マイ•ダイアリー『書かれていることが実際に起こる日記』

鼻血の親分

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いつも通りに出社し、いつも通りに業務をこなす。何も心配はしていない。今日はストレスもなく平和な一日になることが予言されてるからだ。それにしても便利なダイアリーを手に入れたものだ。本当に神様がくれたのだろうか?もしや、高橋直人が関与してるのかもしれない。いや、そうあって欲しい。気になるな。

仕事に一区切りついたところで、私は再びダイアリーを開いてみた。気づいたことがある。昨日の記述が修正されていたのだ。

『山本節子は機嫌が直らず、午後のオンライン会議で意図的に私を招待から外してしまいますが、迅速に対処しました。』という文章になっていた。これは、私が事前に知って行動したために歴史が変わり、上書きされたものと推測される。

それにしても、この修正された部分の筆跡は私が書いたものと良く似ている。印刷された文字ではなく、鉛筆書きだし消しゴムで簡単に消せる気がして、ちょっと試すのも怖いけど……もしかすると、勝手に書き込んじゃうと、その通りになるのでは?と、思ってしまった。 

私は鉛筆を手にして迷いながらも、今日の文章に何か付け足せるか試してみたい衝動を抑えきれないでいた。しかし、まずは頭の中で考えてみる。ターゲットは出社してるお局にしよう。彼女が仕事もせず、だらだらと目の前で過ごされると、それはそれでストレスになる。

うーん、例えば『階段から転んで軽い打撲を負い、数日間の安静が必要になる。』……いや、本当に起こりそうでここに書くと証拠も残ってしまうので、やめておこう。もう少し軽度なできごとでいいな。あ、そうだ!

『仕事もせず、退屈で背伸びをしてあくびしたらブラジャーのホックが破壊してしまい、修理不可能な状態になったため、半日の休暇を取って退社しました。』

ぷぷぷ……これはウケる。この程度の冗談なら問題ないでしょうね。

さっそくダイアリーに書き込む。それから私は仕事しながら彼女を監視した。すると、長い時間サボってデスクに戻ってきたお局が、眠そうに背伸びをしているのを見逃さなかった。「ふぁぁぁぁ」とあくびをする彼女はその瞬間、驚きの表情に変わり、慌てて胸を押さえながらトイレに駆け込む様子を目撃した。彼女は巨乳だ。おっぱいが解き放たれたのだろう。私は笑いをこらえながらも、驚きを感じていた。

裏表紙に記載されている『書かれていることが実際に起こる日記』は本当に現実化するのだ。自分が書き込んだ内容であっても同様だということがわかった。

──これは驚異的なものだわ。思い描いたことが現実に起こるなんて、この世界は私の思い通りになるの?私は神なの?

そんな考えに囚われ、震えが止まらなくなった。世界を自在に創造できる!全ては私の気分次第だ!そう興奮する自分に、「待て待て、慌てるな」と、言い聞かせる。

背中を丸めて逃げるようにオフィスを出ていく山本節子を見ながら、私も深呼吸をした。




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