69 / 105
69.呆然
しおりを挟む
王都に来てから五日後のことだった。ゲストルームへ監禁されたに等しいわたくしたちの元へ、コンコンっと久々のノック音がした。
「は、はい」と、バルナバさんが恐る恐る返事をすると、扉の向こう側から殿下の声が聞こえたのだ。
「ああ、殿下ーー!お会いしたかったですう!」
「バルナバ、遅くなったな」
ルームの中へ案内されたジェラール様は、大礼服に身を包まれていた。何かの儀式でしょうか?
「アニエス、心配かけて申し訳ない」
「い、いえ…あの殿下、先日窓から落ちた御方を見ましたが…」
「…あれはブリスだ。色々あってな。今も行方が分からない」
「やっぱり…!」
ブリスと聞いてベルティーユやコリンヌが心配の表情を浮かべる。これまで散々「薄唇さん」などと、悪い通称で呼んでいたが、ココロの中では仲間意識が芽生えているのだ。
「心配は要らない。総力を挙げて捜索してるから、そのうち見つかるだろう」
彼は一体何を…?と、聞きたいけど聞くのも怖いし、聞いてはいけない雰囲気を感じた。
「ところで、私はこれから即位の儀式がある。その後、宮殿へ来て欲しい。アニエスを陛下に紹介したいのだ」
「えっ?」
ち、ちょっと待って!?即位って何の?陛下って?わたくし、拝謁したことあるよ!婚約した時や断罪された時に…今さら何の紹介なの?
「すまないが時間がない。準備を頼む」
そう仰ってジェラール様はルームを後にした。慌ててバルナバさんが追いかける。
「殿下、殿下ーったらあ!」
ほんのひと時の時間だったけど、わけが分からないことだらけだ。でも、とにかく支度するしかない。
「アニエス様、ドレスを仕入れて参ります。コリンヌは髪結、お化粧の準備を!」
さっとベルティーユが動いた。こんな時は頼りになる。
暫くして、どこで手に入れたのか謎だけど、豪華なドレスや装飾品を持ったベルティーユが戻り、そしてバルナバさんも戻ってきた。彼は呆然としてる様だ。
「バルナバ…さん?」
「た、た、大変なことになってるよお!?」
とても興味があるけど聞くのも怖い気がする。でも、彼は言いたくてウズウズしてるみたいだ。
「落ち着いて説明してくださる?」
「は、はい。えーと…何から言おうか?…あ、そうだ。殿下が王太子に即位します!」
「はい???」
「何でもケヴィン様が不慮の事故でお亡くなりになったとか…それで王位継承にですね…」
──お、お亡くなりになった…?ケヴィン様が?
とても信じられない出来ごとに言葉を失った。
「えー、それから事情は分かりませんが、陛下の体調が優れないので、急遽ペチェア島から弟君を国王代理でお迎えしたそうです。なので、アニエス様はルーク様にご紹介されるわけで…」
頭がパニックになった。ベルティーユから髪結されてるのも忘れて、わたくしは呆然としてしまう。
「あと、監視官殿については情報が入りませんでしたので不明です。あ、殿下の付き人が呼びに来るので、それまでにご支度を!…アニエス様?」
ケヴィン様がお亡くなりになったってことは、カリーヌはどうなるのだろう?それからジェラール様はわたくしを呼んで何がしたいの???
「は、はい」と、バルナバさんが恐る恐る返事をすると、扉の向こう側から殿下の声が聞こえたのだ。
「ああ、殿下ーー!お会いしたかったですう!」
「バルナバ、遅くなったな」
ルームの中へ案内されたジェラール様は、大礼服に身を包まれていた。何かの儀式でしょうか?
「アニエス、心配かけて申し訳ない」
「い、いえ…あの殿下、先日窓から落ちた御方を見ましたが…」
「…あれはブリスだ。色々あってな。今も行方が分からない」
「やっぱり…!」
ブリスと聞いてベルティーユやコリンヌが心配の表情を浮かべる。これまで散々「薄唇さん」などと、悪い通称で呼んでいたが、ココロの中では仲間意識が芽生えているのだ。
「心配は要らない。総力を挙げて捜索してるから、そのうち見つかるだろう」
彼は一体何を…?と、聞きたいけど聞くのも怖いし、聞いてはいけない雰囲気を感じた。
「ところで、私はこれから即位の儀式がある。その後、宮殿へ来て欲しい。アニエスを陛下に紹介したいのだ」
「えっ?」
ち、ちょっと待って!?即位って何の?陛下って?わたくし、拝謁したことあるよ!婚約した時や断罪された時に…今さら何の紹介なの?
「すまないが時間がない。準備を頼む」
そう仰ってジェラール様はルームを後にした。慌ててバルナバさんが追いかける。
「殿下、殿下ーったらあ!」
ほんのひと時の時間だったけど、わけが分からないことだらけだ。でも、とにかく支度するしかない。
「アニエス様、ドレスを仕入れて参ります。コリンヌは髪結、お化粧の準備を!」
さっとベルティーユが動いた。こんな時は頼りになる。
暫くして、どこで手に入れたのか謎だけど、豪華なドレスや装飾品を持ったベルティーユが戻り、そしてバルナバさんも戻ってきた。彼は呆然としてる様だ。
「バルナバ…さん?」
「た、た、大変なことになってるよお!?」
とても興味があるけど聞くのも怖い気がする。でも、彼は言いたくてウズウズしてるみたいだ。
「落ち着いて説明してくださる?」
「は、はい。えーと…何から言おうか?…あ、そうだ。殿下が王太子に即位します!」
「はい???」
「何でもケヴィン様が不慮の事故でお亡くなりになったとか…それで王位継承にですね…」
──お、お亡くなりになった…?ケヴィン様が?
とても信じられない出来ごとに言葉を失った。
「えー、それから事情は分かりませんが、陛下の体調が優れないので、急遽ペチェア島から弟君を国王代理でお迎えしたそうです。なので、アニエス様はルーク様にご紹介されるわけで…」
頭がパニックになった。ベルティーユから髪結されてるのも忘れて、わたくしは呆然としてしまう。
「あと、監視官殿については情報が入りませんでしたので不明です。あ、殿下の付き人が呼びに来るので、それまでにご支度を!…アニエス様?」
ケヴィン様がお亡くなりになったってことは、カリーヌはどうなるのだろう?それからジェラール様はわたくしを呼んで何がしたいの???
0
お気に入りに追加
296
あなたにおすすめの小説
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。
聖なる巫女の条件は、私欲で変えられませんので
三谷朱花
恋愛
グラフィ・ベルガット公爵令嬢は、カムシャ国で代々巫女を輩出しているベルガット家の次期巫女だ。代々その巫女は、長女であることが通例で、その下の妹たちが巫女となることはなかった……はずだった。
※アルファポリスのみの公開です。
『残念』悪役令嬢はざまぁを目指すようです
真咲
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生させられた仁科美華は、あれよあれよというまに断罪され、下町に追放された。
「さてと、今日もいっちょ頑張りますかぁ!」
衣食住、安定した収入はかかせませんね?
とあるナルシストイケメンを脅し……いえ、かわいくお願いして家も貸してもらいましたし、和食とかの再現もできたらいいですねぇ。衣?えっと……お風呂どうしよう。
仕事は、まぁあたし魔法使える元貴族ですし?
魔法を利用すれば何でもできちゃうかなって☆
ほらあたし、デキる女ですから☆
………………あ、それと忘れたりは絶対にしないんですが、バッチリ復讐はさせていただきたいものですっ!
あたしを陥れた仕打ちはきーっちり受けてもらわなきゃいけないですもんね!
ラブコメなファンタジーなので、よろしくですです!
トカゲ令嬢とバカにされて聖女候補から外され辺境に追放されましたが、トカゲではなく龍でした。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
リバコーン公爵家の長女ソフィアは、全貴族令嬢10人の1人の聖獣持ちに選ばれたが、その聖獣がこれまで誰も持ったことのない小さく弱々しいトカゲでしかなかった。それに比べて側室から生まれた妹は有名な聖獣スフィンクスが従魔となった。他にもグリフォンやペガサス、ワイバーンなどの実力も名声もある従魔を従える聖女がいた。リバコーン公爵家の名誉を重んじる父親は、ソフィアを正室の領地に追いやり第13王子との婚約も辞退しようとしたのだが……
王立聖女学園、そこは爵位を無視した弱肉強食の競争社会。だがどれだけ努力しようとも神の気紛れで全てが決められてしまう。まず従魔が得られるかどうかで貴族令嬢に残れるかどうかが決まってしまう。
婚約破棄からの国外追放、それで戻って来て欲しいって馬鹿なんですか? それとも馬鹿なんですか?
☆ミ
恋愛
王子との婚約を破棄されて公爵の娘としてショックでした、そのうえ国外追放までされて正直終わったなって
でもその後に王子が戻って来て欲しいって使者を送って来たんです
戻ると思っているとか馬鹿なの? それとも馬鹿なの? ワタクシ絶対にもう王都には戻りません!
あ、でもお父さまはなんて仰るかしら
こんな不甲斐ない娘との縁を切ってしまうかもしれませんね
でも、その時は素直に従いましょう
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる