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8月30日(水)
橘美咲は在宅勤務中ですが、自宅から大量の業務を指示してきます。本人は美容サロンに出かけました。
一方、山本節子はパープーに仕事を押し付けて、一日中のんびりと過ごしています。
森田課長は社外教育のため、終日不在です。ただし、ほとんど寝ていたので何も身についていませんでした。
「仕事しろよ~!」
まぁいい。明日は比較的平穏な一日になりそうね。美咲から仕事を振られるけど……でも、佐藤拓也に手伝ってもらって何とかこなしてみよう。それよりも私には大きな使命がある。さて、ダイアリーにどう書き込もうかな?
『橘太郎専務は15時にトイレに行った際、個室に携帯電話を置き忘れてしまいました。そのまま気づかずに社外へ出かけていきます。』
うん、こんな感じで良さそうね。さっそく愛しの直人にメールしようっと。うふふ……
***
翌日、意気揚々と出社し、自販機コーナーに佐藤を呼び出した。松本絵梨と一緒に作戦の一部を打ち明ける。特定の人物の携帯電話のロックを解除し、データを抜き取る作業のことだ。
「どお?できる?」
「うん、裏技を駆使すればなんとかなると思うよ」
「本当?頼りになるわぁ!」
2人の女性からのおだてに、佐藤のやる気が最高潮になっていた。しかも、誰の携帯かは聞かれなかったので、ちょっと助かった気分だ。まぁ、いずれバレると思うけど。
やがて14時40分を過ぎ、高橋直人からメールが届いた。誰にも見られずに8階のトイレに潜入し、個室に15時まで待機するつもりだと。私は松本と佐藤と一緒に1階のサテライトオフィスで吉報を待つ。佐藤はデータ抜き取りのための専用PCを準備していた。
「お、ここにいたのか。私も仲間に入れてくれ」
不意に山田健太がオフィスのパーテーションから顔を覗かせた。
「か、係長?会議が始まるのでは?」
松本絵梨が慌てて席を立つ。
「ああ、リスケした。後で調整してくれ。それより何を企んでるんだ?」
「それは……」
「ん?ノートPCまで用意して?」
私はマズいと思って何とかごまかそうと口を開いた。
「専務のスケジュール確認です。情報いただきありがとうございました」
「うむ。で、高橋はいないのか?」
「あ、そうですね」
「松本、彼はどこに行ったんだ?」
「え、えっと……」
彼女は話してはいけないという認識はあるものの、つい目線をエレベーターの方に向けてしまった。
「おい、まさか8階か?本気で専務室に潜入しようとしているのか?無謀だぞ!」
ああ、もう勘が鋭いな。というか、彼のことダイアリーに書いてなかったけど?まったく想定外だ。こうなったら、逆に聞いてやろう。
「確かに高橋さんは専務室の近くで様子を伺っています。でも、調査してるだけで無茶な行動はしないと思いますよ」
「いや、危険だぞ!」
「それより山田係長、私たちに何か隠していることはないですか?長嶺さんのダイアリーをシェアしてくれないし、正直疑ってます。もしかして自身を守っているか、専務を庇っているか、どちらかだと思いますが違いますか?」
「な、何を言ってるんだ……私は……あっ、ああーっ!?」
山田の視線がエレベーターに向けられていることに気づいた。彼は何かに怯えている様子だ。私たちも一斉にその方向を見たが、誰もいなくて何も異常はなかった。
「係長、どうされました?」
「や、やつだ。黒ずくめの男が現れたんだ。見えなかったのか?」
「はぁ?黒ずくめの男って何のこと?」
橘美咲は在宅勤務中ですが、自宅から大量の業務を指示してきます。本人は美容サロンに出かけました。
一方、山本節子はパープーに仕事を押し付けて、一日中のんびりと過ごしています。
森田課長は社外教育のため、終日不在です。ただし、ほとんど寝ていたので何も身についていませんでした。
「仕事しろよ~!」
まぁいい。明日は比較的平穏な一日になりそうね。美咲から仕事を振られるけど……でも、佐藤拓也に手伝ってもらって何とかこなしてみよう。それよりも私には大きな使命がある。さて、ダイアリーにどう書き込もうかな?
『橘太郎専務は15時にトイレに行った際、個室に携帯電話を置き忘れてしまいました。そのまま気づかずに社外へ出かけていきます。』
うん、こんな感じで良さそうね。さっそく愛しの直人にメールしようっと。うふふ……
***
翌日、意気揚々と出社し、自販機コーナーに佐藤を呼び出した。松本絵梨と一緒に作戦の一部を打ち明ける。特定の人物の携帯電話のロックを解除し、データを抜き取る作業のことだ。
「どお?できる?」
「うん、裏技を駆使すればなんとかなると思うよ」
「本当?頼りになるわぁ!」
2人の女性からのおだてに、佐藤のやる気が最高潮になっていた。しかも、誰の携帯かは聞かれなかったので、ちょっと助かった気分だ。まぁ、いずれバレると思うけど。
やがて14時40分を過ぎ、高橋直人からメールが届いた。誰にも見られずに8階のトイレに潜入し、個室に15時まで待機するつもりだと。私は松本と佐藤と一緒に1階のサテライトオフィスで吉報を待つ。佐藤はデータ抜き取りのための専用PCを準備していた。
「お、ここにいたのか。私も仲間に入れてくれ」
不意に山田健太がオフィスのパーテーションから顔を覗かせた。
「か、係長?会議が始まるのでは?」
松本絵梨が慌てて席を立つ。
「ああ、リスケした。後で調整してくれ。それより何を企んでるんだ?」
「それは……」
「ん?ノートPCまで用意して?」
私はマズいと思って何とかごまかそうと口を開いた。
「専務のスケジュール確認です。情報いただきありがとうございました」
「うむ。で、高橋はいないのか?」
「あ、そうですね」
「松本、彼はどこに行ったんだ?」
「え、えっと……」
彼女は話してはいけないという認識はあるものの、つい目線をエレベーターの方に向けてしまった。
「おい、まさか8階か?本気で専務室に潜入しようとしているのか?無謀だぞ!」
ああ、もう勘が鋭いな。というか、彼のことダイアリーに書いてなかったけど?まったく想定外だ。こうなったら、逆に聞いてやろう。
「確かに高橋さんは専務室の近くで様子を伺っています。でも、調査してるだけで無茶な行動はしないと思いますよ」
「いや、危険だぞ!」
「それより山田係長、私たちに何か隠していることはないですか?長嶺さんのダイアリーをシェアしてくれないし、正直疑ってます。もしかして自身を守っているか、専務を庇っているか、どちらかだと思いますが違いますか?」
「な、何を言ってるんだ……私は……あっ、ああーっ!?」
山田の視線がエレベーターに向けられていることに気づいた。彼は何かに怯えている様子だ。私たちも一斉にその方向を見たが、誰もいなくて何も異常はなかった。
「係長、どうされました?」
「や、やつだ。黒ずくめの男が現れたんだ。見えなかったのか?」
「はぁ?黒ずくめの男って何のこと?」
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