奴隷少年♡助左衛門

鼻血の親分

文字の大きさ
上 下
7 / 16

助左よ、あいつぅの登場やで⁈

しおりを挟む

 しかしその浪人たちは信長を襲う賊らに斬りかかった。
「味方か!!」
 形勢が逆転した。浪人と合わせば賊とほぼ同等の人数である。さらに浪人の党首らしき男は身軽で忍者のように飛び跳ね、次々と斬り倒していく。
 やがて賊たちが敗走する。党首がその1人を捕らえ、信長へ突き出した。

「……誰に雇われた?」
 男は答えない。党首が浪人の指を切り落とす。
「ウギャーーーーッ!!」
 のたうちまわる浪人は観念した。
「わ、わかった……言う……言うから」
「誰だ?」
「き、清洲の坂井大善様の御指図……」
 信長は無言。それを見て党首が男の首をねる。男は絶命した。

 浪人たちが笠を外し、信長に対して片膝をつき頭を垂れる。
「主らは、生駒の浪人か?」
「違いまする。悪党(傭兵)でござる」
「悪党か、うむ、面を上げよ」
 党首が顔を上げた。色黒で眼球が若干左右に離れ不気味な風貌である。
「……若いな。で、誰に仕えておる?」
「目下、失業中。なれど近々、清洲へ乱入する所存でござる」
「清洲との戦が始まると、申すか?」
「坂井大善なる男、織田伊賀守(松葉城主)と通じ深田へ乱入する動き、これあり!!」
 信長の顔色が変わった。
 近習が大きな声を上げる。
「まことか⁈ 伊賀守様が裏切ると申すか⁈ 」
「御意!!」
「と、殿!!」

 信長がサッと馬に乗る。
「もし本当ならお主らを雇ってやる。名を申せ」
「藤吉郎と申す」
 信長は軽くうなずき、馬を走らせ去っていく。

 その姿を藤吉郎は、不気味な笑みを浮かべながら見つめていた。

──あれが、上総介信長か。

 ◎ 藤吉郎 
 後の関白『豊臣秀吉』はこの時、弱冠16歳。歴史の表舞台にはまだ立っていない。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

キャサリンのマーマレード

空原海
歴史・時代
 ヘンリーはその日、初めてマーマレードなるデザートを食べた。  それは兄アーサーの妃キャサリンが、彼女の生国スペインから、イングランドへと持ち込んだレシピだった。  のちに6人の妻を娶り、そのうち2人の妻を処刑し、己によく仕えた忠臣も邪魔になれば処刑しまくったイングランド王ヘンリー8世が、まだ第2王子に過ぎず、兄嫁キャサリンに憧憬を抱いていた頃のお話です。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

腐れ外道の城

詠野ごりら
歴史・時代
戦国時代初期、険しい山脈に囲まれた国。樋野(ひの)でも狭い土地をめぐって争いがはじまっていた。 黒田三郎兵衛は反乱者、井藤十兵衛の鎮圧に向かっていた。

【完結】風天の虎 ――車丹波、北の関ヶ原

糸冬
歴史・時代
車丹波守斯忠。「猛虎」の諱で知られる戦国武将である。 慶長五年(一六〇〇年)二月、徳川家康が上杉征伐に向けて策動する中、斯忠は反徳川派の急先鋒として、主君・佐竹義宣から追放の憂き目に遭う。 しかし一念発起した斯忠は、異母弟にして養子の車善七郎と共に数百の手勢を集めて会津に乗り込み、上杉家の筆頭家老・直江兼続が指揮する「組外衆」に加わり働くことになる。 目指すは徳川家康の首級ただ一つ。 しかし、その思いとは裏腹に、最初に与えられた役目は神指城の普請場での土運びであった……。 その名と生き様から、「国民的映画の主人公のモデル」とも噂される男が身を投じた、「もう一つの関ヶ原」の物語。

海将・九鬼嘉隆の戦略

谷鋭二
歴史・時代
織田水軍にその人ありといわれた九鬼嘉隆の生涯です。あまり語られることのない、海の戦国史を語っていきたいと思います。

南部の光武者

不来方久遠
歴史・時代
 信長が長篠の戦に勝ち、天下布武に邁進し出した頃であった。 〝どっどど どどうど どどうど どどう〝十左衛門と名付けられたその子が陸奥の山間で生を受 けたのは、蛇苺が生る風の強い日であった。透き通るような色の白い子だった。直後に稲光がして 嵐になった。将来、災いをもたらす不吉な相が出ていると言われた。成長すると、赤いざんばら髪 が翻り、人には見えないものが見える事があるらしく、霊感が強いのもその理由であったかも知れ ない。

輿乗(よじょう)の敵 ~ 新史 桶狭間 ~

四谷軒
歴史・時代
【あらすじ】 美濃の戦国大名、斎藤道三の娘・帰蝶(きちょう)は、隣国尾張の織田信長に嫁ぐことになった。信長の父・信秀、信長の傅役(もりやく)・平手政秀など、さまざまな人々と出会い、別れ……やがて信長と帰蝶は尾張の国盗りに成功する。しかし、道三は嫡男の義龍に殺され、義龍は「一色」と称して、織田の敵に回る。一方、三河の方からは、駿河の国主・今川義元が、大軍を率いて尾張へと向かって来ていた……。 【登場人物】 帰蝶(きちょう):美濃の戦国大名、斎藤道三の娘。通称、濃姫(のうひめ)。 織田信長:尾張の戦国大名。父・信秀の跡を継いで、尾張を制した。通称、三郎(さぶろう)。 斎藤道三:下剋上(げこくじょう)により美濃の国主にのし上がった男。俗名、利政。 一色義龍:道三の息子。帰蝶の兄。道三を倒して、美濃の国主になる。幕府から、名門「一色家」を名乗る許しを得る。 今川義元:駿河の戦国大名。名門「今川家」の当主であるが、国盗りによって駿河の国主となり、「海道一の弓取り」の異名を持つ。 斯波義銀(しばよしかね):尾張の国主の家系、名門「斯波家」の当主。ただし、実力はなく、形だけの国主として、信長が「臣従」している。 【参考資料】 「国盗り物語」 司馬遼太郎 新潮社 「地図と読む 現代語訳 信長公記」 太田 牛一 (著) 中川太古 (翻訳)  KADOKAWA 東浦町観光協会ホームページ Wikipedia 【表紙画像】 歌川豊宣, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

処理中です...