駄目ゲーム部活動記録!

よなぷー

文字の大きさ
52 / 62

0052(七)09

しおりを挟む
 立ち上がった黒潮先輩は、仲間たちとハイタッチをかわした。その直後、アルコールティッシュで自分の手を拭く。失礼な綺麗好きだった。

 俺は抜け殻のようになって、真樹先輩と入れ替わるように自席へ戻る。

「すみませんでした、部長」

「何、構わん。まだ1敗だ」

 有働部長が真樹先輩に冷笑をぶつける。

「まずは俺たちの勝ちだな。流れを止めたくない。次の勝負といこう。この作品でな。南!」

「はい!」

 再び南副部長が巾着袋を漁る。取り出だしたるは――

「ファミコンの定番ソフト、『マリオブラザーズ』!」

 その黄色いカセットに、駄ゲー部部員たちは歓声を上げた。そう、このソフトは「学習済み」のゲームの中の一本だったのだ。

 俺たちの反応にぎょっとするパソコン部部員たち。南副部長が唾を吐きたそうな顔をした。

「どうやら遊んだことがあるみたいだな」

 美夏先輩が真樹先輩とアイコンタクトを取り、椅子から離れた。

「うちがこのゲーム担当するで。相当やり込んだし、絶対負けへん」

 有働部長が感心したかのように腕を組む。

「ほう、そうなのか。なら一条、15分の試遊はいらないな?」

「いりまへんで。うちはいつでも臨戦態勢や」

 部長同士が目顔で確認しあう。真樹部長がメンバー表からパソコン部代表を素早く選出した。

「では、パソコン部虹野泰樹、前へ!」

 背の低い太陽のような少年が、パソコン部側のプレイシートに着席する。

「お手柔らかに頼みますよ、一条先輩」

 美夏先輩は余裕のあるところを見せ付けた。

「何、多少は花持たせてやるわ。もちろん勝利はいただきやけどな」

 雲雀先輩が声援を送った。

「頑張ってなので、美夏ちゃん!」

 有働部長がしわぶきを一つしてから、今回の勝敗条件を提示する。

「ルールは簡単。デスマッチだ。先に自キャラ――虹野ならマリオが、一条ならルイージが全滅すると負けになる。モードは2人対戦B。では、始め!」

 ゲームに突入するというのに、さきほどまでの貫禄はどこへやら、美夏先輩は明らかに狼狽してみえた。

「ちょ、ちょい待ち! 『マリオブラザーズ』は協力して先の面に進んでいくゲームやろ? デスマッチって何やねん?」

 クールな美夏先輩が崩壊する。とにもかくにも、ゲームは始まってしまった。

『マリオブラザーズ』は古いファミコンゲームの中でも更に古く、1983年の本体発売のすぐ後に発売されている。固定画面で、段差のある画面をマリオが駆け回り、上の管からやってくる亀や蟹(かに)を全滅させれば1面クリアとなる。

 歩いている敵にそのままぶつかるとミスとなるが、床下からジャンプで叩くと敵がひっくり返るので、このときに走って蹴ると画面外へ叩き落すことが可能だ。また画面中央下部にはパワーボックスがあり、これを下から叩くと画面上の接地している敵を一斉に裏返すことができる。寝ている敵を下から叩くと、また元に戻って進み始めるから注意が必要だ。

 美夏先輩のルイージが躍動する。

「要するにマリオをミスさせればええんやろ?」

 画面上部の亀たちをほったらかしにして、美夏先輩は最下段左端の虹野マリオに体当たりをかました。もちろん、プレイヤー同士が接触しただけではミスとはならない。互いに押し合ったり出来るだけだ。

 虹野はくすくす笑いながら美夏先輩をあおる。

「一条先輩、ほらほら、亀が来ますよ」

「分かっとるわい」

 ルイージがマリオから離れる。行動の自由を得た後者は、パワーボックスを三回突き上げて消滅させた。驚く美夏先輩に、虹野はスマイルを見せた。

「さ、準備は整いました! 戦いましょう、一条先輩」

 雑な効果音と共に画面端から緑色の炎の玉が現れる。それは高速で画面下部を真横に突き抜けようとした。

「あかん、炎や」

 ルイージが避けて、上段の床へ飛び乗る。マリオはパワーボックスがなくなった空間を利用してジャンプで炎をかわした。

「うわっ、邪魔や」

 亀が近づいてくるのを、美夏先輩は必死でやり過ごす。ちなみにこのゲーム、画面左端と右端は繋がっている。

 またガスバーナーのような粗雑な音と共に、今度は三段目で緑の炎がルイージを襲った。

「ああ、しつこい」

 二段目をうろうろするルイージ。亀たちがその行く手を遮る。

 そのときだった。

「もらいました!」

 虹野の笑いと共に、マリオが下からルイージの乗る床を突き上げた。ルイージは無様に跳ね上がり、歩いている亀に激突。1ミスとなった。

「あーっ! 何するねん!」

 画面最上段で次のルイージがスタンバイされる。まさにそのとき、付近で今度は赤い炎が発生。斜めに移動し始めた。

 俺たち駄ゲー部部員たちの声援が飛ぶ。

「頑張れ、美夏先輩! 負けないで!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

陰キャの俺が学園のアイドルがびしょびしょに濡れているのを見てしまった件

暁ノ鳥
キャラ文芸
陰キャの俺は見てしまった。雨の日、校舎裏で制服を濡らし恍惚とする学園アイドルの姿を。「見ちゃったのね」――その日から俺は彼女の“秘密の共犯者”に!? 特殊な性癖を持つ彼女の無茶な「実験」に振り回され、身も心も支配される日々の始まり。二人の禁断の関係の行方は?。二人の禁断の関係が今、始まる!

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について

おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。 なんと、彼女は学園のマドンナだった……! こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。 彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。 そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。 そして助けられた少女もまた……。 二人の青春、そして成長物語をご覧ください。 ※中盤から甘々にご注意を。 ※性描写ありは保険です。 他サイトにも掲載しております。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

処理中です...