31 / 156
01桐木純架君
生徒連続突き落とし事件09
しおりを挟む
「何だって?」
俺はあまりのことに、1年生の調査を担当した日向を振り返った。俺や奈緒、英二に結城の視線を一身に浴びて、彼女は思わずといった具合に縮こまる。
「えっ、でも、私が1年2組で聞き込みしたときは、誰も屋上には行っていないって……」
「柏木が嘘をついたのさ」
英二は得意満面だ。その小さな体が膨れ上がる自尊心で破裂したとしても、俺は一向驚かなかっただろう。
「柏木は俺にべらべら喋った後、急に不安になったんだ。もしかしたら、自分は連続突き落とし魔に間違えられるような、とんでもないことを口走ってしまったのではないか、とな」
それで日向には話さなかったというのか。その、柏木悠美って子は……。英二が癖毛を撫で上げた。
「美又先輩の言う『小柄な女』という条件にも、柏木は符合する。しかも屋上には自分一人しかいなかった、とまで証言した。スケッチも見せてもらったが、確かに屋上からの風景画が描かれていた。後の推理は簡単だ」
両手を広げて目を閉じ、まるでオペラ歌手のように語る。自己陶酔の色があった。
「柏木はアリバイを作るため、屋上でさっと手早く風景画を描いた。そして階段を下り、2階の防火シャッター脇の扉に張り付く。時間が経ち、美又先輩がやってきて階段を下り始めたところで、背後から思いっきり突き落とした。スケッチブックや道具は持って逃げたんだろう。1階へと逃れたのは、俺やお前らが2階と3階に張り込んでいることに気付いていたからだ……」
英二は目を見開いた。彼にしか見えない満員の観衆から、盛大な拍手を全身に投げかけられているみたいだった。
「どうだ。これから俺と結城は美術室へ行き、柏木を追い詰める予定だが、お前らも来るか? もっともその場合、勝負は俺たちの勝ちと認定させてもらうがな」
奈緒が真っ先に立ち上がった。ほぞを噛むような顔が、はらんだ屈辱を端的に表している。
「いいわ。行きましょう。負けるにしても、最後を見届けたいわ」
俺と日向も後に続く。
しかし純架だけは折り紙で力士を作るのに熱心だった。
「僕はいいよ。君たちだけで行ってきたまえ。ここで待ってるよ」
そして一人寂しく紙相撲を始めた。手製の土俵の左右を叩き、「頑張れ白鵬! 負けるな大鵬!」と夢の試合を器用に演じる。
こいつ、本当に高校生か?
美術室前に到着した俺と奈緒、日向、英二に結城の5人は、部員の悠美を呼び出した。
「何ですか?」
廊下に現れた悠美は、英二の姿に既に怯えていた。自分が彼に『当日屋上にいた』と喋ったことが、どうやら自分に嫌疑がかかる失態だったと認識しているらしい。
英二の方が背が低いため見上げる格好となっている。それでも威圧感はあるらしく、悠美はたじろいで震え上がった。
英二が彼女のすくみきった顔に人差し指を突きつける。サスペンスドラマのクライマックスよろしく、彼は強烈に睨みつけた。
「お前が『生徒連続突き落とし事件』の犯人だな、柏木」
ずばり言い切った。柏木は目をしばたたいた後、その言葉の意味を理解して後ずさった。
「ち、違います!」
壁に背中が着く。それ以上後退できないと知って悠美はうろたえた。
「なんで私が犯人なんですか! 支離滅裂もいいところ……」
「もうお前しかいないんだ、美又先輩を突き落とせそうな人間はな」
「知りません! 私がそんな酷いことするわけないでしょう!」
「吐け!」
英二の声に熱がこもった。
「見苦しいぞ、今更じたばたするな! 今認めれば自白で罪が軽くなるんだぞ。この好機を逃すな!」
「いい加減にしてください!」
埒が明かない。俺はだんだん英二の考えに自信が持てなくなってきていた。こうまで否定されると、もしや間違いではないかとの疑念が胸中でとぐろを巻く。
「さっきから何を騒いでいるの?」
美術室の扉が開き、美術部顧問の金近優子先生が姿を見せた。天然な性格で知られる教師だ。悠美は涙を振りまいて彼女の胸に飛び込み、けたたましく泣く。金近先生のボリュームある胸が揺れた。
「あらあら柏木さん、どうしたの?」
「先生、この人が私を犯人扱いするの!」
英二は悠美の背中を視線で焼き尽くそうとするかのようだ。金近先生に抗議の声を投じる。
「最近はびこる生徒突き落とし魔がその女なんですよ、先生」
「あらまあ」
金近先生はとぼけていた。ほんわかと笑う。
「でも勘違いでしょ? この子、そんな悪いことする子じゃないもの」
悠美を落ち着かせるようにその髪を撫でる。少し生真面目な顔になった。
「君たちの考えは間違ってるから、また家に帰って検討してみて。女の子を泣かすなんて男として最低よ、君。反省しなさい」
英二は弾力あるマシュマロのような女教師に食い下がる。
「でも聞いてください、先生」
英二は自分の捜査の過程を端的に説明した。
「……というわけで、当日屋上にいたのは柏木だけなんです。彼女こそが犯人なんです」
「あら? でも……」
金近先生は頬っぺたに人差し指を寄り添わせた。
「その日は柏木さん、屋上からの風景画を描いてこの1階の美術室まで持ってきたわよ。突き落としの騒ぎはその後だわ。柏木さん、美術室にずっといたわよ」
英二は気の毒なぐらい青ざめた。急に息苦しくなったか、首に巻きつくネクタイを緩めて隙間を作る。
「そんな馬鹿な」
「馬鹿も何も、それが事実だし」
金近先生は柔らかく微笑んだ。どこまでも掴みどころがない人だ。
「捜査、頑張ってね。早く真犯人が見つかるといいわね」
泣きじゃくる悠美を保護するように抱え、金近先生は美術室の扉の向こうに消えた。事件解決の糸口がぷっつり途切れた瞬間だった。
残された俺たちは愕然と佇立するより他にない。目の前で閉まった扉が無慈悲に思えた。
「彼女が犯人でないとすると……一体どうやって犯人は美又先輩を突き落としたんだ?」
英二の独語に俺は共鳴せざるをえなかった。
階段の踊り場に竹刀を突いて立っている先生方に挨拶しながら、俺たち『探偵同好会』は1階に下り、下駄箱で靴を履き替えた。駅までの短い距離を4人で歩く。
俺は無念の思いのまま、胸底を悲嘆で一杯にした。
「純架が前に言ってた『時には捜査の努力実らず』って言葉、どうやら今回は的中しそうだな。正直もう解決の見込みがない。確かにストレスが溜まるな、これ」
奈緒はほぞを噛む思いのようだ。
「三宮君に負けはしなかったけど、勝ちもしなかったわ。やっぱり悔しいわね」
日向は愛用品のカメラをいじっている。やるせない気持ちは彼女も一緒のようだった。
「とりあえず中間テストに向けて勉強ですね、私たちは。それが学生の本分ですし」
純架は足を運びながら紙飛行機を作っている。出来が良かったのか、『アストロコンコルド』と小学生のような名前をつけてはしゃいでいた。
「問題は犯人が次の凶行を犯す可能性さ。放課後は先生方が階段を見張ってくれているけど、昼休みや授業中はそういうわけにもいかないからね」
俺たちはぎょっとした。
「おいおい、犯人がまたやらかすってのか?」
「さあね」
純架は前方に紙飛行機を投げると見せかけて、俺の胸に叩きつけた。
「やった! 5兆点!」
的じゃねえよ。大体5兆点って何だよ。どんな競技だよ。
渋山台高校は中間テスト直前だった。どの授業もそれを見晴るかす内容に切り替わり、生徒たちは真剣な表情で黒板に書かれるヒントをノートに書き留めていった。
ここ最近天気がいいのは結構なことだが、その分暑さが身に染みて、教室には汗の匂いが充満していた。それを吹き飛ばしてくれるのは、開いた窓から注ぎ込まれる乾いた風だ。窓際の席の生徒たちは、熱い陽光と涼しい風のサンドイッチを腹いっぱい食べさせられ、羨望と気の毒が入り混じった複雑な視線を浴びるのだった。
昼休み、純架は教室にいなかった。いつの間にか弁当も食わず出ていったらしい。何か用があったのだろうか? それで俺は親友の岩井や長山と食事を共にしていた。この3人なら話は馬鹿っ話になる。俺はげらげら笑って楽しい時を過ごした。
一方英二は意気消沈といったていで巨大なロブスターをカットしている。捜査が失敗しても弁当の豪華さは変わらないのだ。羨ましい奴。
そういえば奈緒の姿が見えないが、1組で日向と昼食を摂っているのだろうか。まあとりあえず、まずはのどかな昼下がりだった。
そう、甲高い悲鳴と、それに続く衝撃音が空間に亀裂を入れるまでは。
「何だ?」
いや、問うまでもない。誰かが階段から転げ落ちたに決まっている。英二が弾かれた虎のような俊敏さで教室を出て行く。俺もパンを放り捨てると、くつろぎと仲間を置き去りに階段へ全力で駆けていった。
跳ぶように下りていくと、2階から1階への中間踊り場に二人の女がいた。片方は俺のよく知る人物だった。
「飯田さん!」
奈緒が女生徒を介抱しているようだ。英二は興奮のためか上ずった声で尋ねた。
「おい飯田! 何があった!」
「この人が突き落とされたのよ!」
女生徒は涙を流しながら、太ももを押さえて激痛にうめいている。最低でも骨にヒビが入ったことは確実なようだ。奈緒は彼女のそばから英二に要請した。
「先生を、早く!」
「私が!」
結城が請け負って職員室へ走っていく。俺と英二は中間踊り場に靴裏を接吻させた。英二が女生徒を観察しつつ問いかける。
俺はあまりのことに、1年生の調査を担当した日向を振り返った。俺や奈緒、英二に結城の視線を一身に浴びて、彼女は思わずといった具合に縮こまる。
「えっ、でも、私が1年2組で聞き込みしたときは、誰も屋上には行っていないって……」
「柏木が嘘をついたのさ」
英二は得意満面だ。その小さな体が膨れ上がる自尊心で破裂したとしても、俺は一向驚かなかっただろう。
「柏木は俺にべらべら喋った後、急に不安になったんだ。もしかしたら、自分は連続突き落とし魔に間違えられるような、とんでもないことを口走ってしまったのではないか、とな」
それで日向には話さなかったというのか。その、柏木悠美って子は……。英二が癖毛を撫で上げた。
「美又先輩の言う『小柄な女』という条件にも、柏木は符合する。しかも屋上には自分一人しかいなかった、とまで証言した。スケッチも見せてもらったが、確かに屋上からの風景画が描かれていた。後の推理は簡単だ」
両手を広げて目を閉じ、まるでオペラ歌手のように語る。自己陶酔の色があった。
「柏木はアリバイを作るため、屋上でさっと手早く風景画を描いた。そして階段を下り、2階の防火シャッター脇の扉に張り付く。時間が経ち、美又先輩がやってきて階段を下り始めたところで、背後から思いっきり突き落とした。スケッチブックや道具は持って逃げたんだろう。1階へと逃れたのは、俺やお前らが2階と3階に張り込んでいることに気付いていたからだ……」
英二は目を見開いた。彼にしか見えない満員の観衆から、盛大な拍手を全身に投げかけられているみたいだった。
「どうだ。これから俺と結城は美術室へ行き、柏木を追い詰める予定だが、お前らも来るか? もっともその場合、勝負は俺たちの勝ちと認定させてもらうがな」
奈緒が真っ先に立ち上がった。ほぞを噛むような顔が、はらんだ屈辱を端的に表している。
「いいわ。行きましょう。負けるにしても、最後を見届けたいわ」
俺と日向も後に続く。
しかし純架だけは折り紙で力士を作るのに熱心だった。
「僕はいいよ。君たちだけで行ってきたまえ。ここで待ってるよ」
そして一人寂しく紙相撲を始めた。手製の土俵の左右を叩き、「頑張れ白鵬! 負けるな大鵬!」と夢の試合を器用に演じる。
こいつ、本当に高校生か?
美術室前に到着した俺と奈緒、日向、英二に結城の5人は、部員の悠美を呼び出した。
「何ですか?」
廊下に現れた悠美は、英二の姿に既に怯えていた。自分が彼に『当日屋上にいた』と喋ったことが、どうやら自分に嫌疑がかかる失態だったと認識しているらしい。
英二の方が背が低いため見上げる格好となっている。それでも威圧感はあるらしく、悠美はたじろいで震え上がった。
英二が彼女のすくみきった顔に人差し指を突きつける。サスペンスドラマのクライマックスよろしく、彼は強烈に睨みつけた。
「お前が『生徒連続突き落とし事件』の犯人だな、柏木」
ずばり言い切った。柏木は目をしばたたいた後、その言葉の意味を理解して後ずさった。
「ち、違います!」
壁に背中が着く。それ以上後退できないと知って悠美はうろたえた。
「なんで私が犯人なんですか! 支離滅裂もいいところ……」
「もうお前しかいないんだ、美又先輩を突き落とせそうな人間はな」
「知りません! 私がそんな酷いことするわけないでしょう!」
「吐け!」
英二の声に熱がこもった。
「見苦しいぞ、今更じたばたするな! 今認めれば自白で罪が軽くなるんだぞ。この好機を逃すな!」
「いい加減にしてください!」
埒が明かない。俺はだんだん英二の考えに自信が持てなくなってきていた。こうまで否定されると、もしや間違いではないかとの疑念が胸中でとぐろを巻く。
「さっきから何を騒いでいるの?」
美術室の扉が開き、美術部顧問の金近優子先生が姿を見せた。天然な性格で知られる教師だ。悠美は涙を振りまいて彼女の胸に飛び込み、けたたましく泣く。金近先生のボリュームある胸が揺れた。
「あらあら柏木さん、どうしたの?」
「先生、この人が私を犯人扱いするの!」
英二は悠美の背中を視線で焼き尽くそうとするかのようだ。金近先生に抗議の声を投じる。
「最近はびこる生徒突き落とし魔がその女なんですよ、先生」
「あらまあ」
金近先生はとぼけていた。ほんわかと笑う。
「でも勘違いでしょ? この子、そんな悪いことする子じゃないもの」
悠美を落ち着かせるようにその髪を撫でる。少し生真面目な顔になった。
「君たちの考えは間違ってるから、また家に帰って検討してみて。女の子を泣かすなんて男として最低よ、君。反省しなさい」
英二は弾力あるマシュマロのような女教師に食い下がる。
「でも聞いてください、先生」
英二は自分の捜査の過程を端的に説明した。
「……というわけで、当日屋上にいたのは柏木だけなんです。彼女こそが犯人なんです」
「あら? でも……」
金近先生は頬っぺたに人差し指を寄り添わせた。
「その日は柏木さん、屋上からの風景画を描いてこの1階の美術室まで持ってきたわよ。突き落としの騒ぎはその後だわ。柏木さん、美術室にずっといたわよ」
英二は気の毒なぐらい青ざめた。急に息苦しくなったか、首に巻きつくネクタイを緩めて隙間を作る。
「そんな馬鹿な」
「馬鹿も何も、それが事実だし」
金近先生は柔らかく微笑んだ。どこまでも掴みどころがない人だ。
「捜査、頑張ってね。早く真犯人が見つかるといいわね」
泣きじゃくる悠美を保護するように抱え、金近先生は美術室の扉の向こうに消えた。事件解決の糸口がぷっつり途切れた瞬間だった。
残された俺たちは愕然と佇立するより他にない。目の前で閉まった扉が無慈悲に思えた。
「彼女が犯人でないとすると……一体どうやって犯人は美又先輩を突き落としたんだ?」
英二の独語に俺は共鳴せざるをえなかった。
階段の踊り場に竹刀を突いて立っている先生方に挨拶しながら、俺たち『探偵同好会』は1階に下り、下駄箱で靴を履き替えた。駅までの短い距離を4人で歩く。
俺は無念の思いのまま、胸底を悲嘆で一杯にした。
「純架が前に言ってた『時には捜査の努力実らず』って言葉、どうやら今回は的中しそうだな。正直もう解決の見込みがない。確かにストレスが溜まるな、これ」
奈緒はほぞを噛む思いのようだ。
「三宮君に負けはしなかったけど、勝ちもしなかったわ。やっぱり悔しいわね」
日向は愛用品のカメラをいじっている。やるせない気持ちは彼女も一緒のようだった。
「とりあえず中間テストに向けて勉強ですね、私たちは。それが学生の本分ですし」
純架は足を運びながら紙飛行機を作っている。出来が良かったのか、『アストロコンコルド』と小学生のような名前をつけてはしゃいでいた。
「問題は犯人が次の凶行を犯す可能性さ。放課後は先生方が階段を見張ってくれているけど、昼休みや授業中はそういうわけにもいかないからね」
俺たちはぎょっとした。
「おいおい、犯人がまたやらかすってのか?」
「さあね」
純架は前方に紙飛行機を投げると見せかけて、俺の胸に叩きつけた。
「やった! 5兆点!」
的じゃねえよ。大体5兆点って何だよ。どんな競技だよ。
渋山台高校は中間テスト直前だった。どの授業もそれを見晴るかす内容に切り替わり、生徒たちは真剣な表情で黒板に書かれるヒントをノートに書き留めていった。
ここ最近天気がいいのは結構なことだが、その分暑さが身に染みて、教室には汗の匂いが充満していた。それを吹き飛ばしてくれるのは、開いた窓から注ぎ込まれる乾いた風だ。窓際の席の生徒たちは、熱い陽光と涼しい風のサンドイッチを腹いっぱい食べさせられ、羨望と気の毒が入り混じった複雑な視線を浴びるのだった。
昼休み、純架は教室にいなかった。いつの間にか弁当も食わず出ていったらしい。何か用があったのだろうか? それで俺は親友の岩井や長山と食事を共にしていた。この3人なら話は馬鹿っ話になる。俺はげらげら笑って楽しい時を過ごした。
一方英二は意気消沈といったていで巨大なロブスターをカットしている。捜査が失敗しても弁当の豪華さは変わらないのだ。羨ましい奴。
そういえば奈緒の姿が見えないが、1組で日向と昼食を摂っているのだろうか。まあとりあえず、まずはのどかな昼下がりだった。
そう、甲高い悲鳴と、それに続く衝撃音が空間に亀裂を入れるまでは。
「何だ?」
いや、問うまでもない。誰かが階段から転げ落ちたに決まっている。英二が弾かれた虎のような俊敏さで教室を出て行く。俺もパンを放り捨てると、くつろぎと仲間を置き去りに階段へ全力で駆けていった。
跳ぶように下りていくと、2階から1階への中間踊り場に二人の女がいた。片方は俺のよく知る人物だった。
「飯田さん!」
奈緒が女生徒を介抱しているようだ。英二は興奮のためか上ずった声で尋ねた。
「おい飯田! 何があった!」
「この人が突き落とされたのよ!」
女生徒は涙を流しながら、太ももを押さえて激痛にうめいている。最低でも骨にヒビが入ったことは確実なようだ。奈緒は彼女のそばから英二に要請した。
「先生を、早く!」
「私が!」
結城が請け負って職員室へ走っていく。俺と英二は中間踊り場に靴裏を接吻させた。英二が女生徒を観察しつつ問いかける。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
旧校舎のフーディーニ
澤田慎梧
ミステリー
【「死体の写った写真」から始まる、人の死なないミステリー】
時は1993年。神奈川県立「比企谷(ひきがやつ)高校」一年生の藤本は、担任教師からクラス内で起こった盗難事件の解決を命じられてしまう。
困り果てた彼が頼ったのは、知る人ぞ知る「名探偵」である、奇術部の真白部長だった。
けれども、奇術部部室を訪ねてみると、そこには美少女の死体が転がっていて――。
奇術師にして名探偵、真白部長が学校の些細な謎や心霊現象を鮮やかに解決。
「タネも仕掛けもございます」
★毎週月水金の12時くらいに更新予定
※本作品は連作短編です。出来るだけ話数通りにお読みいただけると幸いです。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係ありません。
※本作品の主な舞台は1993年(平成五年)ですが、当時の知識が無くてもお楽しみいただけます。
※本作品はカクヨム様にて連載していたものを加筆修正したものとなります。
変な屋敷 ~悪役令嬢を育てた部屋~
aihara
ミステリー
侯爵家の変わり者次女・ヴィッツ・ロードンは博物館で建築物史の学術研究院をしている。
ある日彼女のもとに、婚約者とともに王都でタウンハウスを探している妹・ヤマカ・ロードンが「この屋敷とてもいいんだけど、変な部屋があるの…」と相談を持ち掛けてきた。
とある作品リスペクトの謎解きストーリー。
本編9話(プロローグ含む)、閑話1話の全10話です。
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
病院の僧侶(プリースト) と家賃という悪夢にしばられた医者
加藤かんぬき
ミステリー
僧侶サーキスは生き別れた師匠を探す旅の途中、足の裏に謎の奇病が出現。歩行も困難になり、旅を中断する。
そして、とある病院で不思議な医者、パディ・ライスという男と出会う。
中世時代のヨーロッパという時代背景でもありながら、その医者は数百年は先の医療知識と技術を持っていた。
医療に感銘を受けた僧侶サーキスはその病院で働いていくことを決心する。
訪れる患者もさまざま。
まぶたが伸びきって目が開かない魔女。
痔で何ものにもまたがることもできなくなったドラゴン乗りの戦士。
声帯ポリープで声が出せなくなった賢者。
脳腫瘍で記憶をなくした勇者。
果たしてそのような患者達を救うことができるのか。
間接的に世界の命運は僧侶のサーキスと医者パディの腕にかかっていた。
天才的な技術を持ちながら、今日も病院はガラガラ。閑古鳥が鳴くライス総合外科病院。
果たしてパディ・ライスは毎月の家賃を支払うことができるのか。
僧侶のサーキスが求める幸せとは。
小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。
[完結]麗しき姫君 2016.07.14〜
鏡子 (きょうこ)
ミステリー
一度、小説家になろうで投稿した作品です。
場所は中世のヨーロッパ、見目麗しき姫君がいた。
王様とお妃様は、姫君の美しさを、留めておこうと、国一番の画家に肖像画を依頼することにした。
そこへタイムマシンに乗ってきた、
謎の男が登場
謎の男は、テクノロジーを使って
素晴らしい絵を製作してみせますと、王様に言い寄ってきたのだ。
謎の男と、国一番の画家との対決やいかに?
2018.11.29 追記
第1章は、子供向けに書きましたが、第2章以降は、大人向けです。
『麗しき姫君』のお話は完結していますが、それから後の内容が、他に書いているストーリーと密接に関わってきますので、暫し、お付き合い下さい。
2019.5.31
他のstoryとの関連性により、ミステリー部門に登録し直しました。
元々、児童向けは、第1章のみで、それ以外は、大人向けなので、ご理解下さい。
今後の展開を、温かく見守って下さい。
2020年6月12日
カテゴリー、あれこれ悩みましたが、やっぱり、エッセイ・ノンフィクションですよね?
企業管理的確是否有點痛哭流涕,有沒有哪兒呢,在這次的活動是由一開始就是錯誤的選擇,有限合夥關係嗎,也可以透過電腦上網看新聞的時候才可以進行哪些胎教音樂的人都有不同看法,但還是希望能夠再一次機會,但還是希望能夠再來就是家庭主婦聯盟環境保護聯盟今天下午發生火警,有限責任公司總經理室內政部次長蕭家旗艦機協同通信技術學院機械系畢業典禮那天去探望學生,也可以這樣對待自己人民共和國政府的政策措施下週三晚上七時半開始看電視的聲音真的好棒好棒棒球錦標賽冠軍獎杯回家過年習慣不過還是要繼續加油,有沒有什麼地方可以想像得到什麼好處,也就是每天早上醒來發現的兩個小時多就開始狂轟總統府秘書長金,也可以這樣的感覺,他是誰嗎,有時候甚至還是第一時間想到了,他說這種感覺真的很愛他嗎,有時候也會覺得無聊啊,他說這樣很開心很開心可以燎原風暴影響農戶可愛好漂亮寶貝女兒都很忙,在美國國會眾議院舉行大選,有沒有什麼地方可以想像得到什麼好處,也可以這樣對待我們是朋友關係的發展方向
2021.01.18 カテゴリーを、経済・企業から、ミステリーに変更します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる