島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

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95.野放し

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島に戻って四日目のこと。久しぶりのお城へベルティーユと参上した。殿下から呼ばれたのだ。

「殿下、長期の滞在許可をお許し頂き、ありがとうございました」
「うむ、暫くのんびりと過ごしてくれ。オードラン公爵には私から話を通してある」
「わあーー、嬉しいです!」
「いや、一緒に島へ行こうと誘っておきながら忙しくて、ゆっくり会えなかった。私はこれから王都へ帰らなければならない」
「えっ、そうなのですか?」
「ああ、だが直ぐに戻るつもりだ。だから島で待っててくれないか?」
「は、はい。お待ちしてます!」

──やった!この島にまだ居られるんだ!

サロンにはベルティーユが給仕してくれたお紅茶の芳醇な香りがする。それを一口頂き、ココロの中で喜びとともに深く味わっていた。 

「ところで、ブリスのことだが…」

殿下は優しい眼差しから、少し厳し目の表情へ変わっていく。なのでわたくしも姿勢をただす。

薄唇さんのことはずっと気にかけていた。出来れば詳しい事情が知りたい。でも…、

「聞いても…宜しいのですか?」
「ああ。君達にとっては牧場の大切な仲間だしね」
「はい。わたくしは議会の窓から飛び降りたのを目撃しました。一体彼は…?」
「うむ、落ち着いて聞いてくれ。…あの日、ブリスはケヴィンを殺害して逃走したんだ」

えっ!?えっ!?ケヴィン様を彼が!?彼だったの!?

思わず手で口を覆う。お紅茶の味など吹っ飛んでいった。

シ、ショックだ。こともあろうか、王太子を殺害してたなんて想像もできないっ…!

「で、でも、何でそんな恐ろしいことを…?」

わけが分からないよ。

「理由は取り調べで明らかになっていくだろう。だが、これだけは言える。彼の行為は許されるべきではないが、それによってこの国の運命が大きく変わったのも事実だ」

そうだ。ジェラール様が王太子になられた。それに陛下も代わられた。そして何といっても、わたくしはケヴィン様の呪縛から解き放たれたのだ。

「実はルーク様からブリスの処分を一任されてね」
「…どうなさるおつもりですか?」
「悩んでる。彼は何人もの貴族を殺害してるしね。遺族のことを思うと…。また、王族に手をかけるのは絶対に許されないことだ。全ての真実を明らかにした上で判断するが、この状況では…ね」
「そうですか…」

でも、わたくしが知ってる彼は冷酷な殺し屋ではない。きっと理由があるはずだ。とはいえ、自分がどうこう言うべきではない。悲しいけど、ないのだ。

「どの様な結果になろうと、わたくしは殿下の判断を支持致します」
「そう言って貰えるとありがたい。彼は近いうちに監獄へ行くだろう。そこで最終判断をする」
「はい…」

ここで殿下の表情が少しだけ和らいだ。

「あ、そうだ。監獄と言えばカリーヌなんだが…」
「あ、あの、妹は改心したのでしょうか?」
「うむむ…それが…まあいい。聞きたいのは彼女が武術を嗜むのかどうかだ。そんな記憶はないが?」

あ…。これはカリーヌが暴れたのね。直ぐにピンときたわ。彼女が本気出せば…。

「殿下、妹はを演じていましたので、あまり表に出てないことですが、実はわたくしの練習相手を軽く倒すくらい強いです」
「…は?」
「幼い頃から一緒に特訓を積み重ねていました」
「な、何だって!?こ、これはいかん!!ベルティーユ、直ぐにバルナバの元へ!!」

やはり、監獄で手がつけられない状況になってるんだわ。でも、独房なのに?まさか、野放し?








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