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34.涙の再会

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ジェラール様と対面する──、そう考えると落ち着かないよ。この島で自由に過ごしているけれど、わたくしは。彼にどんな態度で接すれば良いの?だって、島流しされたオンナが自給自足したいから畑の土地をもっと欲しい!だなんて、どう考えても厚かましいでしょう!?

あー、マズい。絶対マズいよねー?

そうココロの中で叫んでいた。

そんな心境が伝わったのか、ベルティーユが心配しながらわたくしの髪を結っている。

「アニエス様、如何されました?」
「う…ん。お会いする自信がないって言うか…」
「大丈夫です。お綺麗ですよ。こんな日が来ると思ってお洋服も準備してましたし…まあ借り物ですけど。それに王都から取り寄せたお化粧品が間に合って良かったです」

鏡を見る自分は確かに罪人とは思えない。まるで貴族の様な装いに懐かしささえ抱いている。

「ねえ、やっぱり会いたくないな…」
「何故です?」
「だって…」
「自信をお持ちください。罪人とはいえ、貴女は立派な公爵令嬢です。それにいざとなればソフィアが上手く説明しますから」

脚が震えていた。でも、もう時間だ。わたくしは極度の緊張の中、重い足取りでお屋敷を出た。

「ふぅーー」

何度も深呼吸を繰り返しながら待っていると、白馬の王子様率いるお役人さんたち一行が見えてくる。

「あ、お越しになられましたよ」

コリンヌやソフィアはワクワクしてる様だ。それにしても結構な人数。もはやあれは視察団だ。

「バルナバさん含めて、十数人も居ますねえ」

そんな声が聞こえたけど、わたくしは白馬の主しか意識できない。

そしてパカッパカッという蹄の音が間近に迫った。いよいよあの御方が目の前に来るのだ。コリンヌ、ソフィア、ベルティーユ、そして今日は何故か無口な薄口さんが一斉に頭を下げて出迎えた。

「アニエス様ー、殿下がお越しになられましたよー!見て見て、あのセーター着てますよー!」

バルナバさんの明るい声が鳴り響く。

セ、セーター。そっか、わざわざプレゼントしたセーターを着てくれたんだ…。バルナバさん、きっとお話しやすい様に気を使ってるのね。

そうは思ったものの、どうリアクションして良いのか分からない。

そうだわ。お花の…ライラックの御礼を言わなきゃ。

「久しぶりだな、アニエス」

そう彼に声をかけられた瞬間、わたくしは頭が真っ白になってしまった。と、同時に十年ぶりの再会がこの様な形となって、申し訳ない気持ちが全面に出てしまう。

ま、先ずは謝らないと。罪人となってしまったことを。

「ジェラール様…」

でもそれ以上、言葉が出なかった。そんな自分が情けなくて涙が出そうだ。

「セーター、ありがとう。大事にするよ」

何も言えないわたくしに気遣って、彼は優しい言葉をかけてくれた。

謝らなきゃ!謝らなきゃ!

「わたくし…あの…」  

ダメだ。涙が溢れてしまった。

『ジェラール様、ごめんなさい。罪人となって。でもね、本当は違うの』

ココロの中で呟くので精一杯だった。

「わー、アニエス様、感激してるんですね?殿下、説明はソフィアにして貰います」
「う、うむ」

結局、ジェラール様はバルナバさんやソフィアに連れられ、牧場へ行ってしまう。

失意で項垂れてるわたくしの肩を、そっとベルティーユが支えてくれた。
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