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告白しちゃった件。

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 高校三年生の三月下旬、卒業式という一大イベントが終わり、帰路に着く。体感する温度はまだ低く、溶けきらない雪が目に入る。…そんな中、俺は隣に住む、産まれた時から幼馴染の男の事を考えていた。

 至ってどこにでも居そうな俺とは違い、俺が必死こいても何一つ勝てることがないような完璧なアイツ。道端の人全員を立ち止まらせてしまうような整った容姿、スポーツテストも期末試験も常にトップだし、挙句の果てには性格まで良い。

 なんでこんな奴が幼馴染なんだろ、そう思ったことは数えきれないほどある。だって、産まれた時から幼馴染で、ずっと比べられて生きてきた平凡な人間だぞ?俺がひねくれるのも無理はないと思う。

 最初、アイツに向けた感情はだった。まあ、思春期に近付くにつれ、憧れは嫉妬へと様変わりしたんだけど。…それがなんの間違いが起きたのか。

「まさか、好きになるとは思わねーよな…。」

 困ったことに、俺こと松山奏太は幼馴染である一之瀬亮を好きになってしまった。

 幼馴染のラブストーリー。漫画やドラマで死ぬほど見てきたけど、それは男女の関係にある場合のみの話であって。俺は、学校に一人ぐらいは居そうな可愛い男…所謂、男の娘ですらない、普通の男だし。

 これで、俺が女の子と遜色ないぐらい可愛かったならもう少しやりようがあったかもしれない。亮の隣に似合う女の子はきっとものすごく可愛くて、美人な人なんだろうけど、一夜の間違えぐらいはしてくれたかもしれないし、告白しても引かれなかったかもしれない。

 けど、俺は?

 そう思ってしまえば、考えは悪い方向へと流れるだけだった。告白なんてしてみろ。引かれてこっぴどく振られるかもしれないし、それならまだいいけど、アイツは優しいからどうにか俺の気持ちを汲み取ろうとしてくるかもしれない。…そんなことされてみろ。今後アイツとどうやって付き合ってけばいいんだよ。

 どう考えても、俺は想いを伝えることすら出来ない。俺が女の子だったら、可愛かったら、そもそも幼馴染じゃなくてただのクラスメイトだったら。そんな都合のいい妄想しか出来ない。

「……はぁ。」

「奏太?ため息ついてどうしたの?」

「っあ、?…っと、なんだ亮か。」

「なんだって何?酷いね、奏太は」

 突然現れてそんな反応をする亮にへいへい、と適当な返事をする。…心臓に悪い。その馬鹿みたいに良い顔で俺の顔を覗きこまないでくれ…

 俺が適当な返事をしたのが気に食わなかったのか少しむすくれながら俺の隣をぴったりとくっついて歩く亮。…誰にも同じ態度の王子様が俺にだけ感情を見せるのは有り得ないぐらいの優越感を俺に与える。

 あーー…やっぱ好きなんだよなぁ。

 そんなことを亮を横目で見ながら思う。それと同時に、告白するなら、今しかないんじゃない?と俺の中にある何かがそう囁いてきた。

 ………確かに、俺と亮は大学違うし、そもそも俺は県外で一人暮らしする予定だし。まあ、亮には言ってないんだけど。言ったら、俺が亮と別れたくなくなるだろうから。

 引かれても、何しても。今まで切ることが出来なかった縁を切れるタイミングは、今、だけ。…後悔するなら、告白してしたいな。そんなことだけ考えて。気が付いたら、俺は亮に話しかけていた。

「ねえ、亮」

「ん?どうしたの?疲れた?」

「そんなんじゃ、なくて…」

「うん、どうした?そんな顔して…」

 心配そうな顔をして俺を見てくる。その背景には見知った家が。いつの間にか家に着いてたみたいだった。

「俺…ずっと亮が好き。」

「…………は?…いや…ふふ、俺も好きだよ?」

「違くて…っ、俺、亮のことがそういう、意味で好きで…っ、」

 そこまで言って、亮の顔を見ずに俺は家へ急いではいった。言い逃げしちゃったけど、もう、いいかなぁ……もう、顔を合わせることもないだろう、し…

 そんな高校生活最終日。俺はこの告白の時、亮の顔を見ないことを5年後、後悔する羽目になる。
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