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75.責任者
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※バルナバ視点
辛いお別れだった。アニエス様はお付きの侍女と公爵家へお戻りになられた。ただ、僕は悲し過ぎるはずの感情がちょっと違っている。
あの時、印象的だった姉妹の会話を思い出す。
「カリーヌ。これでおあいこかしら?」
「…おあいこ???」
「ええ。貴女には腹が立つけど、わたくしもケヴィン様とは人生をともにしたくなかったからね。だから貴女には関係なく、結局は島流しされたのかなって…」
「ふーーん!」
「でもね、あんな真似しなくても譲れるものなら譲りたかったよ」
「ふーーん!」
「罪を償って島から戻って来たら、子供のころの様に仲良くしようね。…じゃあ」
そう言い残し去って行くアニエス様を、皆んなで涙を浮かべてお見送りしてたら、彼女は「ふんっ!」と、言葉を吐き捨てた。鬼の形相だった。
そっくりな容姿だけど、性格が真逆なカリーヌを僕は監獄の責任者として、面倒見なければならない。そう思うと憂鬱にもなるさ。
「殿下…やっぱり僕では荷が重いよう」
定期便の船上で王都を眺めながら一人呟いた。僕たち一行は厳重な監視の元、罪人カリーヌを島へ移送している最中なのだ。
ここで殿下とのやり取りを思い出し、更にネガティブな気分になる。
「バルナバ、ペチャア島は一旦お前に任す。責任者だ。島や監獄の運営を頼む。私も時々行くから」
「は…?せ、責任者って…そんないきなり…」
「お前なら出来る。あ、カリーヌには厳しくな」
「いや、あの…」
「それと特別室にある御方を連れて行く。準備を整えておくように」
「だから、ちょっと待って!待ってよ殿下!殿下ったらーーっ!」
王太子になられて滅茶苦茶忙しいのか、そう簡単げに仰った殿下は風の様に去って行く。残された僕は途方に暮れた。
そりゃあ僕だって島のために尽くそうと思ってる。守ってやるって誓ったさ。だけど、責任者って…!いやいや、無理があり過ぎるだろ!
「ああ、せめてアイツが居てくれたらな…」
ふと、監査官殿のことが頭をよぎった。口は悪いが頼りになる。それに人には厳しい。だけど、殿下から密かに聞いて皆んなには詳しく言ってないけど、彼はケヴィン王太子を殺した犯罪者だ。手配されている。捕まったとしても…。
ハッ!や、やつも監獄へ収監されるのか?僕はブリスの面倒も見ることになるのか?いや、やつは色んな貴族も殺したんだ。速攻死刑だろう。それでも殿下は…助けるだろうか…?
そんな暗いことばかりを思い浮かべているうちに、船はペチャア島へ着港した。
「バルナバ様、一旦、お屋敷へ戻りますが、私どものその後のことをお考えくださいね」
「ん?」
あ、そうか。もうアニエス様は居ないんだ。ベルティーユやコリンヌの配置も決めないと。考えることが多すぎるな。
取り敢えずは、この罪人を収監しなければ。
辛いお別れだった。アニエス様はお付きの侍女と公爵家へお戻りになられた。ただ、僕は悲し過ぎるはずの感情がちょっと違っている。
あの時、印象的だった姉妹の会話を思い出す。
「カリーヌ。これでおあいこかしら?」
「…おあいこ???」
「ええ。貴女には腹が立つけど、わたくしもケヴィン様とは人生をともにしたくなかったからね。だから貴女には関係なく、結局は島流しされたのかなって…」
「ふーーん!」
「でもね、あんな真似しなくても譲れるものなら譲りたかったよ」
「ふーーん!」
「罪を償って島から戻って来たら、子供のころの様に仲良くしようね。…じゃあ」
そう言い残し去って行くアニエス様を、皆んなで涙を浮かべてお見送りしてたら、彼女は「ふんっ!」と、言葉を吐き捨てた。鬼の形相だった。
そっくりな容姿だけど、性格が真逆なカリーヌを僕は監獄の責任者として、面倒見なければならない。そう思うと憂鬱にもなるさ。
「殿下…やっぱり僕では荷が重いよう」
定期便の船上で王都を眺めながら一人呟いた。僕たち一行は厳重な監視の元、罪人カリーヌを島へ移送している最中なのだ。
ここで殿下とのやり取りを思い出し、更にネガティブな気分になる。
「バルナバ、ペチャア島は一旦お前に任す。責任者だ。島や監獄の運営を頼む。私も時々行くから」
「は…?せ、責任者って…そんないきなり…」
「お前なら出来る。あ、カリーヌには厳しくな」
「いや、あの…」
「それと特別室にある御方を連れて行く。準備を整えておくように」
「だから、ちょっと待って!待ってよ殿下!殿下ったらーーっ!」
王太子になられて滅茶苦茶忙しいのか、そう簡単げに仰った殿下は風の様に去って行く。残された僕は途方に暮れた。
そりゃあ僕だって島のために尽くそうと思ってる。守ってやるって誓ったさ。だけど、責任者って…!いやいや、無理があり過ぎるだろ!
「ああ、せめてアイツが居てくれたらな…」
ふと、監査官殿のことが頭をよぎった。口は悪いが頼りになる。それに人には厳しい。だけど、殿下から密かに聞いて皆んなには詳しく言ってないけど、彼はケヴィン王太子を殺した犯罪者だ。手配されている。捕まったとしても…。
ハッ!や、やつも監獄へ収監されるのか?僕はブリスの面倒も見ることになるのか?いや、やつは色んな貴族も殺したんだ。速攻死刑だろう。それでも殿下は…助けるだろうか…?
そんな暗いことばかりを思い浮かべているうちに、船はペチャア島へ着港した。
「バルナバ様、一旦、お屋敷へ戻りますが、私どものその後のことをお考えくださいね」
「ん?」
あ、そうか。もうアニエス様は居ないんだ。ベルティーユやコリンヌの配置も決めないと。考えることが多すぎるな。
取り敢えずは、この罪人を収監しなければ。
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