51 / 105
51.覚悟
しおりを挟む
※ジェラール視点
「もし…あ、いや」
言えなかった。私は言葉を詰まらせてしまう。
『もし、王太子が「王都へ戻れ」と命じたらどうする?』そう問いかけると、続きを説明しなければならない。
『兄は我儘なカリーヌを追放して、再び君と婚約したいらしい。それが島から出られる条件だ。アニエス、王都へ帰りたいか?』とね。随分勝手な話だ。嫌に決まってる。だが──、
拒否するにはかなりの覚悟がいるだろう。最も、利点もある。それは「悪役令嬢」の汚名を晴らすことが出来るのだ。監禁が解かれ「王太子妃」として正々堂々と王都へ戻れる。彼女は天秤にかけてどう判断するだろうか?
いや、愚問だ。質問を変えよう。
「アニエス、島の暮らしはどうだ?」
「ええ、とっても楽しいですわ」
「王都へ戻りたいと思わないのか?無実なのに生涯此処で過ごすことになるんだぞ?」
「はい、覚悟は出来てます。わたくし、ケヴィン様の居る王都には戻りたくありません。それにジェラール様はずっと島に居てくれますよね?」
「勿論。私はこの島を愛してるからね」
島だけではない。君もだ。これは聞くまでもなかったな。ならば私も覚悟を決めるまでだ。
『我が兄、ケヴィン王太子の理不尽な命に対し、徹底的に反論して背いてやる!』
──そう決意を固めた。
アニエスとの面談は、彼女の話を聞いて真実を明らかにすると同時に励ますことが目的だったが、励まされたのはどうやら私の方だった。
ありがとう、アニエス。そして辛かったな、よく頑張った…。
早速、私はビソンを呼んで決断を下す。
「殿下、お呼びでしょうか?」
「うむ。ブリスの提案を受けようと思うが?」
「はい。賢明な判断です。奴は信用してませんが、このままだと「陛下の命」と言うプレッシャーで、追い込まれることになります」
「そうだろうな。暫くは変わらないだろうが段々苦しくなって、何をするか分かったものじゃない」
「では、早速ルーク様のお墓を建てましょう」
「ああ、場所は監獄の敷地内だ。早急に頼む。私は陛下に書簡をしたためよう」
「ははっ」
まさか私が王室に背く行為をするとは思いもよらなかった。だが、やるしかない。ここで逃げても問題を先送りするだけだ。
ブリスに急遽、次の船便で王都へ行って貰おう。私自身が説明しろと言われれば、行くしかない。とにかく最後まで「嘘」を突き通すのだ。
こうして運命が動き始めることになった。そして彼女と会って気持ちが昂っている。
彼女は無実だ。罪人ではない。だったら、私と結ばれても可笑しくはないのでは?
「あ、ビソン、もう一つ頼みがある」
「もし…あ、いや」
言えなかった。私は言葉を詰まらせてしまう。
『もし、王太子が「王都へ戻れ」と命じたらどうする?』そう問いかけると、続きを説明しなければならない。
『兄は我儘なカリーヌを追放して、再び君と婚約したいらしい。それが島から出られる条件だ。アニエス、王都へ帰りたいか?』とね。随分勝手な話だ。嫌に決まってる。だが──、
拒否するにはかなりの覚悟がいるだろう。最も、利点もある。それは「悪役令嬢」の汚名を晴らすことが出来るのだ。監禁が解かれ「王太子妃」として正々堂々と王都へ戻れる。彼女は天秤にかけてどう判断するだろうか?
いや、愚問だ。質問を変えよう。
「アニエス、島の暮らしはどうだ?」
「ええ、とっても楽しいですわ」
「王都へ戻りたいと思わないのか?無実なのに生涯此処で過ごすことになるんだぞ?」
「はい、覚悟は出来てます。わたくし、ケヴィン様の居る王都には戻りたくありません。それにジェラール様はずっと島に居てくれますよね?」
「勿論。私はこの島を愛してるからね」
島だけではない。君もだ。これは聞くまでもなかったな。ならば私も覚悟を決めるまでだ。
『我が兄、ケヴィン王太子の理不尽な命に対し、徹底的に反論して背いてやる!』
──そう決意を固めた。
アニエスとの面談は、彼女の話を聞いて真実を明らかにすると同時に励ますことが目的だったが、励まされたのはどうやら私の方だった。
ありがとう、アニエス。そして辛かったな、よく頑張った…。
早速、私はビソンを呼んで決断を下す。
「殿下、お呼びでしょうか?」
「うむ。ブリスの提案を受けようと思うが?」
「はい。賢明な判断です。奴は信用してませんが、このままだと「陛下の命」と言うプレッシャーで、追い込まれることになります」
「そうだろうな。暫くは変わらないだろうが段々苦しくなって、何をするか分かったものじゃない」
「では、早速ルーク様のお墓を建てましょう」
「ああ、場所は監獄の敷地内だ。早急に頼む。私は陛下に書簡をしたためよう」
「ははっ」
まさか私が王室に背く行為をするとは思いもよらなかった。だが、やるしかない。ここで逃げても問題を先送りするだけだ。
ブリスに急遽、次の船便で王都へ行って貰おう。私自身が説明しろと言われれば、行くしかない。とにかく最後まで「嘘」を突き通すのだ。
こうして運命が動き始めることになった。そして彼女と会って気持ちが昂っている。
彼女は無実だ。罪人ではない。だったら、私と結ばれても可笑しくはないのでは?
「あ、ビソン、もう一つ頼みがある」
0
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
もうあなたを待ちません。でも、応援はします。
LIN
恋愛
私とスコットは同じ孤児院で育った。孤児院を出たら、私はこの村に残って食堂で働くけど、彼は王都に行って騎士になる。孤児院から出る最後の日、離れ離れになる私達は恋人になった。
遠征に行ってしまって、なかなか会えないスコット。周りの人達は結婚して家庭を持っているのに、私はスコットを待ち続けていた。
ある日、久しぶりに会えたスコットの寝言を聞いてしまった私は、知りたくもない事実を知ってしまったんだ…
兄を溺愛する母に捨てられたので私は家族を捨てる事にします!
ユウ
恋愛
幼い頃から兄を溺愛する母。
自由奔放で独身貴族を貫いていた兄がようやく結婚を決めた。
しかし、兄の結婚で全てが崩壊する事になった。
「今すぐこの邸から出て行ってくれる?遺産相続も放棄して」
「は?」
母の我儘に振り回され同居し世話をして来たのに理不尽な理由で邸から追い出されることになったマリーは自分勝手な母に愛想が尽きた。
「もう縁を切ろう」
「マリー」
家族は夫だけだと思い領地を離れることにしたそんな中。
義母から同居を願い出られることになり、マリー達は義母の元に身を寄せることになった。
対するマリーの母は念願の新生活と思いきや、思ったように進まず新たな嫁はびっくり箱のような人物で生活にも支障が起きた事でマリーを呼び戻そうとするも。
「無理ですわ。王都から領地まで遠すぎます」
都合の良い時だけ利用する母に愛情はない。
「お兄様にお任せします」
実母よりも大事にしてくれる義母と夫を優先しすることにしたのだった。
婚約者が私の妹と結婚したいと言い出したら、両親が快く応じた話
しがついつか
恋愛
「リーゼ、僕たちの婚約を解消しよう。僕はリーゼではなく、アルマを愛しているんだ」
「お姉様、ごめんなさい。でも私――私達は愛し合っているの」
父親達が友人であったため婚約を結んだリーゼ・マイヤーとダニエル・ミュラー。
ある日ダニエルに呼び出されたリーゼは、彼の口から婚約の解消と、彼女の妹のアルマと婚約を結び直すことを告げられた。
婚約者の交代は双方の両親から既に了承を得ているという。
両親も妹の味方なのだと暗い気持ちになったリーゼだったが…。
悪役令嬢より取り巻き令嬢の方が問題あると思います
蓮
恋愛
両親と死別し、孤児院暮らしの平民だったシャーリーはクリフォード男爵家の養女として引き取られた。丁度その頃市井では男爵家など貴族に引き取られた少女が王子や公爵令息など、高貴な身分の男性と恋に落ちて幸せになる小説が流行っていた。シャーリーは自分もそうなるのではないかとつい夢見てしまう。しかし、夜会でコンプトン侯爵令嬢ベアトリスと出会う。シャーリーはベアトリスにマナーや所作など色々と注意されてしまう。シャーリーは彼女を小説に出て来る悪役令嬢みたいだと思った。しかし、それが違うということにシャーリーはすぐに気付く。ベアトリスはシャーリーが嘲笑の的にならないようマナーや所作を教えてくれていたのだ。
(あれ? ベアトリス様って実はもしかして良い人?)
シャーリーはそう思い、ベアトリスと交流を深めることにしてみた。
しかしそんな中、シャーリーはあるベアトリスの取り巻きであるチェスター伯爵令嬢カレンからネチネチと嫌味を言われるようになる。カレンは平民だったシャーリーを気に入らないらしい。更に、他の令嬢への嫌がらせの罪をベアトリスに着せて彼女を社交界から追放しようともしていた。彼女はベアトリスも気に入らないらしい。それに気付いたシャーリーは怒り狂う。
「私に色々良くしてくださったベアトリス様に冤罪をかけようとするなんて許せない!」
シャーリーは仲良くなったテヴァルー子爵令息ヴィンセント、ベアトリスの婚約者であるモールバラ公爵令息アイザック、ベアトリスの弟であるキースと共に、ベアトリスを救う計画を立て始めた。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。
ジャンルは恋愛メインではありませんが、アルファポリスでは当てはまるジャンルが恋愛しかありませんでした。
【完結】愛してなどおりませんが
仲村 嘉高
恋愛
生まれた瞬間から、王妃になる事が決まっていたアメリア。
物心がついた頃には、王妃になる為の教育が始まった。
父親も母親も娘ではなく、王妃になる者として接してくる。
実兄だけは妹として可愛がってくれたが、それも皆に隠れてコッソリとだった。
そんなある日、両親が事故で亡くなった同い年の従妹ミアが引き取られた。
「可愛い娘が欲しかったの」
父親も母親も、従妹をただただ可愛いがった。
婚約者である王太子も、婚約者のアメリアよりミアとの時間を持ち始め……?
※HOT最高3位!ありがとうございます!
※『廃嫡王子』と設定が似てますが、別のお話です
※またやっちまった、断罪別ルート。(17話から)
どうしても決められなかった!!
結果は同じです。
(他サイトで公開していたものを、こちらでも公開しました)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる