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30.面談
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※ジェラール視点
「殿下、ソフィアは大当たりですよー」
バルナバは開口一番、そう口にした。
「そうか。それは良かったな」
「はい、園芸の知識や技術が素晴らしいです。アニエス牧場は、ペチェア島で最も豊かな土地になりますよ!」
ビソンの人選だ。私も彼女と聞いて、少し戸惑ってはいた。だが、いつまでも収監する訳にはいかないだろう。
恐らく彼女は何の罪もない。しいて言えば、何か秘密を知ってるのかもしれないが…。
「ソフィアと面談されましたよね?」
「ああ、したさ」
数日前、監獄を視察した後、面談室に彼女を呼んで話をした。平民とはいえ、あの御方に仕えていた使用人だ。凛として気品があった。
「君を出獄させる。だが、島からは出られない」
「心得ております」
「ある令嬢の世話を頼みたい。君の能力を発揮できる場所だ」
「囚人であったことは大丈夫でしょうか?」
「問題ない。それに私は貴女を囚人と思ってない。更に言えば、ある令嬢とは流刑の身だ」
彼女は一瞬、驚いた表情を見せたが、直ぐに冷静を取り戻した。
「かしこまりました。精一杯尽くさせて頂きます」
「うむ、宜しく頼む」
「殿下、一つお聞きしても宜しいですか?」
「何か?」
「囚人と直接、お話されるのですね。私以外もでしようか?」
「そういう方針だ」
「では、あの御方にもお話されましたか?」
「暫くは会ってないが、近々、訪問を考えてる」
「元気でお過ごしされてるでしょうか?」
「私の部下が接見してる。元気そうだ。君のことも話したらしいが『よしなに頼む』と伝言されたよ」
「そうですか…」
君を再び、あの御方の世話をさせるつもりはない。そう付け加えようと思ったが、ココロに仕舞った。
「殿下、ではそろそろアニエス様とも面談されては如何ですか?」
「バルナバ、次に面談する人物は既に決めている」
「はて、どなたでしょう?」
「監獄の特別室にいる御方だ」
「あ…」
国王陛下の弟君であるルーク様の存在は勿論、彼も知っている。元々、特別待遇で今のアニエスの屋敷で暮らしていたのだ。そして、バルナバは専属の監視役だった。
「あの御方と私が接触するのは危険だが…」
「薄唇殿ですね。そう言えばソフィアと牧場で二人きりにしても宜しいのですか?」
「ビソンに抜かりはない。ブリスは要注意人物でマークしてるからな」
「難しいことは分かりませんが、殿下は政局に巻き込まれる様なことはしないでくださいね。だって、あの御方の二の舞になりますよ?」
「…分かってるさ」
数年前、特別待遇だったルーク様を慕って、王都から密かに接見しようと島を渡る貴族が多くいたらしい。このままでは国が乱れると判断したルーク様は、自ら監獄へお入りになったのだ。
その話を聞いて、他人事ではないと感じた。我が兄ケヴィンが国王になった時、同じ現象が起こりうるのでは…と。
私は現状のままで良い。国王になる気もない。だから、どう立ち振る舞えばいいのか教えてほしいのだ。あの御方に──。
「殿下、ソフィアは大当たりですよー」
バルナバは開口一番、そう口にした。
「そうか。それは良かったな」
「はい、園芸の知識や技術が素晴らしいです。アニエス牧場は、ペチェア島で最も豊かな土地になりますよ!」
ビソンの人選だ。私も彼女と聞いて、少し戸惑ってはいた。だが、いつまでも収監する訳にはいかないだろう。
恐らく彼女は何の罪もない。しいて言えば、何か秘密を知ってるのかもしれないが…。
「ソフィアと面談されましたよね?」
「ああ、したさ」
数日前、監獄を視察した後、面談室に彼女を呼んで話をした。平民とはいえ、あの御方に仕えていた使用人だ。凛として気品があった。
「君を出獄させる。だが、島からは出られない」
「心得ております」
「ある令嬢の世話を頼みたい。君の能力を発揮できる場所だ」
「囚人であったことは大丈夫でしょうか?」
「問題ない。それに私は貴女を囚人と思ってない。更に言えば、ある令嬢とは流刑の身だ」
彼女は一瞬、驚いた表情を見せたが、直ぐに冷静を取り戻した。
「かしこまりました。精一杯尽くさせて頂きます」
「うむ、宜しく頼む」
「殿下、一つお聞きしても宜しいですか?」
「何か?」
「囚人と直接、お話されるのですね。私以外もでしようか?」
「そういう方針だ」
「では、あの御方にもお話されましたか?」
「暫くは会ってないが、近々、訪問を考えてる」
「元気でお過ごしされてるでしょうか?」
「私の部下が接見してる。元気そうだ。君のことも話したらしいが『よしなに頼む』と伝言されたよ」
「そうですか…」
君を再び、あの御方の世話をさせるつもりはない。そう付け加えようと思ったが、ココロに仕舞った。
「殿下、ではそろそろアニエス様とも面談されては如何ですか?」
「バルナバ、次に面談する人物は既に決めている」
「はて、どなたでしょう?」
「監獄の特別室にいる御方だ」
「あ…」
国王陛下の弟君であるルーク様の存在は勿論、彼も知っている。元々、特別待遇で今のアニエスの屋敷で暮らしていたのだ。そして、バルナバは専属の監視役だった。
「あの御方と私が接触するのは危険だが…」
「薄唇殿ですね。そう言えばソフィアと牧場で二人きりにしても宜しいのですか?」
「ビソンに抜かりはない。ブリスは要注意人物でマークしてるからな」
「難しいことは分かりませんが、殿下は政局に巻き込まれる様なことはしないでくださいね。だって、あの御方の二の舞になりますよ?」
「…分かってるさ」
数年前、特別待遇だったルーク様を慕って、王都から密かに接見しようと島を渡る貴族が多くいたらしい。このままでは国が乱れると判断したルーク様は、自ら監獄へお入りになったのだ。
その話を聞いて、他人事ではないと感じた。我が兄ケヴィンが国王になった時、同じ現象が起こりうるのでは…と。
私は現状のままで良い。国王になる気もない。だから、どう立ち振る舞えばいいのか教えてほしいのだ。あの御方に──。
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