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第三部

22. お手つきの巻⑤

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神々しい光を放つロウソクに囲まれた不気味で薄暗いお部屋のテーブルに、五人のご婦人が座っている。中央に黒光りする法衣を纏った占い師風のグレースが、大きな水晶に手をかざしながら私を睨んでおいでです。そして、左右に二人づつ分かれたお手つきさんも同じ様な法衣を纏い水晶に手をかざしていた。

こ、こわっ!何この儀式?私を呪ってるの⁉︎
「貴女が奇跡の侍女ですか」
「あ、あの、ポピー・パーキー、18歳です」
「私はグレース。筆頭後宮婦人よ。ライラより上だからね。覚えておきなさい」
「はい。あ、あの、コレはほんの気持ちです」
「あら、何かしら?」
エミリーがジョーから貰った水晶のブレスレットをグレースに、またお手つきさんには、お香を一人一人に渡していきます。
手に取ったグレースは驚きを隠せませんでした。
「こ、これは私の欲しかったブレスレットよ!」
「グレース様、このお香もとても価値のある品でございます!」
「……貴女、手土産にしては凄いものを持って来たわね。貧乏な田舎貴族って聞いたけど、この後宮にお味方でも居るわけ?」
「いえ、特には……」
全部ジョーから貰ったモンだけどね。ジョーめ、ご婦人が喜ぶモノを知ってたのね。私、御礼ちゃんと言ってなかったわ。
「貴女の誠意を認めましょう。ようこそ、グレース組へ。これは私からのプレゼントよ」
お手つきさんの一人から、黒魔術セットみたいな不気味なグッズを渡された。黒光りする法衣にロウソク、お香、極小の水晶玉などが見える。
──い、いらんし!超いらんし!
「お部屋に飾っておきなさい。それがグレース組の証だから。それから集会には法衣で来るのよ。貴女には黒魔術を教えていきますから」
いや、だから教わりたくないから!
「へクセ、貴女が直々に色々と教えてあげなさい」
「かしこまりました。グレース様」
コイツか。一番私の陰口を言ってるヤツ。コイツとは話したくもないわ。いえ、そもそも黒魔術なんて全く興味ないの!
「それと、宮廷行列を提案してきたから。貴女のお披露目を兼ねてね」
「き、宮廷行列ですか……」
ガーーンです。忘れてました。あんな見世物なんてやりたくもありません。それに、まともにご婦人らしく歩く自信もないです!困ったわー!
「それもへクセが指導しなさい」
「かしこまりました。ポピー、後で私のお部屋に来て頂戴。あ、でもその前に今の実力を皆さんで確かめておきたいわ」
「えっ⁉︎」 
「ここで軽く歩いてみて」
な、なんでよーー!ヤダーー!
「早く歩きなさい!」
くそう。腹が立つ。でも仕方ないわね。
私は姉のレッスンを思い出した。たしか、背筋伸ばして胸を張って重心を後ろへ意識しながら軽やかに。そして笑顔で……。

グレースのお部屋を颯爽と歩いてみせた。でも胸を張りすぎて肩で風を切るような、まるで偉そうな『おっさん歩き』みたいな感じになってしまったのです。
「なーに、その歩き方!野蛮人?いえ、おじ様かしら?オーホホホホホホ!」
この部屋は大爆笑に包まれてしまう。
「あー、これは大変ですわ。ぷぷぷ……ものになるかしら。グレース様、自信がございませんわ」
「へクセに任せるから。何とかするのよ。オーホホホホホホ」

お父様、む~、超最悪です!そんないきなり出来るもんですか!全く興味も無かった世界なのに!それにしてもへクセめ。悪意に満ちてるわね、……許さないから!










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