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なるせ

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第 16 話

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« レイ視点 »






「 ア、アルフ様ぁ、、!っも、もう、、早く、しないと…!ぼ、僕が怒られるんですぅ…! 」


「 嫌だ。入学式には出ただろう。 」


「 で、でもッ!パーティーに、行かないとッ…ぼ、僕が…ル、ルーシュさんに…こ、こ、こ、殺される…ッ 」




 僕の前を歩いているこの人は、死にかけていた、生きる価値もない僕を…助けてくれた、この国の公爵家次男、アルフ・レイデーン様。


元々、奴隷として生きていたこんな汚い人間を…いや、もはや人間とも言い難い" モノ "をアルフ様はその麗しい手で救ってくれた。


救ってくれただけに留まらず、そのまま売られるのか、奴隷としてもっと使われるのか。その二択しかないと思い込んでいた僕に、、公爵家の使用人として、しかもアルフ様の従者として雇ってくれた。


しかも、辛うじて覚えていたレイという名があるとルーシュさんに伝えていたら、目が覚めてすぐのアルフ様が僕の名前を呼んでくれた。


アルフ様は僕の命だ。アルフ様がいなければ、僕はもう生きていけないし、生きようとも思わない。アルフ様に必要とされなければ生きている価値もない。僕はアルフ様が要らない、と切り捨てられるまではアルフ様の手となり足となり心臓となろう。


 そう決めたのは、アルフ様が目覚めてから割とすぐの事だった。


決めたからには、アルフ様の格を落とさないように、完璧な従者にならなくてはいけない。僕はアルフ様の専属騎士であるルーシュさんに従者としての振る舞い方を教えこんで貰った。


…何故、騎士のルーシュさんが従者の仕事やメイドの仕事内容を完璧に覚えているのかは分からなかったけど。


 そうして、十日しかなかった従者としての練習期間だったが、ルーシュさんに渋々認められるぐらいには従者として使えるようになった。


そうして、学園へ行く前日に久しぶりにアルフ様に会った。その時ーー、




「 アルフ様。この度は私を… 」


「 どうした、レイ。お前、そんな話し方だったか? 」


「 えっ、、!、あ、、い、いや、あの、、。」


「 ははっ、その挙動不審な話し方、治ってないじゃないか。 」


「 もっ、申し訳…ッ 」


「 怒ってない。むしろ俺はその話し方の方がいい、が。ルーシュに扱かれてたのも知ってるから、、まあ、お前に任せる。、、俺は寝るから。 」


「 は、はい。 」




 単純に嬉しかった。飾らなくていい、その方が好きだと僕に伝えてくれたこと。僕の頑張りを知っていてくれていたこと。


元の主人は一つでも間違えれば僕を本気で殺そうとした。けれど、僕はこの身に似合わない魔力を持っていたから、死ねなかった。


もういっそ、死ねれば良いのに。そう何度も思った。…アルフ様に出会った日。あの日は僕を殺そうとした主人が僕のことを痛め付けて、王都の路地裏に捨てた。路地裏で何人もの人に殴られ、蹴られ…死ねないのが本当に辛かった。


魔力量は多いが、回復魔法は使えない上に、使えたとしても、こんな精神状態で魔法を使えば魔力が暴走して死ぬことなんて分かりきっていた。まあ、死ねるならいいか。そう思っていた時、顔面蒼白にしたアルフ様が僕の傍に寄って来た。


僕の心は死んでもいい、死にたいと思っていても、アルフ様に縋ってしまう自分の身体が憎かった。惨めだった。どうせ、縋ったところで振り払われて捨てられるだけなのに。


 けれど、アルフ様は魔法で僕の傷を全て治してくれた。あの時の感覚は一生忘れないだろう。心が、満たされる、そんな感覚。ずっと味わっていたかった。




「 …ぃ、…い、おい! 」


「 ッひゃい!!」


「 俺を引き留めようとしたくせに意識を飛ばすな。仕方ないから、パーティーには出る。少しだけでも出たのならいいのだろう? 」


「 ほ、ほんとですか、、!い、い、いいです、、!もう、、出てくれるなら、、なんでもいいです、、 」




 優しい僕の主様。死ぬまで僕の愛も身も全て捧げますーーー




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