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助左よ、信長のピーンチやァ⁈
しおりを挟む尾張国小折村(愛知県江南市)
この豪族の屋敷は四面を土壁で囲み、深い堀には水が溜めらている。木々が生い茂った広大な敷地内では人馬が賑わい、館も大きく構えてあった。
生駒雲球(八右衛門家長)は、この「生駒屋敷」と呼ばれる館で灰や油を取り扱う商人でもある。
若き日の信長は、生駒の経済、情報力に目をつけ父(信秀)の代より通いつめていた──。
信長は雲球に見送られながら屋敷から帰ろうとしている。立派な門では近習が2人、馬とともに待機していた。
信長、この時19歳。
眼光鋭く鼻筋の通った美男子であるが、うつけの格好(湯帷子の袖を引きちぎり、腰の周りには火打ち袋、ひょうたんをぶら下げ、虎の皮で髪をくくった茶筅髪)である。
一方、雲球は28歳。
ふっくらとして腰が低くく、一般的な武士の普段着(小袖、肩衣、袴)である。
「雲球、種子島の調達しかと頼んだぞ!」
「お任せ下さいませ。……それより上総介(信長)さま、那古野まで生駒のものを護衛に付けてはいかがでしょう……その、たった3騎では道中危険でございますゆえ」
「ははははは、雲球は心配症じゃのう。案ずるな。上総介はうつけ者ゆえ命を狙う者などおらぬわ!」
信長は近習とともに馬を走らせた。雲球はその後ろ姿を見つめている。
──あの御方は決してうつけではない。信定様(信長の祖父)の様な経済感覚、信秀様(信長の父)の様な豪傑さ、両方持ち備えておられる。
ひょっとしたら、この尾張をまとめる領主となるやもしれぬ……いや、なって頂きたい。
***
沿道を走る信長の馬が急に棒立ちとなり、いななきを発する。近習も慌てて馬を止める。目の前に賊風の男たちが道を塞いでいた。10人はいるであろう男たちに殺気がみなぎる。
信長らに緊張が走った。近習が馬から飛び降りて信長を守るように前へ出る。
「うぬらは何者ぞ!! この御方が誰だか知っての事かぁー!!」
賊は何も語らず一斉に斬りかかった。しかし信長らは強い。あっという間に2、3人斬り倒す。しかし徐々に苦戦していく。近習がケガをし、信長も湯帷子を切られた。
とその時、後方より笠を被った浪人たちが走ってきた。
「と、殿ーっ! 新手がっ!!」
「!!」
信長が焦る。
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