20 / 105
20.報告
しおりを挟む
※ブリス視点
「ケヴィン様、罪人は慎ましく暮らしています」
俺は宮殿のダイニングホールで、朝からワインをかっくらってる王太子にペチェア島での報告を行っていた。勿論、此処にカリーヌは居ない。そのタイミングを見計らってのことだ。
「そうか。アニエスは大人しくしてるのか」
「はい。特に問題はないかと」
「ふーん。で、ジェラールの様子は?」
「城で黙々と執務にあたってるだけですね」
「アイツの不審な点はなかったのか?」
「探ってみましたが、今のところは…」
ケヴィンは島からの献上品である魚料理を美味しそうに食べていた。
「それにしても上手いな。あの島は魚がいい」
「はっ、それは実感しております」
「ふふふ、そうだろう。観光客も居ない罪人だらけの全く魅力のない島だが、漁業だけは素晴らしい。あそこは魚で持ってる様なものだ。ははは…」
ふん、能天気なお人だ。その魅力のない島へ赴任させておいて。くそったれめが。本当のこと言うぞ?あのな、お前が嫌ってる殿下は非の打ち所がない素晴らしい領主だったよ。…少し変わってるけどな。
そうココロの中で毒づいた。
「ところで…カリーヌなんだか…」
「王室の教育は順調ですか?」
「いや、困ったもんだ。一年ではとても…」
お、おい、それじゃ俺はいつまであの島に居なきゃならないんだよ?
「英才教育なさってるんでしょう?一流の講師を雇って」
「まあ、そうなんだが。覚えが悪くて…いや、覚える気がないのかな?」
「そ、そんなことは無いかと…」
「最近、ヒステリックで困ってるんだ」
いや、だーかーらー、ちゃんとやってくれよ。お前が強引に決めたんだろうが。
「と言うことで引き続きアニエスを監視してくれ。あ、念のため“変な虫”がつかない様にな」
「は…?」
何を言ってるんだ?何のために?コイツはアニエスをどうしようと思ってるんだ?
しっかりとカリーヌの面倒見てくださいよ!って言いたいところだがやめておこう。馬鹿と問答する時間はない。
俺は別の用事があるのだ。
「かしこまりました。失礼します」
その足であの御方へ拝謁しに行く。後をつけられてないか一応警戒するが、ケヴィンにそんな采配は無い。全くの無警戒だ。まあ今のところ、俺を警戒してるのはビソンだけだろう。背後に殿下が居るだろうけどな。そのビソンの配下も王都までは追えない。せいぜい島で俺を見張ってろ。知らんぷりしといてやるから…。
そんなことを考えながら、宮殿の奥深くまで足を運んだ。警護の者に話を通し執務室の前へ立つ。
「ブリスです。ご報告を」
「うむ、入れ」
その声の持ち主は国王陛下だ。
俺はケヴィン様の配下の様で実は陛下直属の諜報員なのだ。このことはあの馬鹿は知らない。
「監獄で会えたか?」
「残念ながら特別室の前まで行ったのですが、中は入れませんでした」
「では生存確認は出来なかったと言うわけだな?」
「はい。これ以上は陛下の書簡が必要です。警護もしっかりしてますので」
「ふーむ。流石はジェラールだな」
「如何でしょう、直接本人へ書簡を送られては?その使者をお命じくだされば面会は可能です」
「なるほど書簡ねえ。暫く考えたい。お前も何らかの手を考えておけ」
「ははっ」
そうは言ってもね。俺がどうこう出来る相手ではない。そもそも貴方が追放した弟君ですよ?
あの厳重な監獄の中で、どうやって彼を暗殺するのですか…?
「ケヴィン様、罪人は慎ましく暮らしています」
俺は宮殿のダイニングホールで、朝からワインをかっくらってる王太子にペチェア島での報告を行っていた。勿論、此処にカリーヌは居ない。そのタイミングを見計らってのことだ。
「そうか。アニエスは大人しくしてるのか」
「はい。特に問題はないかと」
「ふーん。で、ジェラールの様子は?」
「城で黙々と執務にあたってるだけですね」
「アイツの不審な点はなかったのか?」
「探ってみましたが、今のところは…」
ケヴィンは島からの献上品である魚料理を美味しそうに食べていた。
「それにしても上手いな。あの島は魚がいい」
「はっ、それは実感しております」
「ふふふ、そうだろう。観光客も居ない罪人だらけの全く魅力のない島だが、漁業だけは素晴らしい。あそこは魚で持ってる様なものだ。ははは…」
ふん、能天気なお人だ。その魅力のない島へ赴任させておいて。くそったれめが。本当のこと言うぞ?あのな、お前が嫌ってる殿下は非の打ち所がない素晴らしい領主だったよ。…少し変わってるけどな。
そうココロの中で毒づいた。
「ところで…カリーヌなんだか…」
「王室の教育は順調ですか?」
「いや、困ったもんだ。一年ではとても…」
お、おい、それじゃ俺はいつまであの島に居なきゃならないんだよ?
「英才教育なさってるんでしょう?一流の講師を雇って」
「まあ、そうなんだが。覚えが悪くて…いや、覚える気がないのかな?」
「そ、そんなことは無いかと…」
「最近、ヒステリックで困ってるんだ」
いや、だーかーらー、ちゃんとやってくれよ。お前が強引に決めたんだろうが。
「と言うことで引き続きアニエスを監視してくれ。あ、念のため“変な虫”がつかない様にな」
「は…?」
何を言ってるんだ?何のために?コイツはアニエスをどうしようと思ってるんだ?
しっかりとカリーヌの面倒見てくださいよ!って言いたいところだがやめておこう。馬鹿と問答する時間はない。
俺は別の用事があるのだ。
「かしこまりました。失礼します」
その足であの御方へ拝謁しに行く。後をつけられてないか一応警戒するが、ケヴィンにそんな采配は無い。全くの無警戒だ。まあ今のところ、俺を警戒してるのはビソンだけだろう。背後に殿下が居るだろうけどな。そのビソンの配下も王都までは追えない。せいぜい島で俺を見張ってろ。知らんぷりしといてやるから…。
そんなことを考えながら、宮殿の奥深くまで足を運んだ。警護の者に話を通し執務室の前へ立つ。
「ブリスです。ご報告を」
「うむ、入れ」
その声の持ち主は国王陛下だ。
俺はケヴィン様の配下の様で実は陛下直属の諜報員なのだ。このことはあの馬鹿は知らない。
「監獄で会えたか?」
「残念ながら特別室の前まで行ったのですが、中は入れませんでした」
「では生存確認は出来なかったと言うわけだな?」
「はい。これ以上は陛下の書簡が必要です。警護もしっかりしてますので」
「ふーむ。流石はジェラールだな」
「如何でしょう、直接本人へ書簡を送られては?その使者をお命じくだされば面会は可能です」
「なるほど書簡ねえ。暫く考えたい。お前も何らかの手を考えておけ」
「ははっ」
そうは言ってもね。俺がどうこう出来る相手ではない。そもそも貴方が追放した弟君ですよ?
あの厳重な監獄の中で、どうやって彼を暗殺するのですか…?
1
お気に入りに追加
295
あなたにおすすめの小説
もうあなたを待ちません。でも、応援はします。
LIN
恋愛
私とスコットは同じ孤児院で育った。孤児院を出たら、私はこの村に残って食堂で働くけど、彼は王都に行って騎士になる。孤児院から出る最後の日、離れ離れになる私達は恋人になった。
遠征に行ってしまって、なかなか会えないスコット。周りの人達は結婚して家庭を持っているのに、私はスコットを待ち続けていた。
ある日、久しぶりに会えたスコットの寝言を聞いてしまった私は、知りたくもない事実を知ってしまったんだ…
王子は婚約破棄を泣いて詫びる
tartan321
恋愛
最愛の妹を失った王子は婚約者のキャシーに復讐を企てた。非力な王子ではあったが、仲間の協力を取り付けて、キャシーを王宮から追い出すことに成功する。
目的を達成し安堵した王子の前に突然死んだ妹の霊が現れた。
「お兄さま。キャシー様を3日以内に連れ戻して!」
存亡をかけた戦いの前に王子はただただ無力だった。
王子は妹の言葉を信じ、遥か遠くの村にいるキャシーを訪ねることにした……。
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
私が死んだあとの世界で
もちもち太郎
恋愛
婚約破棄をされ断罪された公爵令嬢のマリーが死んだ。
初めはみんな喜んでいたが、時が経つにつれマリーの重要さに気づいて後悔する。
だが、もう遅い。なんてったって、私を断罪したのはあなた達なのですから。
[完結]貴方なんか、要りません
シマ
恋愛
私、ロゼッタ・チャールストン15歳には婚約者がいる。
バカで女にだらしなくて、ギャンブル好きのクズだ。公爵家当主に土下座する勢いで頼まれた婚約だったから断われなかった。
だから、条件を付けて学園を卒業するまでに、全てクリアする事を約束した筈なのに……
一つもクリア出来ない貴方なんか要りません。絶対に婚約破棄します。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。
せいめ
恋愛
メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。
頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。
ご都合主義です。誤字脱字お許しください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる