マイ•ダイアリー『書かれていることが実際に起こる日記』

鼻血の親分

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8月24日(木)
橘美咲と森田課長は今日もリモートワークで不在ですが仕事もせず、それぞれネイルサロンと釣りに出かけます。そんな彼らからは業務日報のまとめを依頼されました。
一方、山本節子は有休を取り、だらけて過ごしています。食べては寝るという自堕落な1日を送り、体重が1.5kg増加しました。
また、佐藤拓也は節子からパープーの面倒をみるよう指示されていたため、終日イチャイチャしようと目論んでいましたが、敏感に感じ取られてしまい、距離を置かれてしまいました。

「ふーん。明日は3人いないのか……というか、佐藤のことが書かれてるわね」

私は自宅でダイアリーを眺めながら明日の作戦を練っていた。松本絵梨に接触するためには、関与しているであろう佐藤拓也を通じなければならない。彼らが私を陥れる理由やダイアリーの入手経緯を知りたいのだ。

しかし、考えてみれば不可解だな。普通、あんな素晴らしいダイアリーを手に入れたら、もっと願望を叶えるはずよ。私を虐めるようなことを書くなんてつまらないでしょう?例えば、宝くじに当選して億単位のお金を手に入れるとか、イケメンに口説かれて遊びまくるとか。あるいは仕事で成功し、若いうちに地位を築くなど、欲望はいくらでもあるはずだよね。何か法則があるのかな?人を不幸にする内容しか受け付けないとか。

まぁいいや。思考がずれたわ。修正しよう。私の親衛隊長である高橋直人の言葉を思い出せ。

「あの日記によって高野さんは不当な嫌がらせを受けてしまった。だから、日記を通じて本来の人間関係を取り戻してもらいたいのです。そして、納得した状態になったら、それを燃やしてほしい。本来存在してはならないものだと思います。人を不幸にしたり、人を狂わせる可能性がありますから」

なるほど、その通りね。彼は私を信用してるみたい。今のところ、悪用はしないと信じているわ。ただ、そのまま持ち続けると狂ってしまう可能性があるから心配してるのでしょう。

人間もヒト属、ホモ・サピエンスと言う動物だ。本能的な欲求の塊を理性という鎧で抑えているだけだと思う。私も自分が狂ってしまう前に、ダイアリーを破棄しなくちゃいけないのかな……

ただ、また疑問が湧いてきた。松本絵梨が私への虐めを仕掛け、橘美咲や山本節子を操作していたとしても、今現在彼女たちは操作されていない。それなのに、なぜ私への虐めが続くのかしら?
その理由として考えられるのは、もともと彼女たちは私を嫌っていた。おそらく、限界ギリギリで理性を保っていたのかもしれない。そして、ダイアリーの影響でそれが解放され、本能のままに虐めを続けているのだろう。つまり、ダイアリーによって修復されても、私自身が変わらない限り、同じことを繰り返す可能性が高いと思う。

よし、以上を踏まえて明日の作戦を発表しましょう。佐藤拓也に声をかけて松本絵梨の話を聞くことにする。課長をはじめ、橘美咲や山本節子が不在でパープーも距離を置くようなので、実行しやすいはずだ。もちろん、ダイアリーには書かずに勝負よ!




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