91 / 105
91.大巣窟
しおりを挟む
※バルナバ視点
カツン!コツン!と、じめじめした通路を力強く歩く。その足音は独房の前で止めた。三日ぶりだ。あのうるさい囚人は大人しく過ごしていただろうか?
「おい、カリーヌ!」
僕はジェラール様から授かった作戦を実行しようとしていた。その準備や調整に少し時間が掛かったものの、実行するなら早い方が良いと判断したのだ。
お前のことなど知らーーん!!…と、タンカ切った手前、あまり会いたくないんだけど。
「くかー…」
扉の柵から彼女のいびきが聞こえる。
「おいおい、寝てんのか!?」
カン!カン!カン!と、警棒で柵を叩く。まだ夕方だ。寝るのは早過ぎる。報告は聞いていたが看守の言うことも聞かず、相変わらず“食っちゃ寝”のだらけた生活を送ってる様だ。
「う…う~ん。うるさいなあ…」
「カリーヌ、起きろ!」
「ん?バルサバかよ。ふぁああああ…」
ぽりぽりとボサボサの髪を掻きながら、乱れた囚人服を直そうともせず虚な目を僕に向けた。
「支度をしろ!」
「あんん何よ?私のことは知らーーん…じゃないの?」
「方針を変えたんだ。この独房から出してやる」
「ええっ!し、釈放なの!?」
「違う」
「やったーー!私は自由だあ!」
「だから違ーーう!!」
「んん?じゃあ、何なのよ?」
「囚人棟へ部屋を替えるのだ」
「囚人棟???」
「いいから支度しろ!」
作戦はこうだ。公爵令嬢だから配慮して特別な独房へ収容してたけど、返ってそれがいけなかった。外部との接触もほぼなく、部屋に閉じ込めてるだけでは我儘な彼女が反省するわけもなく、だらけた不健康な生活を送るだけだったのでは…と。
なので部屋替えをする。
囚人棟の大部屋は十人の共同生活だ。規律がある。ここで規則正しい生活をさせながら、自分と向き合う時間を与えてやるのだ。
「ねえ、バルナバ。そこって部屋広いの?」
前後左右に警護の者を監視させながら、彼女と囚人棟へ移動する。僕は彼女の質問を全て無視した。
馴れ馴れしいんだよ。まあ、行ってからのお楽しみだ。ふふふ…。
実は裏がある。囚人の中でも特に問題児が多い部屋へ入れるのだ。王都から送られて来たどうしようもない凶悪犯の巣窟。いくら彼女が悪役令嬢でも通用しないだろう。
「ねえ、無視すんなよ!」
「…ふん…っだ」
「な、何なのよ、感じわるーー!」
今のうちにせいぜい吠えてろ。そのうち僕に泣きつくのが目に浮かぶよ…。
やがて大部屋の前までたどり着いた。ここはオンナ専用の四階建ての囚人棟だ。彼女は三階の一号室。因みに各階五号室まであり、オンナだけでざっと二百人の囚人が生活してる大巣窟なのだ。
部屋の前で人相の悪いシェリーが待ち構えている。彼女は一号室のサブリーダーだ。元殺人犯の。
「カリーヌ!ここがお前の部屋だ。シェリー、面倒見てやれ」
「…はい」
シェリーは顎をしゃくってカリーヌに部屋へ入る様促した。部屋には目がギラギラした囚人でいっぱいだ。気味が悪いったらありゃしない。
「おい、新入りだ。カリーヌとか言うお嬢さんだ」
「へへへへへ…お嬢さんねえ…」
「ひひひひひ…」
「…なっ、キモっ!」
流石にカリーヌは顔が引きっつていた。
カツン!コツン!と、じめじめした通路を力強く歩く。その足音は独房の前で止めた。三日ぶりだ。あのうるさい囚人は大人しく過ごしていただろうか?
「おい、カリーヌ!」
僕はジェラール様から授かった作戦を実行しようとしていた。その準備や調整に少し時間が掛かったものの、実行するなら早い方が良いと判断したのだ。
お前のことなど知らーーん!!…と、タンカ切った手前、あまり会いたくないんだけど。
「くかー…」
扉の柵から彼女のいびきが聞こえる。
「おいおい、寝てんのか!?」
カン!カン!カン!と、警棒で柵を叩く。まだ夕方だ。寝るのは早過ぎる。報告は聞いていたが看守の言うことも聞かず、相変わらず“食っちゃ寝”のだらけた生活を送ってる様だ。
「う…う~ん。うるさいなあ…」
「カリーヌ、起きろ!」
「ん?バルサバかよ。ふぁああああ…」
ぽりぽりとボサボサの髪を掻きながら、乱れた囚人服を直そうともせず虚な目を僕に向けた。
「支度をしろ!」
「あんん何よ?私のことは知らーーん…じゃないの?」
「方針を変えたんだ。この独房から出してやる」
「ええっ!し、釈放なの!?」
「違う」
「やったーー!私は自由だあ!」
「だから違ーーう!!」
「んん?じゃあ、何なのよ?」
「囚人棟へ部屋を替えるのだ」
「囚人棟???」
「いいから支度しろ!」
作戦はこうだ。公爵令嬢だから配慮して特別な独房へ収容してたけど、返ってそれがいけなかった。外部との接触もほぼなく、部屋に閉じ込めてるだけでは我儘な彼女が反省するわけもなく、だらけた不健康な生活を送るだけだったのでは…と。
なので部屋替えをする。
囚人棟の大部屋は十人の共同生活だ。規律がある。ここで規則正しい生活をさせながら、自分と向き合う時間を与えてやるのだ。
「ねえ、バルナバ。そこって部屋広いの?」
前後左右に警護の者を監視させながら、彼女と囚人棟へ移動する。僕は彼女の質問を全て無視した。
馴れ馴れしいんだよ。まあ、行ってからのお楽しみだ。ふふふ…。
実は裏がある。囚人の中でも特に問題児が多い部屋へ入れるのだ。王都から送られて来たどうしようもない凶悪犯の巣窟。いくら彼女が悪役令嬢でも通用しないだろう。
「ねえ、無視すんなよ!」
「…ふん…っだ」
「な、何なのよ、感じわるーー!」
今のうちにせいぜい吠えてろ。そのうち僕に泣きつくのが目に浮かぶよ…。
やがて大部屋の前までたどり着いた。ここはオンナ専用の四階建ての囚人棟だ。彼女は三階の一号室。因みに各階五号室まであり、オンナだけでざっと二百人の囚人が生活してる大巣窟なのだ。
部屋の前で人相の悪いシェリーが待ち構えている。彼女は一号室のサブリーダーだ。元殺人犯の。
「カリーヌ!ここがお前の部屋だ。シェリー、面倒見てやれ」
「…はい」
シェリーは顎をしゃくってカリーヌに部屋へ入る様促した。部屋には目がギラギラした囚人でいっぱいだ。気味が悪いったらありゃしない。
「おい、新入りだ。カリーヌとか言うお嬢さんだ」
「へへへへへ…お嬢さんねえ…」
「ひひひひひ…」
「…なっ、キモっ!」
流石にカリーヌは顔が引きっつていた。
0
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
もうあなたを待ちません。でも、応援はします。
LIN
恋愛
私とスコットは同じ孤児院で育った。孤児院を出たら、私はこの村に残って食堂で働くけど、彼は王都に行って騎士になる。孤児院から出る最後の日、離れ離れになる私達は恋人になった。
遠征に行ってしまって、なかなか会えないスコット。周りの人達は結婚して家庭を持っているのに、私はスコットを待ち続けていた。
ある日、久しぶりに会えたスコットの寝言を聞いてしまった私は、知りたくもない事実を知ってしまったんだ…
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
私はただ一度の暴言が許せない
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
厳かな結婚式だった。
花婿が花嫁のベールを上げるまでは。
ベールを上げ、その日初めて花嫁の顔を見た花婿マティアスは暴言を吐いた。
「私の花嫁は花のようなスカーレットだ!お前ではない!」と。
そして花嫁の父に向かって怒鳴った。
「騙したな!スカーレットではなく別人をよこすとは!
この婚姻はなしだ!訴えてやるから覚悟しろ!」と。
そこから始まる物語。
作者独自の世界観です。
短編予定。
のちのち、ちょこちょこ続編を書くかもしれません。
話が進むにつれ、ヒロイン・スカーレットの印象が変わっていくと思いますが。
楽しんでいただけると嬉しいです。
※9/10 13話公開後、ミスに気づいて何度か文を訂正、追加しました。申し訳ありません。
※9/20 最終回予定でしたが、訂正終わりませんでした!すみません!明日最終です!
※9/21 本編完結いたしました。ヒロインの夢がどうなったか、のところまでです。
ヒロインが誰を選んだのか?は読者の皆様に想像していただく終わり方となっております。
今後、番外編として別視点から見た物語など数話ののち、
ヒロインが誰と、どうしているかまでを書いたエピローグを公開する予定です。
よろしくお願いします。
※9/27 番外編を公開させていただきました。
※10/3 お話の一部(暴言部分1話、4話、6話)を訂正させていただきました。
※10/23 お話の一部(14話、番外編11ー1話)を訂正させていただきました。
※10/25 完結しました。
ここまでお読みくださった皆様。導いてくださった皆様にお礼申し上げます。
たくさんの方から感想をいただきました。
ありがとうございます。
様々なご意見、真摯に受け止めさせていただきたいと思います。
ただ、皆様に楽しんでいただける場であって欲しいと思いますので、
今後はいただいた感想をを非承認とさせていただく場合がございます。
申し訳ありませんが、どうかご了承くださいませ。
もちろん、私は全て読ませていただきます。
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる