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助左よ、百姓が百姓を襲うんかいっ⁈
しおりを挟む8月15日夜
坂井大善ら清洲勢が深田城へ夜討ちをかけた。
「すっすめぇー!!」
不穏な噂は聞いていたものの、突然の急襲に深田城は無防備であった。武装してない兵士ばかりである。その城を槍や弓を持った兵士が攻める。勝敗は明らかだ。
一方、雑兵は旗を持ち物資を運んだりもするが、主な目的は村を襲うことである。貧村の雑兵(村人)にとって戦は飢えをしのぐ稼ぎ場でもあり、彼らは勝敗などどうでもよく、食料や家財、人間を奪うことに熱中した──。
民家が焼かれ百姓たちが逃げて行く。
雑兵を指揮しているのは中村の大百姓、加藤清七である。
「目の前にあるもん、すべて奪い取れーっ!!」
「おおぅーーっ!!」
「小一郎、田畑の作物を刈り取るのじゃ!」
「え?」
小一郎は戸惑いながら清七に近づく。
「き、清七さま、やってる事は強盗といっしょじゃないか……?」
「バッカモ~ン!! それが戦じゃ! 戦なら何をやっても許されるんじゃ! ほら、刈り取れっ!」
雑兵が田畑へ侵入し勝手に作物を奪う。雑兵が抵抗する百姓を殴り倒して、逃げる女、子供らを次々と捕らえる。
その姿を源六らが眺めていた。
「へへへへ……やってるぜ。おう、俺たちの出番だ!!」
手下らが混乱している戦場へ向かう。捕虜を連れた雑兵に買い取りの交渉をするのである。
助左衛門も源六に引っ張られていった。
「旦那ァ! 女、子供、買い取りまっせぇー!」
「な、なんだ? おめえは?」
「奴隷商人ですよぅ!!」
源六は殺気だっていた。渡さなければ殺すくらいの気迫がある。
「な、なんだ商人か……まぁ待て、女とやりたい」
「はいはい! 待ちやしょう!」
木陰のあちらこちらで、雑兵が女を犯している。それを助けようとする百姓を、雑兵が数人がかりで叩きのめす。
「げ、源六はん、こ、ここは無茶苦茶やないスか! 盗っ人、暴行、強姦、放火、人さらい……これが、戦かーっ!!」
源六がキセルをふかしている。
「百姓も必死なのさ。戦に駆り出されてもほとんど何も貰えん。乱捕りで戦利品奪うしかねぇんだよ」
「せ、せやけど人は戦利品やないで! あんなん見て心が痛まんのか⁈」
「ボクよ……俺たちゃ、人間がモノに見える。つまり人の形をした家畜なんだよ。だからね、何とも思わない」
──か、家畜やなんて、狂ってはる……!!
女の悲鳴が聞こえた。助左衛門は居ても立っても居られない。
「助けましょう!」
すると源六が助左衛門に詰め寄った。怖い表情である。
「ボク……奴隷の身分を忘れたか? てめぇも家畜だぞ!!」
「げ、源六はん⁈」
小一郎は盗んだ作物を荷車へ積んでいた。周りは武装した雑兵たちが、百姓の子を追いかけ回している。
──百姓が百姓を襲うのか⁈ オラにはそんなこと出来ねぇよ!!
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