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第1章 ざまぁがしたいっ!!

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「シェリー様、起きてください」

「…くかー」

「ううっ、酒臭いわ!」

 馬鹿女の寝室はお酒の匂いがプンプンしていた。わたくしは窓を開け、散らかった食器などを片付ける。

 朝から腹立つわね、コイツ。

「シェリー様? 今日は行かれるんでしょう? 起きてください!」

「う、うーん…スヤスヤ」

 くそう、叩き起こしてやる。

 馬鹿女の頬に軽くビンタする。「おい、起きろや、このアル中が?」とココロの中で言ってみる。でも、起きる気配が無い。いえ、むしろ気持ち良く安眠してる。余計に腹立つ。

「仕方ない…失礼します」

 憎しみを込めてビンタを往復をした。

 ピシッ! ピシッ! ピシッ! ピシッ!

「う…」

「お目覚めですかー? 朝ですよー! 今日は朝から登校するのですよねー?」

 態と耳元で大声を出す。

「う、うるさいわね…先に行っといて…くかー」

 よ、よいよ、コイツだきゃー。アンタね、そんなんでこの先、皇室でやっていけるの? 自滅するわよ? …まあ、その方がいい気味だけどね!

 ああ、今日もやっぱり朝から影武者することになったか。まあ予想したけどね。コイツは朝起きれない。でもビンタしまくったからすっきりしたわ。

 
 ***


 お昼前に目覚めた馬鹿女は、いつもの様に遅れて現れた。重役出勤は日常茶飯事なのだ。という事で公爵令嬢から用務員へ戻ったわたくしは、校庭の花壇に水やりをしていた。

「あの、ちょっと良いですか?」

 不意に男子生徒から声をかけられ、振り返ると確か王子様の取り巻きだった。

「何でしょう?」

「貴女にお話ししたいとがいまして…」

「はあ…?」

 ある御方って、もしかしてエリオット様⁈

 わたくしはそのまま生徒会室へ連れて行かれた。あ、生徒会長は王子様ですから、やっぱりエリオット様がわたくしを呼んだのです。

 ヤバいっ! 超ドキドキする。一体わたくしに何の御用なの⁈ 

 そこにはエリオット様と取り巻きが二人、更に…ん? あ、貴女はミーア様⁈ なぜ生徒会でもない彼女がここに⁈

 わたくしは憧れの王子様と、馬鹿女がいつも虐めているミーア様を前に緊張と驚きで足が竦んでしまった。そんなわたくしを王子様は微笑んで出迎えてくれる。かなりの至近距離でっ! 

 ああ、相変わらずハンサムですわねえ…などと見惚れてる場合ではない。

「やあ、用務員さん。毎日見かけるけど話したことは無かったね」

「お、お、王子様、き、恐縮です!!」

「ははは、まあそう硬くならずに。椅子にかけて」

「は、はい」

「いつもミーアを影ながらフォローしてくれてありがとう。感謝する」

「あ…」

「用務員さん、わたくしからエリオット様にご報告しました」

「そう…なのですか」

 エリオット様は長い脚を組み替えて、熱い眼差しをわたくしに向けます。

「さて、本題に入ろう。…君はシュルケン公爵家の使用人として貴族院に派遣されている。だが実質はシェリー付きの使用人だ。そうだよね?」

「仰る通りです」

「うん、君の事は調べさせて貰った。家は伯爵の出だ。だが、破産して没落寸前だったところをシュルケン公爵が資金を注ぎ込んで助けた。君が僅か八歳の時だね」

「はい」

 えーと、何でわたくしの事をお調べになってるのでしょう?

「そこから君はなぜか公爵家へ奉公する様になる。どんな事情があるのか分からないが君は売られた」

「そ、それは親がお決めになられた話ですから、事情は存じません…」

 いえ、単にシェリーに似てるから影武者に使えるとでも思ったのですよ。…と言いたいけど、取り敢えず知らんぷりしてみる。

「ある意味君は犠牲者だ。それなのに献身的に尽くす君は尊敬に値する。…とは言え、今の境遇に納得はしてないと思うけど?」

「…はい」

 まあ、そうですわね。その通りですよ。

「そこでどうだろう? 僕の味方になってくれないか?」

「お、お味方⁈ 王子様の⁈」

「僕はシェリーとしたいんだ。君に協力して欲しい」

 な、なんと!! これはもしや、では⁈ 

「上手くいけば君を公爵家から解放するよう取り計らうつもりだ」

 これは願ったり叶ったりのお話!!

「はい! ぜひぜひ協力します!」

 わたくしは即答したーー。







 


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