神々に育てられた人の子は最強です

Solar

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眷属

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「いま、何か言ったか?」
「ああ、その二人を離せと言ったんだ」

 俺の言葉に、男は眉をピクピクとさせる。随分とストレスが溜まっていたようだ。
 こういう奴は、いちいち怒るのでめんどくさい。

「おっと、その前に。凍篭華、一度古の王国アトランティスの中に戻り、出てこい、ウロボロス」

 腰につけていた凍篭華は光となって消え、俺の両手に色違いの二丁の銃が現れた。

「わたし(オイラ)たちが一番最初に使われる!」
「お前ら、この形になっても喋れるのか」
「はい」「おう!」

 2人とも機嫌が良さそうだ。何故かは知らないが。そして、どっちがどっちか、わからない。

「なぁ、どっちがウロで、どっちがボロなんだ?」
「わたしがこっちで」「オイラがこっちだ!」

 二丁の銃が、ピク、ピク、と動く。水色の銃がウロで、紫色のがボロだとわかった。
 そして、ウロとボロのグリップの部位が、装備しているガントレットと合体した。

「何やっている、そして撃つ時、弾はどうすればいい」
「こっから主様の魔力を吸い上げるんだよ。弾は、主様のイメージが弾の形となり、放たれる。簡単でしょ」
「それと、吸い上げる魔力の量は、弾数、威力、範囲などによって比例します。加えて、放つ弾の属性も主様のイメージで変わります」
「それは面白そうだ。では早速撃つぞ」

 俺は魔物の方に銃口を向ける。
 イメージが完成した時、魔力が吸われるのを感じがしたので、ウロとボロを見た。水色と紫色が濃くなっていく二丁の銃。

雷撃とライトニング竜巻の弾トルネードショット

 トリガーが引かれた二丁の銃から放たれた弾は、想像した通り、視界を埋め尽くすほどの広範囲竜巻に、その中を巡る鋭い雷撃。
 魔物達は次々と風に薙ぎ払われ、雷に貫かれる。
 撃ち終わると、その場には何も無かった。草木はなくなり、地面は抉られ、魔物たちは消し飛ばされたようだ。
 後ろをチラリと見たが、後方には影響がなく、勇者たちの間抜けな顔が目に映っただけだった。

「さて、次はお前だな」
「そうか、じゃあ死ね」

 男は頭にきたようで、愛菜と雫を空中に寝かせたまま置いて、俺の目の前に瞬時に現れ、拳を振り上げた。

「俺の言ったことは、絶対だ」

 その一言を言い切ると、拳をこちらに向けて放ってきた。
 常人には見えない速度で。

「さっきから鬱陶しかったんだよ。俺の言葉を無視して動き出し、喋りだすゴミ共に」

 誰もが今の攻撃で俺は肉片に変わっているはずだと思うのに対し、男は一人でそう言う。
 男の振り下ろされた拳の風圧で巻き上がった砂煙の中からは、殴られたはずの俺は平然と立っていたのだ。
 その姿を見て、男以外の全員が驚愕の顔をしていた。男は感触でわかっていたのだろう。

「今ので死なねぇとは。初めてだよ、一発で死なねぇ奴は。それじゃあ、ちょうどいい、俺のサンドバッグになってくれ」

 男は続けて拳を振りかざす。
 無抵抗で殴られる俺だが、装備に付与されている【衝撃発散】のおかげで、あまり衝撃が通ってこない。
 もう一度言おう、“あまり”、だ。少しは衝撃が来ると言うことだ。

「これで終わりか?」

 だが、確かに衝撃は伝わってきたが、耐えられない程ではないため、何事も無かったかのように、そう言った。

「んだと?ここまで殴っても生きているとは、こりゃあどういうことだ?」

 男の声から驚いているとわかる。

「自分の言ったことは絶対だ、とか言っておきながら、たった一人の人間も殺せてないのに、よくそんなことが言えるな」
「ああ!?」
「さて、次は俺か」

 俺も、男に向かってウロボロスを持ちながら、おもいきり男の顔に殴りつける。
 男は吹き飛び、木を何本も薙ぎ倒していき、地面に何度もバウンドして、大木にぶつかって止まった。
 俺は男が吹き飛んでいる間に、愛菜と雫を返してもらおうと、空中を上っていく。
 そして、辿り着くが、二人の体を中心に、風が超高速で回転して結界のようになっていた。
 これは、常人なら突破できないものだろう。
 しかし、そんなことは関係ない。

「俺には魔法は効かない」

 俺は普通に愛菜と雫に手を伸ばし、風の結界に触れた。その瞬間、風の結界は弾け飛んだ。
 俺は2人を抱え、地面に下り立つ。

「少し怪我をしているな、ダンジョンに行ったからか完全治癒パーフェクトヒール

 愛菜と雫の体は、薄い黄緑色の光に包まれ、体にあった傷が瞬時に癒されていく。
 完全治癒パーフェクトヒールとは、どんな傷でも、欠損していても癒す、治癒魔法を極めて初めて使える、最上級の魔法だ。

植物の揺りかごプラントクレイドル

 愛菜と雫は、傷は癒されたがまだ気絶しているため、名前通り、植物で作られた揺りかごの中に入れた。そして、中に入れると、植物の蔓が2人の体を包み込む。
 俺は愛菜と雫の安全を確認すると、吹き飛んだ男がいる場所に向かった。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

 なんだ、なんで俺は空を見ているんだ?この体が触れている冷たさは、地面なのか?じゃあ俺は今、仰向けになっているのか?どうして?

 体をゆっくりと起き上がらせると、緑色の液体が地面に落ちる。

 なんだこれは、血?これは、血なのか?そうだ、魔物を殺している時、よく流れていたものだ。どこから?俺から?どうして?

 立ち上がれば体はふらつく。息が荒れる。地面を見れば、ボタボタと緑色の血が流れ落ちる。

「な、なんだよこれはぁぁぁあああ!!」

 なんで俺は仰向けになっていた!?なんで俺の体はふらついている!?なんで俺の息は荒れている!?なんで俺から血が流れている!?

「なんだ、自分の血を見るのは初めてか。お前が気絶させた二人は返してもらったぞ」

 黒ずくめの男が歩いてくる。

 今、あいつは俺の嫁になる二人の人間を、返してもらったと言ったのか?この血はあいつか?あいつなのか?ならば、倍以上にして返さなければ!

 俺は、猛スピードで走り出し、黒ずくめの男の懐に入って、懇親の一撃を与えた。

「ははは、ふはははは!ざまぁねぇ!俺をこんな目に遭わせる……から………だ」

 俺の懇親の一撃はまともに入った。入ったはずなのに、目の前の男は、俺の手を握っていた。

 ◇◆◇◆◇◆◇◆

「ほぉ、やはり鬼族は体が硬く、パワーがある。お前は鬼族の中でも有能な奴だな。しかし、それだけでそこまで強いはずはないが、まぁいい」

 俺は、男の強力な一撃を片手で受け止めながらそう言う。恐らく、今のはこの男の懇親の一撃とか言うものだろう。速さ、威力が倍以上に上がっていた。

「ほら、どうした、その背負っている馬鹿でかいハンマーを使わないのか?」

 男は、掴まれている拳を振り払い、ハンマーに手をかける。

「人間風情にこれを使うのは初めてだ」
「よかったじゃないか、今日は初めてなことがいっぱいで」
「いつまでも余裕でいれると思うなよ!【破槌はついメルトフ】!!」

 男はハンマーを上に掲げ、名前を叫ぶ。

「ウロボロスを古の王国アトランティスの中に、代わりに凍篭華、来い」

 男はハンマーを持ちながら迫ってくる。それに対し、俺は凍篭華で迎え撃ち、男のハンマーをスパンッと俺の凍篭華が斬った。

「な、なんだと?俺のメルトフが、斬れた?」

 男は真っ二つになったハンマーを見て、そう呟く。

「「お前(貴様)、何者だ?」」

 俺と男は同じ言葉を同時に言った。

 初めからわかっていた。俺に似た存在だと。そして戦っていると改めてそう感じた。使われている武器に付与されている魔力量。先程も言ったが、鬼族にしては強すぎるその体。俺の攻撃を何も使わずに受け、生きているはずがない。通常の生物とはかけ離れた力を持つ存在。

 男も感じていたみたいだ。

「わかった。そうか、お前【眷属】だな。だから手の甲に布を巻いていたのか」

 俺は一つの答えに辿り着き、俺の言葉に、男の眉がピクリと動く。

「なぜ貴様が【眷属】を知っている。まさか、貴様も!?」
「いや、俺は違う。だが、お前と似た者だ」
「ちっ、貴様には本気で行かなければ勝てないようだ!【眷属化】!!」

 男の体から、尋常ではない魔力が放出し、渦を巻く。

  【眷属】、それは地上の人間が知ることは、ありえない言葉。
  【眷属】とは、神の側近。神の血を吸った生物のことを言う。その生物は、少し、神気を持ち、神の存在に近づいた者のことだ。
  【眷属化】とは、先程説明した、眷属になることを指す。
   【眷属】になった生物は、元の姿の時でも、同種の数十倍のステータスとなる。

 あれ?今思い出したけど、ハクとルナをテイムした時にあった、あの紋章、眷属になった印じゃねぇか!?
 やっべえ、やらかした。眷属ってそうそう、作っていいものじゃねぇのに。

「これが、俺の【眷属化】だぁ!!」

 魔力の渦から現れたのは、角が巨大化して、赤黒い皮膚に覆われた男と、真っ二つになったはずのハンマーだった。
 それの姿はまさに、鬼。

「お前、【眷属化】すると、鬼王になるのか。いや、それ以上」

 鬼王。

 それは鬼の種の中で最も強い者に与えられる称号だ。そしてこいつは、眷属化したことによって、その鬼王さえも上回る力を今、持ったのだ。

「ああ、そうだ!これでパワー、防御力を中心に、先程よりも、何倍も強くなった。この姿なった俺に、敵う奴はいない!!」
「いちいちうるさい」

 俺で凍篭華で男の体を斬りに行く………が。

 ギィィィィィンン!!

 男のハンマーによって、受け止められ、払われた。
   【絶斬】が付与されている凍篭華を受け止める、奴の武器には、凍篭華の【絶斬】と似たものが付与されているのか。

「なんだよ、その武器は。【眷属化】までして強化されたメルトフでも破壊できねぇとは、いったい何で造られてんだよ」
「それはこっちのセリフだ、まさか、凍篭華が受け止められるとは」

 お互いそう言いながら、再び走り出す。
 受け止め、払い、振り下ろし、競り合いながら火花を散らし、互いの武器をぶつけ合う。

 ドムッ!

「かはっ!」

 男は俺に殴られ、またもや飛んでいく。
 相手は両手持ちのハンマー、それに変わって俺は刀だ。両手を使い競り合っていたら、腹が開く。隙があったらそこを狙うのが当然だ。

 ピキッ

 そんな音が聞こえたので、鳴った方を見てみれば、凍篭華にヒビが入っていたのだ。まったく、信じられないものだ。

「へ、ざまぁねぇ。そんな薄っぺらいもので俺のメルトフを受けるからだ」

 男は口に入っていた血をペッ、と地面に吐き捨てそう言った。
 仕方ない、これからは受け止めるのではなく、受け流すか。
  しかし、【絶斬】が付与されている凍篭華は、受け止めることは出来ず、斬られるはずだ。なにか、似たものが付与されているのか。
 男は、またも突っ込んできて、俺の前に来て猛攻を始める。必至にハンマーを握りしめながら。だが、そんな男の猛攻を、俺はすべて凍篭華で受け流す。
 男は、「ちっ」と舌打ちをするがそれでも攻めてくる。

「ハァハァハァ」
「なんだ?【眷属化】しても、その程度か?」

 男は俺を睨みつけるが、その視線を流しながら言葉を繋ぐ。

「ただ力任せに振り回しているだけじゃないか。そんなもので俺に勝てるはずがないだろう、脳筋野郎が」
「クソがあぁぁぁぁ!!」

 男は怒りながら叫ぶ。こいつはあれだな、属にいう単細胞とかいう部類のやつだな。
 先程と同じように、突っ込み、ハンマーを振り回すだけ。しかし、すべて凍篭華で受け流される。
 だが、さすが眷属化した鬼王以上の存在と言ったところだろう。受け流しているのに、衝撃が来る。
 そして、凍篭華の刀身が徐々に崩れてきたのだ。
 俺はいけないと思い、男を蹴り飛ばす。男との距離ができた時、凍篭華の修復を瞬時に行う。

絶対零度アブソリュートゼロ

 俺を中心とした場所が、どんどんと氷となって固まっていく。土が、草が、木が、この場だけが銀色の世界に包まれた。
 そして、崩れてきていた凍篭華は、徐々に元の美しい姿に戻っていった。
 凍篭華は、絶対零度と同じか、それ以下の温度を出さなければ、修復できないのだ。

「ふ…ざけんな……、ほんと……何者なんだよ…」

 みんなは知っているだろうか、足は腕の約3倍の力があると。
 男と戦い始めずっと拳でダメージを与えていたが、鬼の防御力を持っていたとしても、血が出るほどダメージを与えていた。
 しかし、今回は蹴りだ。男は、ハンマーでギリギリガードどしたが、その衝撃は体を深く、広く響いただろう。
 男は自分の壊れた左腕を抑えている。

「腕は壊れたが、俺は、魔法も使える!」

 男は、まだ使える右腕を前に出し、詠唱し始める。

『大いなる風よ、道を阻む我が敵を、撃墜せよ!攻撃的な強風アグレッシブゲイル!』

 放たれた風は、通常の強風より、もっと強力なもの。
 やはり、こいつは風魔法が得意なのか?
 まぁいい。

「こんなもの、俺には無意味だ」

 男の魔法を、真正面から打ち消した。
 呆然とする男。

「さて、俺の正体を教えてやろう。【神化】」

 そう口にした時、俺の体に変化が起きた。髪は黒のまま後ろの方に長くなり、目は紫色に、体からは常に覇気が放出される。そのせいで、雲はなくなり、木々からはミシミシと音が鳴る。しかし、身体から溢れる神気により、植物たちは急成長を引き起こす。
 急成長をし過ぎた植物は、巨大な大樹となり、この場を一瞬で樹海と変える。
 だが、巨大になり過ぎた植物により、大地は栄養を奪われ、枯れ果てる。
 そして、栄養が無くなったことにより、植物の成長は止まり、また、大地と等しく枯れ果てる。
 俺がこの姿で歩いた道は、全てが育ち、瞬時に消えて枯れ果て全てを失くした土地へとその身を変える。悲しき大地。

 まさに、【死神の足跡】

【神化】の状態で世界に干渉すると、影響力が大きすぎて、全てを死の道へ辿らせるようだ。

 この男は、今まで同等で戦える相手がいなかったのだろう。元々鬼族の中でも有能な奴で、すべて才能の力で生きてきて、力任せで道を開いてきた者だ。

 だからこいつは、敗北を知らない。

 自分が勝つことが当たり前、周りの奴らは自分より下の存在、努力というものを知らず生きてきた。だから初めて眷属になった時以降、一度も眷属化を使ったことがないはずだ。眷属の力をまったく発揮できていないのが、その証拠だ。
 こういう奴は、今までやってきたことを、奴にやればいい。
 つまり、こいつのすべてを、上からねじ伏せればいいということだ。

「ま、まさか……、貴様!かm「黙れ」

 俺は男の口を掴んだ。

 神は通常、どの世界にも干渉することができないものだ。これは、神界で決められている、神のルールだ。もし、神が世界に現れたことが知られれば、世界が壊れることがある。

「これが、お前が俺に勝てない理由だ」
「なぜ、お前が世界に干渉できた!!」

 男の疑問はもっともなことだ。眷属である以上、神の存在、神のルールは知っているものだ。
 しかし、それは例外もある。

「俺はお前を眷属にした神と同じ、例外の存在だ」
「な、な、なんだとぉぉぉぉおお!!??」

 今、神となったこと時の力で、この眷属を殺す力を持っている。
 眷属は、その体には神気を宿している。こいつが扱えなくてよかった。扱えたらもっとめんどくさくなっていた。

 神と神、眷属と眷属、神と眷属。

 この3つの戦いになった時、人間が介入してもできることは無い。
 なぜなら、神と眷属。両方とも、神気を扱える存在。神気を扱える存在を殺すためには、同じ、神気を扱える存在でなければならないのだ。

 俺は右手をあげ、神界にある、自分の神気を集中させ、男の心臓部にめいっぱいの力を込めて、殴りつけた。

「があぁぁぁああああああッ!!!」

 殴りつけた拳から、男の心臓部にかけて、神気を流し込む。これが、神同士、眷属同士、神と眷属の戦いでの、殺し方。

「ああぁぁぁ………ちくしょう……また、貴方様に……お会いしたかった………」

 男はそう言って、光の粒子となって、消えてった。

 神様たちみんなに報告が必要だな。
 まさか、邪神・・の眷属がいるなんて。
 あっ、そう言えばさっきの男の名前、聞いてなかった。

 俺は戦いが終わったので、神化を解き、クラスメイトの元に戻ることにした。
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