島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

文字の大きさ
上 下
35 / 105

35.ポジティブ

しおりを挟む
「アニエス様ー、こちらの要望が全て通りましたよー、いやあ、殿下は太っ腹ですねえ!」

視察を終えたバルナバが明るく報告してくれた。

「ごめんなさい。わたくし上手く説明出来なくて」
「いえいえ、良いんですよ。殿下も多分、ドキドキしてたんだと思います。あ、そうだ。今度、お城で面談したいって」
「ジェラール様が?」
「はい。二人っきりで話がしたいって」

そ、そっか…。でも、また泣いちゃうかなぁ。

「とても心配されてましたよ」
「ありがとう、バルナバさん。今度はちゃんとするから」

──とは言ったものの、自信はない。会って何をお話すればいいの?

『わたくしはケヴィン様に襲われそうになって、結婚するのが嫌で、態と罪を被って此処へ来ました』って言ったら困るよねえ。でも、彼には本当のことを知って欲しい。誤解されたまま、島で過ごすのは気が引けるわ。


「アニエス様、監視官殿とソフィアが早速、畑を耕しておいでです!」
「まあ!」
「コリンヌ、わたくしたちもお手伝いに行きましょう!」
「あ、はい!」
「ああん、待って、僕も行くよー!キース、お前もおいで!」
「ワン、ワン、ワ、ワンー!」

わたくしたちは牧場を駆けって行く。ジェラール様との対面が上手くいかなかったけど、クヨクヨしても始まらない。またチャンスを作ってくれたのだ。ココロの準備は整ってないけど、今度こそは!と、ポジティブに考えるしかない。


「おい、バルナバ。牧場が広がったんだ。柵を張り巡らしたいから材料を調達してこい」

くわを持った監視官殿が、せっせと土地を整備している。

「監視官殿、張り切ってますねー」
「お前を材料調達係に任命する。しっかりやれ」
「は?は?何で貴方が仕切ってんですか?」

その問いには答えず、薄唇さんがチラッとわたくしを見た。

「アニエス、この牧場は農園の拡大で大っきくなるぞ。泣いてる暇などない!」
「だーかーらー、さっきからどんな立場で言ってるんですかあ?」
「ありがとう。監視官殿。わたくしもお手伝いしますからね」
「アニエス様?」
「皆んなで楽しくやりましょう。ね、バルナバさん!」
「は、はあ。まあ、そう仰るのなら…勿論、材料は揃えますけどね。いや、それは僕しか出来ないことだし…ぶつぶつ…」

不満げなバルナバにコリンヌがそっと手を握って、慰める。二人は見つめ合って軽く頷いた。

うふふ、見せつけてくれるわね。

「ところでアニエス、お前、薬草に詳しいんだってな。山で調達して…あ、でも一人じゃ無理だな。山は危険だ。今度、俺と一緒に行こうか」
「あ、はい!」

薬草畑を作りたいって言ったのはわたくしだ。子供たちが病気や怪我をしても、この島は医療が万全ではない。程度によっては本土からお医者様を呼ばなければ対応出来ないこともある。

だからせめて応急処置くらいはしたい。

わたくしは薄唇さんと薬草を採りに行くことになった。





しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

罠にはめられた公爵令嬢~今度は私が報復する番です

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
【私と私の家族の命を奪ったのは一体誰?】 私には婚約中の王子がいた。 ある夜のこと、内密で王子から城に呼び出されると、彼は見知らぬ女性と共に私を待ち受けていた。 そして突然告げられた一方的な婚約破棄。しかし二人の婚約は政略的なものであり、とてもでは無いが受け入れられるものではなかった。そこで婚約破棄の件は持ち帰らせてもらうことにしたその帰り道。突然馬車が襲われ、逃げる途中で私は滝に落下してしまう。 次に目覚めた場所は粗末な小屋の中で、私を助けたという青年が側にいた。そして彼の話で私は驚愕の事実を知ることになる。 目覚めた世界は10年後であり、家族は反逆罪で全員処刑されていた。更に驚くべきことに蘇った身体は全く別人の女性であった。 名前も素性も分からないこの身体で、自分と家族の命を奪った相手に必ず報復することに私は決めた――。 ※他サイトでも投稿中

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

【完結】魔力がないと見下されていた私は仮面で素顔を隠した伯爵と結婚することになりました〜さらに魔力石まで作り出せなんて、冗談じゃない〜

光城 朱純
ファンタジー
魔力が強いはずの見た目に生まれた王女リーゼロッテ。 それにも拘わらず、魔力の片鱗すらみえないリーゼロッテは家族中から疎まれ、ある日辺境伯との結婚を決められる。 自分のあざを隠す為に仮面をつけて生活する辺境伯は、龍を操ることができると噂の伯爵。 隣に魔獣の出る森を持ち、雪深い辺境地での冷たい辺境伯との新婚生活は、身も心も凍えそう。 それでも国の端でひっそり生きていくから、もう放っておいて下さい。 私のことは私で何とかします。 ですから、国のことは国王が何とかすればいいのです。 魔力が使えない私に、魔力石を作り出せだなんて、そんなの無茶です。 もし作り出すことができたとしても、やすやすと渡したりしませんよ? これまで虐げられた分、ちゃんと返して下さいね。 表紙はPhoto AC様よりお借りしております。

毒を盛られて生死を彷徨い前世の記憶を取り戻しました。小説の悪役令嬢などやってられません。

克全
ファンタジー
公爵令嬢エマは、アバコーン王国の王太子チャーリーの婚約者だった。だがステュワート教団の孤児院で性技を仕込まれたイザベラに籠絡されていた。王太子達に無実の罪をなすりつけられエマは、修道院に送られた。王太子達は執拗で、本来なら侯爵一族とは認められない妾腹の叔父を操り、父親と母嫌を殺させ公爵家を乗っ取ってしまった。母の父親であるブラウン侯爵が最後まで護ろうとしてくれるも、王国とステュワート教団が協力し、イザベラが直接新種の空気感染する毒薬まで使った事で、毒殺されそうになった。だがこれをきっかけに、異世界で暴漢に腹を刺された女性、美咲の魂が憑依同居する事になった。その女性の話しでは、自分の住んでいる世界の話が、異世界では小説になって多くの人が知っているという。エマと美咲は協力して王国と教団に復讐する事にした。

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

拝啓、愛しの侯爵様~行き遅れ令嬢ですが、運命の人は案外近くにいたようです~

藤原ライラ
ファンタジー
心を奪われた手紙の先には、運命の人が待っていた――  子爵令嬢のキャロラインは、両親を早くに亡くし、年の離れた弟の面倒を見ているうちにすっかり婚期を逃しつつあった。夜会でも誰からも相手にされない彼女は、新しい出会いを求めて文通を始めることに。届いた美しい字で洗練された内容の手紙に、相手はきっとうんと年上の素敵なおじ様のはずだとキャロラインは予想する。  彼とのやり取りにときめく毎日だがそれに難癖をつける者がいた。幼馴染で侯爵家の嫡男、クリストファーである。 「理想の相手なんかに巡り合えるわけないだろう。現実を見た方がいい」  四つ年下の彼はいつも辛辣で彼女には冷たい。  そんな時キャロラインは、夜会で想像した文通相手とそっくりな人物に出会ってしまう……。  文通相手の正体は一体誰なのか。そしてキャロラインの恋の行方は!? じれじれ両片思いです。 ※他サイトでも掲載しています。 イラスト:ひろ様(https://xfolio.jp/portfolio/hiro_foxtail)

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...