マイ•ダイアリー『書かれていることが実際に起こる日記』

鼻血の親分

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喫茶店には他の客もいて、穏やかな雰囲気が漂い、おしゃべりとコーヒーの香りが混ざり合っていた。しかし、私たちのテーブルは緊張に包まれ、注文したアイスコーヒーが誰も手をつけずにそのまま置かれている。そんな重たい空気の中、高橋直人が口を開いた。

「ここは何としても山田係長に事情を聞かないといけませんね」
「ちょっと待って!それをすると、私が盗んだとバレちゃいますよ!」
「高橋さんは山田係長が持っているであろう長嶺理子のダイアリーを手に入れたいんですよね?」
「そうですね、手に入れたいです。松本さんが盗んだことは他言しません。別の方法があるんです」
「え、それは?」
高橋直人はアイスコーヒーを一口飲み、姿勢を正した。
「高野さん、その前に確認させてください」
「はい、どうしましたか?」
「松本さんは、私たちのだという認識で宜しいですか?」
その問いに対し、不安そうに松本絵梨が私を見つめている。彼女には微妙な思いがあるが、心の中では一応、親衛隊として認めていた。私は受け入れることにしたい。
「ええ、こうしてダイアリーを持ってきてくれたから、過去のことは水に流します」
「ありがとうございます、高野さん!」
「では、もう一人。佐藤さんはどうですか?」
「え、佐藤?」
なんで佐藤拓也が出てくるの?ま、まぁ彼も親衛隊だし……でも、ダイアリーについて何も知らない人ですけど、いいのかしら?
「松本さんはどう思いますか?」
「その理由を聞かせてください」
「そうですね。佐藤さんは証人になるからです。高野さんが被害に遭われたモラハラをよく知ってますから」
「えっと……」
どういう意味だろう?ダイアリーの謎解きとの関連は一体なに?
「同じく松本さんも証人になりますよ。高野さんではなく、長嶺さんの」
すると、ハッと松本絵梨が手を口に当て息を呑む。
「高野さん、長嶺さん。二人には共通の敵がいるのです」
「共通の敵?高橋さん、詳しく説明してください」
「はい。実は一年前に長嶺さんから『セクハラの被害を受けて困っている』と人権相談窓口にメールが届いていました」
「で、その相手は?」
「橘太郎、専務執行役員です」
「まさか!」
「当時は購買の部長でしたね。この件も高野さんと同様、上司が取り合わず有耶無耶な調査で終わりました。そして、彼女の自死を聞いた時、僕は悔しくて堪らなかった。相談窓口の意味が分からなくなるくらいですよ」
「私も長嶺さんのことは知ってました。同じ部署だったので、セクハラを目撃したこともあります」

なるほど。繋がったわ。
私は今日のダイアリーを思い出す。
『真の所有者が判明し、私たちの目標が明確になりました。』
橘太郎こそが、私や長嶺さんを苦しめていた元凶なのだ。彼を倒さなければ問題は解決しない。私たちの目標は専務の打倒です!

「高橋さん、山田係長を味方に引き込みましょう!」




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