島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪

鼻血の親分

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5.悪役令嬢

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※ジェラール視点

「ブリスと申す。俺が罪人アニエスの監視をする様、王太子から仰せつかった。この書簡を確かめて頂きたい」

かなり不躾ぶしつけな男だと思った。

先ずは偉そうだ。一応これでも私は王族なんだが…。まあ兄の命とあらば致し方ない。

納得いかない気持ちを隠しつつ、書簡へ目を通す。

「ん?任期は一年と書かれているが?」
「ああ一応ね。正確には御成婚されるまでだ」
「兄とカリーヌのか?」
「実は色々ありましてね」

要約すると婚約破棄騒動の後、オードラン公爵が婚約を辞退したらしい。カリーヌではとても王妃は務まらない。アニエスの様な才女ではないとの理由だった。それを聞いた陛下は一旦婚約を白紙になされたが、食い下がる兄に一年の猶予を与えたと言う。一年でカリーヌを王族に相応しい令嬢に教育すると約束させたのだ。

幼い頃のカリーヌしか知らないが、長年英才教育を受けてきたアニエスとは比較にならないだろう。ましてやたった一年とは…。

「その間、アニエスを見張るのはどんな意味があるのだ?」
「さあー、どうせお嬢様の願いなんでしょう」
「カリーヌのか、ふーん」

なるほど。正式に決まった訳ではないからアニエスを警戒してるんだな。これは何かある。婚約破棄の原因にからくりがあるかもしれない。

「ところで俺の住まいとデスクを頂きたい」
「あ、ああ。住まいは来賓の屋敷を準備しよう。デスクは個室がいいか?あまりスペースはないが」
「気遣い無用。共同スペースで結構です。それより囚人島へ来たからには監獄など見せて貰えればありがたい」
「近いうちに案内するよ」

ほう。この男はアニエスの監視より島に興味がある様だ。兄の指示か?だとしたら私の弱みでも掴むつもりなのか。全く油断のならないヤツだ。

「ところであの罪人は武道を嗜んでいる。自由に行動させるのは良いが暴れたら危険だと思うが?」
「彼女が武道だと?」
「俺は特殊部隊の出身。手加減したが中々の腕前と見える」
「待て、彼女と手合わせでもしたのか?」
「ちょっと揉めそうになったんでね。…殿下、あの罪人は間違いなくですよ」

ま、またしてもその言葉…。アニエス、君はそんなに危ない女性なのか?むむむっ、モヤモヤする。会いたい。会って確かめてみたい。いや…しかし…彼女は罪人だ。会ったところで何を話して良いのか思いつかない。やはり会わない方がいいな。彼女は島から出ること以外、行動に制限を付けてないから、うっかり街でばったりってこともありえるぞ。気をつけよう。彼女の行動を把握しとかなければ!

「殿下?」
「うん?…あ、ああ。デスクだな。少し待っててくれ」

今は一人になりたい。私は即座と事務員に指示して執務室へ閉じこもった。














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