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03話 金髪のあたし!
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「今晩もお星さまが綺麗ねえ。ふふっ、誰も見てないし、思う存分練習しよっかな~」
そう呟きながら、寮の屋上で密かに魔法術を試みる。アレク先生にも励まされたし、頑張らなきゃと張り切っていた。
だが、思いもよらぬ出来事が! なんと茶白のふあふあな子猫が現れたのだ。
「うわっ、めっちゃ可愛い!」
「にゃんにゃんにゃん」と可愛い声で鳴く子猫に、思わず目がハートマークに。ついつい練習どころじゃなく、まったり遊んでしまった。子猫に夢中になり、時間が過ぎるのも忘れて戯れあっていたけど、「ハッ! 練習しようと思ってたんだ!」と、ようやく我に返った。
「その前に猫ちゃんのお名前つけようね。うーん、じゃあ『アレクちゃん』に決定! アレクちゃん、ちょっと待っててね。今から練習するから!」
よしっと、ばっちり暗記した魔法陣を手のひらになぞり、呪文を唱えてみる。でも何度やってもビー玉の火しか出ない。
むーん。大っきくならないなあー。
ため息をつきながら満天の夜空を眺めていたら、突然、金髪令嬢のことを思い出す。
あれ? やっぱりあたし、生まれ変わったんじゃないかな? だって記憶があるんだもん。前世はすんごい上級魔法師だったとか? あ、そうだ! 彼女をイメージして呪文を唱えてみようか!
深呼吸して意識を集中させる。頭の中はお金持ちの令嬢だ。寮生ではなく、執事や侍女を引き連れて颯爽と馬車から降り立ち、学園に登校するカッコいいレディなのだ。
「……火の精霊よ、我が手に宿り給え!」
すると、── ブオッ……! と、いきなり音を立て、手の中の火が大きく燃え上がった。
「え? ちょ……ちょっとぉ!?」
あわてて消そうとするけれど、消えない。 それどころかどんどん大きくなってゆく!
「どうしよう! どうしたらいいの?」
手をグルグル回してみるが、それが裏目に出てしまった。屋上にある植木に火が燃え移ってしまったのだ。
「やば! 消さないと!」
そうだ、こういう時は水の魔法を使うんだった。えーと、あ~っ、呪文はなんだっけ? 思い出して、金髪のあたし!
「水の精霊よ、我が呼び声に応えよ!」
自然と呪文が口から飛び出した。でも、水の魔法術はたくさんあって迷ってしまう。イメージしないと技が出せない。
「アクアブレス? それともウォータースラッシュ?」
どちらの魔法も威力が強すぎると植木を破壊してしまうかもしれない。それより、雨を降らせた方が安全だ。そう思ったら勝手に喋り出した。
「雷鳴よ、我が手に宿りて轟け! 実態魔法、雷雨召喚!」
その瞬間、──ゴォーッと、強い風が吹き始め、突如現れた雲の中で稲妻が光り轟音が響き渡る。そして、雨が激しく降り出した。植木に広がった炎は一瞬で消え去り、あたしはビクビクしながらそれを見届けると、最後に「解呪!」と叫んで、アレクちゃんと一緒に屋上から退避した。
解呪……そっか、思わず口走ったけど、それで魔法が解けるのね。よかった。……って、それよりもあたし、なんなの? めっちゃ魔法が使えるじゃん?
自分自身が持っている能力に驚いていた。これならアレク先生に自慢できる。でも、いきなり上級並みの魔法力を見せるのは危険だ。目立つことを本能的に恐れているあたしは、この力をどうやって手加減すればいいか、新たな悩みが増えてしまった。
階下に降りると、ホールで寮生たちが輪になっている。みんなタオルを持って。そしてその中心にいる方々を見て、目を見張った。
「えっ……? なんで?」
あまり関わりたくない王太子と三人の取り巻きが、輝くような白い制服や髪を無惨に濡らし、タオルで拭いていたのだ。
やばっ、あたしが土砂降り引き起こしたから、びしょ濡れなんだ。し、知らんぷりしとこ。
「あ、アリアナ、タオル持ってきて~」
「う、うん、わかった。リンダ!」
よし、どさくさに部屋へ戻って引きこもろう。
「おー、もういいよ。タオルたくさんあるし」
「えー?」
取り巻きの一人に止められた。彼は中級クラスのデブっとした騎士で、王太子の護衛だ。あたしはそっとリンダに耳打ちする。
「で、なにしにきたの?」
「寮の抜き打ち監査。風紀委員会の人たちが来たのよ」
リンダはどこか嬉しそうだ。彼女が興奮すると丸いメガネが曇ってしまう。さらに、寮の女子たちも興奮していた。その時、「よーし、始めるか!」と護衛が大きな声で叫ぶ。その声にびっくりして、ジャージの中からアレクちゃんが飛び出してしまった。しかも王太子の前で「にゃー」と鳴いたのだ。
いっけなーい。寮で動物飼うのはダメだよね?
風紀委員会の方々から冷たい視線が向けられた──。
そう呟きながら、寮の屋上で密かに魔法術を試みる。アレク先生にも励まされたし、頑張らなきゃと張り切っていた。
だが、思いもよらぬ出来事が! なんと茶白のふあふあな子猫が現れたのだ。
「うわっ、めっちゃ可愛い!」
「にゃんにゃんにゃん」と可愛い声で鳴く子猫に、思わず目がハートマークに。ついつい練習どころじゃなく、まったり遊んでしまった。子猫に夢中になり、時間が過ぎるのも忘れて戯れあっていたけど、「ハッ! 練習しようと思ってたんだ!」と、ようやく我に返った。
「その前に猫ちゃんのお名前つけようね。うーん、じゃあ『アレクちゃん』に決定! アレクちゃん、ちょっと待っててね。今から練習するから!」
よしっと、ばっちり暗記した魔法陣を手のひらになぞり、呪文を唱えてみる。でも何度やってもビー玉の火しか出ない。
むーん。大っきくならないなあー。
ため息をつきながら満天の夜空を眺めていたら、突然、金髪令嬢のことを思い出す。
あれ? やっぱりあたし、生まれ変わったんじゃないかな? だって記憶があるんだもん。前世はすんごい上級魔法師だったとか? あ、そうだ! 彼女をイメージして呪文を唱えてみようか!
深呼吸して意識を集中させる。頭の中はお金持ちの令嬢だ。寮生ではなく、執事や侍女を引き連れて颯爽と馬車から降り立ち、学園に登校するカッコいいレディなのだ。
「……火の精霊よ、我が手に宿り給え!」
すると、── ブオッ……! と、いきなり音を立て、手の中の火が大きく燃え上がった。
「え? ちょ……ちょっとぉ!?」
あわてて消そうとするけれど、消えない。 それどころかどんどん大きくなってゆく!
「どうしよう! どうしたらいいの?」
手をグルグル回してみるが、それが裏目に出てしまった。屋上にある植木に火が燃え移ってしまったのだ。
「やば! 消さないと!」
そうだ、こういう時は水の魔法を使うんだった。えーと、あ~っ、呪文はなんだっけ? 思い出して、金髪のあたし!
「水の精霊よ、我が呼び声に応えよ!」
自然と呪文が口から飛び出した。でも、水の魔法術はたくさんあって迷ってしまう。イメージしないと技が出せない。
「アクアブレス? それともウォータースラッシュ?」
どちらの魔法も威力が強すぎると植木を破壊してしまうかもしれない。それより、雨を降らせた方が安全だ。そう思ったら勝手に喋り出した。
「雷鳴よ、我が手に宿りて轟け! 実態魔法、雷雨召喚!」
その瞬間、──ゴォーッと、強い風が吹き始め、突如現れた雲の中で稲妻が光り轟音が響き渡る。そして、雨が激しく降り出した。植木に広がった炎は一瞬で消え去り、あたしはビクビクしながらそれを見届けると、最後に「解呪!」と叫んで、アレクちゃんと一緒に屋上から退避した。
解呪……そっか、思わず口走ったけど、それで魔法が解けるのね。よかった。……って、それよりもあたし、なんなの? めっちゃ魔法が使えるじゃん?
自分自身が持っている能力に驚いていた。これならアレク先生に自慢できる。でも、いきなり上級並みの魔法力を見せるのは危険だ。目立つことを本能的に恐れているあたしは、この力をどうやって手加減すればいいか、新たな悩みが増えてしまった。
階下に降りると、ホールで寮生たちが輪になっている。みんなタオルを持って。そしてその中心にいる方々を見て、目を見張った。
「えっ……? なんで?」
あまり関わりたくない王太子と三人の取り巻きが、輝くような白い制服や髪を無惨に濡らし、タオルで拭いていたのだ。
やばっ、あたしが土砂降り引き起こしたから、びしょ濡れなんだ。し、知らんぷりしとこ。
「あ、アリアナ、タオル持ってきて~」
「う、うん、わかった。リンダ!」
よし、どさくさに部屋へ戻って引きこもろう。
「おー、もういいよ。タオルたくさんあるし」
「えー?」
取り巻きの一人に止められた。彼は中級クラスのデブっとした騎士で、王太子の護衛だ。あたしはそっとリンダに耳打ちする。
「で、なにしにきたの?」
「寮の抜き打ち監査。風紀委員会の人たちが来たのよ」
リンダはどこか嬉しそうだ。彼女が興奮すると丸いメガネが曇ってしまう。さらに、寮の女子たちも興奮していた。その時、「よーし、始めるか!」と護衛が大きな声で叫ぶ。その声にびっくりして、ジャージの中からアレクちゃんが飛び出してしまった。しかも王太子の前で「にゃー」と鳴いたのだ。
いっけなーい。寮で動物飼うのはダメだよね?
風紀委員会の方々から冷たい視線が向けられた──。
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