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第2章〜芸州編(其の壱)
第19話
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「わりゃああああああっ!!」
辰太郎の手下や、川に居た輩どもが奇声を上げて一斉に襲いかかってくる。総勢10人程だろうか。油断は禁物だ。素手で戦うことはこれまであまりなかった。俺は集中して敵の動きを見極める。
「このガキャァーーーー!!」
うるさい敵の攻撃を躱しながら2、3人のアゴやみぞおちに「ヒザ蹴り」をお見舞いし、背後から迫る敵は「後ろ回し蹴り」で沈める。正面から体当たりされたが怯むことなく「頭突き」を食らわす。あっという間に敵は半減した。
「ええぞー、ええぞー! 真田さまぁ!!」
領民から歓喜の声が聞こえる。
「ク、クソお……」
1人の輩が砂を握りしめ、俺にかけようとする。その手を六郎が掴む。
「アンちゃん、卑怯なマネはよさんか」
「何じゃ、このおっさん!!」
その瞬間、六郎が輩を投げ飛ばす。
「若、雑魚は引き受けた。大将とやりなされ」
「六郎、ありがとう」
「はいやあああああああ!!」
六郎が輩どもを柔術の「背負投げ」「内股すかし」「大外刈り」で次々と地面へ叩きつける。
これで残ったのは辰太郎と辰三郎の2人である。
「お主ら、何モンじゃ!?」
「兄者、ワイも二郎兄ィも大助には敵わんかった。今じゃ道場で稽古つけてもろうとる」
「ああ!? お前ら、なに勝手なことしとるんじゃ!!」
「辰太郎、お前が富盛の師範か?」
「おう、そうじゃ! お主ら、儂のおらん間に好き勝手やっとるみたいじゃのお!」
「師範殿、川の縄張りを守ってもらおうか」
「ふん、儂を倒したならの……面白い。かかってこんかい小僧!」
辰太郎は木刀を2つ持ち、変則的に構える。
「ほう、二刀流か。辰三郎、太刀しかない。お前の木刀を貸せ」
「ああ、ほらよ。大助、兄者は強え。油断するな」
「ありがとうな、辰三郎」
俺は木刀を構えて対峙する。
「いくぞ、小僧!」
「おう!」
「むぁちゃあああああああああああああっ!!」
ブゥンブゥンと2本の木刀を自由自在に振り回す。1本を受けても間髪入れず2本目が打撃してくる。カンカンカンカンッと素早く受けるが辰太郎の攻撃は緩まない。
「いやあああああああああああああああっ!!」
不意に辰太郎の1本が俺の喉元を狙って突き刺しにくる。思わず仰け反りこれを躱すが、もう1本の斜め打ちが足元へ向かって来た。咄嗟に木刀で払いのける。
「隙ありいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
辰太郎は右前方へ飛んだ。突いた木刀を振りかぶり首元目掛けて渾身の1発を振り下ろす。
ドスッ!!
「あっ!?」
「な、なんだ? どうなった?」
「おい、よく見えねえぞ!」
俺と辰太郎は何事もなかったの如く、対峙したままの姿勢で立っていた。一瞬の出来事に領民は何が起こったのか分からなかったようだ。
「ふはは……やるのお、小僧。じゃが、儂には勝てんじゃろ?」
「辰太郎、川を荒らすなよ。約束したからな」
「なにを……ぐわっ!!」
ドガッっと辰太郎が倒れた。
俺は辰太郎の攻撃をギリギリ躱したが、小袖を破られていた。だが同時に奴の横っ腹を木刀で突き上げたのだ。
「わーーーーーーーーーっ!!」
「真田さまが勝ったぞー!! 何て凄い御方なんだー!!」
領民から歓喜の声が鳴り響いた。
「大助さま、やりましたね!」
「真田さま、ありがとうございます!」
忠次郎と喜左衛門たちが集まってくるが、俺は倒した辰太郎が気になる。
「辰三郎、師範殿を連れて帰れるか?」
「ああ、何とかして帰るわ。それにしてもお前、やっぱり強えな」
辰三郎は捕まえたフナを川へ戻して、傷ついた手下らと辰太郎を抱えながら帰ろとした。
「辰三郎、木刀ありがとう。お前、人として成長したな」
「へん、よせやい!……大助、また道場でな」
「ああ」
──その時だった。
「若、奴が居る!!」
六郎が急に走り出した。恐らく富盛家に居る『草の者』が監視してるのを見つけたのだろう。俺は一瞬「危険」だと思った。
「六郎、深追いはよせ!!」
だが六郎には聞こえてない。
「大助さま、どうされたのですか? 神田さまが屋敷でぜひ御礼したいと申されてます」
「忠次郎、お久が待ってるだろ。マタタビの調理方法を教えなくてはな。アレは鮮度が大事だから」
「いや、でも?」
「先に帰るっ!」
俺は六郎を追って畦道を走った。
辰太郎の手下や、川に居た輩どもが奇声を上げて一斉に襲いかかってくる。総勢10人程だろうか。油断は禁物だ。素手で戦うことはこれまであまりなかった。俺は集中して敵の動きを見極める。
「このガキャァーーーー!!」
うるさい敵の攻撃を躱しながら2、3人のアゴやみぞおちに「ヒザ蹴り」をお見舞いし、背後から迫る敵は「後ろ回し蹴り」で沈める。正面から体当たりされたが怯むことなく「頭突き」を食らわす。あっという間に敵は半減した。
「ええぞー、ええぞー! 真田さまぁ!!」
領民から歓喜の声が聞こえる。
「ク、クソお……」
1人の輩が砂を握りしめ、俺にかけようとする。その手を六郎が掴む。
「アンちゃん、卑怯なマネはよさんか」
「何じゃ、このおっさん!!」
その瞬間、六郎が輩を投げ飛ばす。
「若、雑魚は引き受けた。大将とやりなされ」
「六郎、ありがとう」
「はいやあああああああ!!」
六郎が輩どもを柔術の「背負投げ」「内股すかし」「大外刈り」で次々と地面へ叩きつける。
これで残ったのは辰太郎と辰三郎の2人である。
「お主ら、何モンじゃ!?」
「兄者、ワイも二郎兄ィも大助には敵わんかった。今じゃ道場で稽古つけてもろうとる」
「ああ!? お前ら、なに勝手なことしとるんじゃ!!」
「辰太郎、お前が富盛の師範か?」
「おう、そうじゃ! お主ら、儂のおらん間に好き勝手やっとるみたいじゃのお!」
「師範殿、川の縄張りを守ってもらおうか」
「ふん、儂を倒したならの……面白い。かかってこんかい小僧!」
辰太郎は木刀を2つ持ち、変則的に構える。
「ほう、二刀流か。辰三郎、太刀しかない。お前の木刀を貸せ」
「ああ、ほらよ。大助、兄者は強え。油断するな」
「ありがとうな、辰三郎」
俺は木刀を構えて対峙する。
「いくぞ、小僧!」
「おう!」
「むぁちゃあああああああああああああっ!!」
ブゥンブゥンと2本の木刀を自由自在に振り回す。1本を受けても間髪入れず2本目が打撃してくる。カンカンカンカンッと素早く受けるが辰太郎の攻撃は緩まない。
「いやあああああああああああああああっ!!」
不意に辰太郎の1本が俺の喉元を狙って突き刺しにくる。思わず仰け反りこれを躱すが、もう1本の斜め打ちが足元へ向かって来た。咄嗟に木刀で払いのける。
「隙ありいいいいいいいいいいいいいいっ!!」
辰太郎は右前方へ飛んだ。突いた木刀を振りかぶり首元目掛けて渾身の1発を振り下ろす。
ドスッ!!
「あっ!?」
「な、なんだ? どうなった?」
「おい、よく見えねえぞ!」
俺と辰太郎は何事もなかったの如く、対峙したままの姿勢で立っていた。一瞬の出来事に領民は何が起こったのか分からなかったようだ。
「ふはは……やるのお、小僧。じゃが、儂には勝てんじゃろ?」
「辰太郎、川を荒らすなよ。約束したからな」
「なにを……ぐわっ!!」
ドガッっと辰太郎が倒れた。
俺は辰太郎の攻撃をギリギリ躱したが、小袖を破られていた。だが同時に奴の横っ腹を木刀で突き上げたのだ。
「わーーーーーーーーーっ!!」
「真田さまが勝ったぞー!! 何て凄い御方なんだー!!」
領民から歓喜の声が鳴り響いた。
「大助さま、やりましたね!」
「真田さま、ありがとうございます!」
忠次郎と喜左衛門たちが集まってくるが、俺は倒した辰太郎が気になる。
「辰三郎、師範殿を連れて帰れるか?」
「ああ、何とかして帰るわ。それにしてもお前、やっぱり強えな」
辰三郎は捕まえたフナを川へ戻して、傷ついた手下らと辰太郎を抱えながら帰ろとした。
「辰三郎、木刀ありがとう。お前、人として成長したな」
「へん、よせやい!……大助、また道場でな」
「ああ」
──その時だった。
「若、奴が居る!!」
六郎が急に走り出した。恐らく富盛家に居る『草の者』が監視してるのを見つけたのだろう。俺は一瞬「危険」だと思った。
「六郎、深追いはよせ!!」
だが六郎には聞こえてない。
「大助さま、どうされたのですか? 神田さまが屋敷でぜひ御礼したいと申されてます」
「忠次郎、お久が待ってるだろ。マタタビの調理方法を教えなくてはな。アレは鮮度が大事だから」
「いや、でも?」
「先に帰るっ!」
俺は六郎を追って畦道を走った。
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