島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

文字の大きさ
上 下
30 / 105

30.面談

しおりを挟む
※ジェラール視点

「殿下、ソフィアは大当たりですよー」

バルナバは開口一番、そう口にした。

「そうか。それは良かったな」
「はい、園芸の知識や技術が素晴らしいです。アニエス牧場は、ペチェア島で最も豊かな土地になりますよ!」

ビソンの人選だ。私も彼女と聞いて、少し戸惑ってはいた。だが、いつまでも収監する訳にはいかないだろう。

恐らく彼女は何の罪もない。しいて言えば、何か秘密を知ってるのかもしれないが…。

「ソフィアと面談されましたよね?」
「ああ、したさ」



数日前、監獄を視察した後、面談室に彼女を呼んで話をした。平民とはいえ、あの御方に仕えていた使用人だ。凛として気品があった。

「君を出獄させる。だが、島からは出られない」
「心得ております」
「ある令嬢の世話を頼みたい。君の能力を発揮できる場所だ」
「囚人であったことは大丈夫でしょうか?」
「問題ない。それに私は貴女を囚人と思ってない。更に言えば、ある令嬢とはだ」

彼女は一瞬、驚いた表情を見せたが、直ぐに冷静を取り戻した。

「かしこまりました。精一杯尽くさせて頂きます」
「うむ、宜しく頼む」
「殿下、一つお聞きしても宜しいですか?」
「何か?」
「囚人と直接、お話されるのですね。私以外もでしようか?」
「そういう方針だ」
「では、あの御方にもお話されましたか?」
「暫くは会ってないが、近々、訪問を考えてる」
「元気でお過ごしされてるでしょうか?」
「私の部下が接見してる。元気そうだ。君のことも話したらしいが『よしなに頼む』と伝言されたよ」
「そうですか…」

君を再び、あの御方の世話をさせるつもりはない。そう付け加えようと思ったが、ココロに仕舞った。



「殿下、ではそろそろアニエス様とも面談されては如何ですか?」
「バルナバ、次に面談する人物は既に決めている」
「はて、どなたでしょう?」
「監獄の特別室にいる御方だ」
「あ…」

国王陛下の弟君であるルーク様の存在は勿論、彼も知っている。元々、特別待遇で今のアニエスの屋敷で暮らしていたのだ。そして、バルナバは専属の監視役だった。

「あの御方と私が接触するのは危険だが…」
「薄唇殿ですね。そう言えばソフィアと牧場で二人きりにしても宜しいのですか?」
「ビソンに抜かりはない。ブリスは要注意人物でマークしてるからな」
「難しいことは分かりませんが、殿下は政局に巻き込まれる様なことはしないでくださいね。だって、あの御方の二の舞になりますよ?」
「…分かってるさ」

数年前、特別待遇だったルーク様を慕って、王都から密かに接見しようと島を渡る貴族が多くいたらしい。このままでは国が乱れると判断したルーク様は、自ら監獄へお入りになったのだ。

その話を聞いて、他人事ではないと感じた。我が兄ケヴィンが国王になった時、同じ現象が起こりうるのでは…と。

私は現状のままで良い。国王になる気もない。だから、どう立ち振る舞えばいいのか教えてほしいのだ。あの御方に──。




しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

婚約破棄を宣告した王子は慌てる?~公爵令嬢マリアの思惑~

岡暁舟
恋愛
第一王子ポワソンから不意に婚約破棄を宣告されることになった公爵令嬢のマリア。でも、彼女はなにも心配していなかった。ポワソンの本当の狙いはマリアの属するランドン家を破滅させることだった。 王家に成り代わって社会を牛耳っているランドン家を潰す……でも、マリアはただでは転ばなかった。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

神託の聖女様~偽義妹を置き去りにすることにしました

青の雀
恋愛
半年前に両親を亡くした公爵令嬢のバレンシアは、相続権を王位から認められ、晴れて公爵位を叙勲されることになった。 それから半年後、突如現れた義妹と称する女に王太子殿下との婚約まで奪われることになったため、怒りに任せて家出をするはずが、公爵家の使用人もろとも家を出ることに……。

【完結】小悪魔笑顔の令嬢は断罪した令息たちの奇妙な行動のわけを知りたい

宇水涼麻
恋愛
ポーリィナは卒業パーティーで断罪され王子との婚約を破棄された。 その翌日、王子と一緒になってポーリィナを断罪していた高位貴族の子息たちがポーリィナに面会を求める手紙が早馬にて届けられた。 あのようなことをして面会を求めてくるとは?? 断罪をした者たちと会いたくないけど、面会に来る理由が気になる。だって普通じゃありえない。 ポーリィナは興味に勝てず、彼らと会うことにしてみた。 一万文字程度の短め予定。編集改編手直しのため、連載にしました。 リクエストをいただき、男性視点も入れたので思いの外長くなりました。 毎日更新いたします。

「悪女」だそうなので、婚約破棄されましたが、ありがとう!第二の人生をはじめたいと思います!

あなはにす
恋愛
 なんでも、わがままな伯爵令息の婚約者に合わせて過ごしていた男爵令嬢、ティア。ある日、学園で公衆の面前で、した覚えのない悪行を糾弾されて、婚約破棄を叫ばれる。しかし、なんでも、婚約者に合わせていたティアはこれからは、好きにしたい!と、思うが、両親から言われたことは、ただ、次の婚約を取り付けるということだけだった。  学校では、醜聞が広まり、ひとけのないところにいたティアの前に現れた、この国の第一王子は、なぜか自分のことを知っていて……?  婚約破棄から始まるシンデレラストーリー!

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後

柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。 二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。 けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。 ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。 だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。 グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。 そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。

処理中です...