みんな襲われてるのに、どうやら俺は相手にされてないようだ。

鼻血の親分

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みんな襲われてるのに、どうやら俺は相手にされてないようだ。

14. いざ、出陣

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 信長の身の回りを世話する森さんが、俺らの朝食も用意してくれた。彼は白髪混じりの初老だが実によく働く。

「上様、野菜盛り合わせに山女魚でございます」
「うむ」

 信長を囲んでの食事はちょっぴり緊張する。でも美味そうだ。

 昨晩、森さんと話する機会があったが、ここの生活はほぼほぼ自給自足らしい。それでも足りないものは、全国に散らばってる森家の一族郎党が援助してると言う。

「で、信長さま。自分らはここでどう過ごせば良いのですか?」

 俺はまだこの人を本物の“織田信長”とは認めてない。だが、逆鱗に触れると斬られそうだから一応納得したフリをしてるだけだ。

「うむ。近々山狩りに出掛ける。それまでは鍛錬でもしてろ」
「うわー、山菜採りですか? 楽しそうー」
「むっ……!」

 のりおの的外れな言動に信長がギロっと睨みを効かせた。

 おい、マァンティス狩りだよ。いらんこと言うなっ。怒ったら斬られるぞ。

「……蘭丸、後でこやつらに例のものを与える」
「かしこまりました」

 はぁー、スルーした。ホッとしたわ。にしても蘭丸って絶対偽名だな。

 俺はこの緊張感に耐えきれず、さっさと食事を済ませ退席する。程なく信長に呼ばれ、森さんを通じて南蛮風の衣類や武具を渡された。

「お主らには一級品を与えよう」
「は……ははーっ」

 何これ。針金の編みシャツ?

「おお、鎖帷子の簡易版ですね。忍者みたい!」
「正随さん、よくご存知で」
「うん、もみこちゃんも着てるの?」
「はい。あ、勿論、肌着の上からですよ」

 なるほど。まぁそうだろう。直に着ると傷だらけになるからな。それより……。

 与えられたモノは羽織袴、登山ブーツ、パープルのマント、夜用の黒装束、日本刀だった。

 俺らもコスプレ……するのか? それに立派な日本刀も気になるぞ。

 これ『銃刀法違反』だし。

 こんな危ないモノ持ってる時点でアウトだと思うが、警察に捕まらないのかなぁ?

 ーーと、その時だった。森さんの息子と思われる兄ちゃんが庭先から大声で叫んできた。

「上様、申し上げます! 付近の市役所にマァンティスの大群が現れた模様!」
「なに、敵の数は?」
「はっ、ざっと三十は」

 信長がスッと立ち上がる。

「いざ、出陣じゃあーーっ!」

 えー、いきなりい? ちょっと待ってよー!
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