かされたようだ。彼女たちは1週間後に異動と、1ヶ月後に懲戒処分が下ることが決まった。
それから森田課長も異動するらしい。
そして、橘太郎はどうなったのかと言えば、社長兼CEOと面談した結果、子会社へ出向を告げられたと聞いた。事実上の更迭だ。
ことの顛末は会社の良識に委ねたけれど、相応な判断に一安心したところだった。
これで全て解決したのだろうか?いや、何かすっきりしない。私自身もこれから変わらなくてはならないと思う。いつまでも干物女と思われてはいけない。そう決心に至った13日間であり、この儀式はその締めくくりでもある。
「高野さん、秘密を守ってくれてありがとう。あんなに酷いことしたのに、貴女は寛大で感謝しています。宜しければこれからも友人としてお付き合いしてください」
「いいわよ。ダイアリーで繋がった戦友だからね」
「はい。ところで山田係長は……」
そうだ。あいつも人事に呼ばれていたんだ。絵梨の話では、予定通り海外に出向はするけど幹部登用試験は自らが辞退したらしい。まだ若いし、本人なりに何らかのけじめをつけたいのだろう。まぁ一度冷静になるのは良いことだね。
「では、ひと足先に帰りますね。あとはお二人で……うふ」
松本絵梨は私に気を遣ってるようだ。と言いますか、私が直人に気があることがバレていたんだと、この時、気がついた。
絵梨が去って二人っきりになると、ちょっぴり恥ずかしく緊張が走った。急に胸がドキドキしてしまう。何かお話しなければと焦った。
「高橋さん、これで一区切りつきましたね。この度は大変お世話になりました。ありがとうございました」
「いえ、私自身も気が済みました。高野さんの相談のお役に立つことができて良かったです」
よし、ここで告白まではいかないけど、このままお別れするわけにはいかない!
「あ、あの!これからも時々お会いしたいです!」
やばっ、自分で言っておいて身体中から火が出る勢いで熱くなっている!
「ええ、こちらこそ喜んで」
「えっ?いいのですか?」
「高野さんは誠実で賢く素敵な方ですね。今回のことでよく分かりました」
爽やかな眼差しを向けられ、真っ赤になってる自分を恥じる気もないくらい、ここが勝負どころと認識した。
「では、直人って呼んでいいですか?」
「あ、はい。では私も真由美さん?」
「真由美でお願いします!」
「真由美……ハハ、なんか照れちゃいますね」
「うふふ。直人、帰りましょう!」
私は直人の手を握り歩き出す。そして彼も温かく握り返してくれた。
……それから半年後、橘太郎は裁判で処分が下り、懲戒解雇されることになった。ちなみに資産は全て長嶺さんのご遺族に渡された。
そしてその頃、私たちは正式にお付き合いすることになった──
*橘美咲視点
「あーあー、もう人生最悪よー。お父様は犯罪者になるし、家も売り飛ばされてボロボロの借家暮らしだしー。くそう、全てあの干物女のせいだ。復讐してやりたいぃぃ……ん?なにこれ?こんなのあった?」
荷物を整理してると、見慣れない手帳のようなものが紛れ込んでいた。パールの装飾が施された表紙は少し高級な雰囲気を醸し出している。
「日記?」
その裏表紙にはこう書かれていた。
『書かれていることが実際に起こる日記』
── END ──
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