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6.大衆食堂
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「ここがペチェア島の繁華街です!」
「わあーー!」
古い街並みと自然が調和した、どこか懐かしく思えるノスタルジーな光景にココロときめいた。道幅は狭くレトロな建物が並んでいる。山や海も視野に入り、まるで別荘地へ来た気分だ。
「まあ、王都の様なモダンな雰囲気じゃないけど、一応生活必需品は何でも揃ってます」
「いい!素敵な街並みよ!」
「そ、そお?そう言って頂けると嬉しいです」
だって雰囲気もそうだけど、ここはお洋服屋さん、お菓子屋さん、八百屋さん、お魚屋さん、お風呂屋さん…何でもあるよ!
それに焼いたお魚のいい匂いがする。
「大衆食堂?」
「アニエス様、ひょっとしてお腹空きました?」
「う、うん」
そう言えば朝から何も口にしていなかった。と言うか、大衆食堂ってなに?お食事するホールよね?
「入りましょうか?」
「あ、でも…」
「どうしました?」
「わたくし無一文でした。拘束されてそのまま船に乗せられたから」
「心配いりません。ここのお代は経費から出しますよ。それにアニエス様には王都から月々お給金が入ります。お金のことはお気になさらず」
「え?そうなの?罪人なのに?」
「特別待遇ですからね」
いいのかな…。何もしないのにお給金貰えるなんて聞いてなかったよ。でもお腹空いた。まあ難しいことは後で考えようか。
「コリンヌも行こうよ」
「わ、私もですか?バルナバ様?」
「大丈夫だよ。だってベルティーユが来ないのがいけないだから」
「…は、はあ」
わたくしは戸惑うコリンヌの手を握って、バルナバさんと大衆食堂とやらへ入った。
「いらっしゃい!三名様ですねー!」
こじんまりとした食堂にはカウンターとテーブルがあり、ほぼ満席になっている。この店内には美味しい匂いが充満していた。わたくしは人生初の食堂に心が躍る。食事と言えばグレート・ホールやダイニングルームだったから。
「まあまあ、綺麗なお嬢様だねえ!バルナバ、紹介しな!まさかアンタの?」
「お、女将さん。違いますよ。この御方は…」
彼は紹介を躊躇した。「罪人です!」とは言い難い様だ。でもここは囚人の島。何も言わず女将は察したみたいだ。
「あら、アンタの彼女じゃないなら訳ありのお嬢様なんだね」
「まあ、そう言うこと」
「お名前は?」
「アニエスです」
「そう。アニエス、何が食べたい?」
うーん、迷っちゃうなあ。全部美味しそうだよー。
「お任せしますわ」
「あいよー!じゃ、自慢のスープから出しちゃうからね!」
「はい!」
ガヤガヤと賑やかで活気のある食堂だ。人の出入りも激しく女将は忙しそうに働いてる。そんな様子を眺めているとテーブルにスープが並べられた。
「あ、美味しそう!」
「アニエス様、遠慮なく食べてくださいね。ほらコリンヌも」
「は、はい」
も~うたまりませんわ。
わたくしは早速スープを口にする。
「こ、これは!?」
「いかがしました?」
「美味しい!凄く美味しいよ!」
「そうですか。気に入って良かったです」
何これ?初めての味わい。おダシから香辛料から何もかも今まで食したことのないスープだわ。お魚の具もお野菜も上手く溶け込んでいる。こんな美味しいもの毎日食べたいよ!
わたくしは夢中で口に入れた。食べながら思ったことがある。
…自分でも作れないかしら?
「わあーー!」
古い街並みと自然が調和した、どこか懐かしく思えるノスタルジーな光景にココロときめいた。道幅は狭くレトロな建物が並んでいる。山や海も視野に入り、まるで別荘地へ来た気分だ。
「まあ、王都の様なモダンな雰囲気じゃないけど、一応生活必需品は何でも揃ってます」
「いい!素敵な街並みよ!」
「そ、そお?そう言って頂けると嬉しいです」
だって雰囲気もそうだけど、ここはお洋服屋さん、お菓子屋さん、八百屋さん、お魚屋さん、お風呂屋さん…何でもあるよ!
それに焼いたお魚のいい匂いがする。
「大衆食堂?」
「アニエス様、ひょっとしてお腹空きました?」
「う、うん」
そう言えば朝から何も口にしていなかった。と言うか、大衆食堂ってなに?お食事するホールよね?
「入りましょうか?」
「あ、でも…」
「どうしました?」
「わたくし無一文でした。拘束されてそのまま船に乗せられたから」
「心配いりません。ここのお代は経費から出しますよ。それにアニエス様には王都から月々お給金が入ります。お金のことはお気になさらず」
「え?そうなの?罪人なのに?」
「特別待遇ですからね」
いいのかな…。何もしないのにお給金貰えるなんて聞いてなかったよ。でもお腹空いた。まあ難しいことは後で考えようか。
「コリンヌも行こうよ」
「わ、私もですか?バルナバ様?」
「大丈夫だよ。だってベルティーユが来ないのがいけないだから」
「…は、はあ」
わたくしは戸惑うコリンヌの手を握って、バルナバさんと大衆食堂とやらへ入った。
「いらっしゃい!三名様ですねー!」
こじんまりとした食堂にはカウンターとテーブルがあり、ほぼ満席になっている。この店内には美味しい匂いが充満していた。わたくしは人生初の食堂に心が躍る。食事と言えばグレート・ホールやダイニングルームだったから。
「まあまあ、綺麗なお嬢様だねえ!バルナバ、紹介しな!まさかアンタの?」
「お、女将さん。違いますよ。この御方は…」
彼は紹介を躊躇した。「罪人です!」とは言い難い様だ。でもここは囚人の島。何も言わず女将は察したみたいだ。
「あら、アンタの彼女じゃないなら訳ありのお嬢様なんだね」
「まあ、そう言うこと」
「お名前は?」
「アニエスです」
「そう。アニエス、何が食べたい?」
うーん、迷っちゃうなあ。全部美味しそうだよー。
「お任せしますわ」
「あいよー!じゃ、自慢のスープから出しちゃうからね!」
「はい!」
ガヤガヤと賑やかで活気のある食堂だ。人の出入りも激しく女将は忙しそうに働いてる。そんな様子を眺めているとテーブルにスープが並べられた。
「あ、美味しそう!」
「アニエス様、遠慮なく食べてくださいね。ほらコリンヌも」
「は、はい」
も~うたまりませんわ。
わたくしは早速スープを口にする。
「こ、これは!?」
「いかがしました?」
「美味しい!凄く美味しいよ!」
「そうですか。気に入って良かったです」
何これ?初めての味わい。おダシから香辛料から何もかも今まで食したことのないスープだわ。お魚の具もお野菜も上手く溶け込んでいる。こんな美味しいもの毎日食べたいよ!
わたくしは夢中で口に入れた。食べながら思ったことがある。
…自分でも作れないかしら?
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