上 下
6 / 27
そこのモンスター社員、今すぐ退職届を書きなさい!

第6話 痴漢⑥

しおりを挟む
で……で、今に至る。

社員による痴漢被害のタレコミを元に係長が調査を重ね、金曜夕方の電車内で痴漢することを突き止めたらしい。それが今日なのです。

警察に相談すればよいのに。でもそれでは世に知れ渡るからブランドイメージが……なのか。いやいや、だからって私が囮になるなんて、私は婦人警官でもなく一般人でございますよ。決定的瞬間を捉え、捕まえるなんてできるのかしら?

そんな思考を巡らせる余裕はもう無かった。痴漢の手が太腿に忍び寄って来てるのだ。

ひぃぃ……だからさっさと助けなさいよ。もう被害に遭ってますっ。大声出しますよ! 係長ってば!

けれども係長は中々助けない。

この仕事が成功したらお前の評価は鰻登りだな……そんな彼の言葉でつい引き受けてしまったことに、激しく自責の念に駆られる。

ですが。やはりこんなやり方おかしいです。係長、パンティまで触れられたら私は貴方を訴えます!

ーーと、決意したその瞬間、痴漢の手が何者かによって掴まれた。

「痴漢の現行犯で逮捕する」

係長の声だ。そして痴漢の胸ポケットから社員証を引っ張り出した。

「A社の社員だな。観念しろ。次の駅で降りるんだ」

はぁぁぁぁー、助かった。遅いですよぉー、係長……
しおりを挟む

処理中です...