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新プロジェクトとニューチューバー
第43話 心愛と変化
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火曜日の朝、11月も終盤に差し掛かっているからだろうか空気がかなり冷たくなってきた。
いつも通勤時に出会う人達も秋服から冬服へと移行しており、街の至る所でイルミネーションの飾りが見受けられる。
……冬か。
俺はどちらかと言うと、冬よりも夏の方が好きなんだよなぁ。
そんな風な事を考えていると、いつもの商店街入り口地点へと到着した。
「おはようです!神谷さん」
「おお心愛、おはよ。今日はマフラー付けてるんだな」
「あの神谷さんがそんなところに気づくなんて……成長しましたね。よしよし」
「誰だって気づくだろ。つか頭撫でんな」
「前までの神谷さんだったら絶対気づいてませんね。撫でます」
「ふふ……余裕で気づいてるな。細かいところによく気が付くと会社の上司に褒められた事があるんだぜ。撫でるな」
「じゃあ、マフラー以外に私が前と違うところはどこだかわかりますか?撫でまくります」
少し挑発気味に俺へ問題を出してくる心愛。
ここでマウントでも取って、俺の事を良いように弄ぶ気だろう。
だがそうはさせん。
所詮は女子高生が出す問題に過ぎない。
変化など毎日心愛と会っている俺ならすぐにわかるはずだ。
……
……
やばい、全くと言っていいほど違いがわからない。
髪の長さ、身長、容姿、体重……ん、体重?
「……体重か?」
「殴りますよ」
「悪い、冗談だ」
「なら冗談ではなく、ちゃんとした回答をお願いします」
「少し時間をくれ」
「駄目です。別の話もしたいので早く答えてください」
「……全くわからん」
「はぁ……まだまだ私の特訓が必要みたいですね」
「よろしく……頼む……」
……屈辱的敗北だ。
これほどまでの屈辱を味わったのは始めて……ではないか。
そんなものは何度も味わってるな。
誇れることではないが。
「そうそう神谷さん、昨日はすごくお楽しみだったみたいですね」
「なんだその浮気を疑ってる人妻的発言は」
「そりゃあんなハイテンション馬鹿丸出しLimeを夜の22時に送られてきちゃったら、そう思うのも無理ないと思いますよ」
「あれは……その……悪かったな。アルコールのせいでおかしくなってたんだ」
「ふーん、お酒のせいだったんですね。『心愛ちゃーん!!早見ちゃんのおかげで企画が決まったぞ~~。やっぱ早見ちゃんはすげーーらーー!!まあ俺もかなり頑張ったんられろ、早見ちゃんに全部持ってかれたわーー!!美久も美久で良い子だし、今日は楽しゅうございやした!心愛ちゃーんおやすみーー』と送られてきましたけど、これは間違いなく神谷さんが意図して送ったものではないと?」
「あの……音読するのやめてもらえるか?めちゃくちゃ恥ずかしくて変な汗が出てきたから」
俺は必死に心愛を宥めて、何とか機嫌を直してもらった。
昨日は色々と疲れが溜まっていたのだろう、普段なら全然大丈夫な量の酒を飲んだのだがかなり酔ってしまった。
そのせいで心愛に対し、馬鹿みたいなLimeを送るという大失態を犯したのだ。
本当に情けない。
お酒の飲み方について心愛からもチクチクと嫌味な注意をされてしまった。
まだ酒も飲んだことのない女子高生に注意をされるなんて、見本となるべき大人として面目ねえ。
そんなショックを受けている時、心愛が真剣な表情で何かを伝えようとしてきた。
「神谷さん、今から大事な事を言うのでよく聞いておいてください」
「……何だ?」
「お酒は飲んでも飲まれるな……ですよ」
「素晴らしい言葉だ。肝に銘じておこう」
「よろしい」
満足そうな心愛の表情とは裏腹に、俺はかなり疲弊しきったメンタルズタボロ30代のような表情をしていると思う。
「んじゃ、そろそろ行くとするか」
「あ、ちょっと待ってください」
「どうした?」
心愛が手に持っていたスクール鞄の中から、何かを取り出そうとする。
「はい、差し入れです!」
「……ああ、久しぶりだな。今日のは何だ?」
「マカロンです!結構甘いので、苦手な人が多いかもです」
「そうなのか。俺はかなりな甘党だから、好物入りするかもな」
「是非そうなって欲しいですね!」
こうして、俺は心愛からの差し入れであるマカロンを持って会社へと向かった。
いつも通勤時に出会う人達も秋服から冬服へと移行しており、街の至る所でイルミネーションの飾りが見受けられる。
……冬か。
俺はどちらかと言うと、冬よりも夏の方が好きなんだよなぁ。
そんな風な事を考えていると、いつもの商店街入り口地点へと到着した。
「おはようです!神谷さん」
「おお心愛、おはよ。今日はマフラー付けてるんだな」
「あの神谷さんがそんなところに気づくなんて……成長しましたね。よしよし」
「誰だって気づくだろ。つか頭撫でんな」
「前までの神谷さんだったら絶対気づいてませんね。撫でます」
「ふふ……余裕で気づいてるな。細かいところによく気が付くと会社の上司に褒められた事があるんだぜ。撫でるな」
「じゃあ、マフラー以外に私が前と違うところはどこだかわかりますか?撫でまくります」
少し挑発気味に俺へ問題を出してくる心愛。
ここでマウントでも取って、俺の事を良いように弄ぶ気だろう。
だがそうはさせん。
所詮は女子高生が出す問題に過ぎない。
変化など毎日心愛と会っている俺ならすぐにわかるはずだ。
……
……
やばい、全くと言っていいほど違いがわからない。
髪の長さ、身長、容姿、体重……ん、体重?
「……体重か?」
「殴りますよ」
「悪い、冗談だ」
「なら冗談ではなく、ちゃんとした回答をお願いします」
「少し時間をくれ」
「駄目です。別の話もしたいので早く答えてください」
「……全くわからん」
「はぁ……まだまだ私の特訓が必要みたいですね」
「よろしく……頼む……」
……屈辱的敗北だ。
これほどまでの屈辱を味わったのは始めて……ではないか。
そんなものは何度も味わってるな。
誇れることではないが。
「そうそう神谷さん、昨日はすごくお楽しみだったみたいですね」
「なんだその浮気を疑ってる人妻的発言は」
「そりゃあんなハイテンション馬鹿丸出しLimeを夜の22時に送られてきちゃったら、そう思うのも無理ないと思いますよ」
「あれは……その……悪かったな。アルコールのせいでおかしくなってたんだ」
「ふーん、お酒のせいだったんですね。『心愛ちゃーん!!早見ちゃんのおかげで企画が決まったぞ~~。やっぱ早見ちゃんはすげーーらーー!!まあ俺もかなり頑張ったんられろ、早見ちゃんに全部持ってかれたわーー!!美久も美久で良い子だし、今日は楽しゅうございやした!心愛ちゃーんおやすみーー』と送られてきましたけど、これは間違いなく神谷さんが意図して送ったものではないと?」
「あの……音読するのやめてもらえるか?めちゃくちゃ恥ずかしくて変な汗が出てきたから」
俺は必死に心愛を宥めて、何とか機嫌を直してもらった。
昨日は色々と疲れが溜まっていたのだろう、普段なら全然大丈夫な量の酒を飲んだのだがかなり酔ってしまった。
そのせいで心愛に対し、馬鹿みたいなLimeを送るという大失態を犯したのだ。
本当に情けない。
お酒の飲み方について心愛からもチクチクと嫌味な注意をされてしまった。
まだ酒も飲んだことのない女子高生に注意をされるなんて、見本となるべき大人として面目ねえ。
そんなショックを受けている時、心愛が真剣な表情で何かを伝えようとしてきた。
「神谷さん、今から大事な事を言うのでよく聞いておいてください」
「……何だ?」
「お酒は飲んでも飲まれるな……ですよ」
「素晴らしい言葉だ。肝に銘じておこう」
「よろしい」
満足そうな心愛の表情とは裏腹に、俺はかなり疲弊しきったメンタルズタボロ30代のような表情をしていると思う。
「んじゃ、そろそろ行くとするか」
「あ、ちょっと待ってください」
「どうした?」
心愛が手に持っていたスクール鞄の中から、何かを取り出そうとする。
「はい、差し入れです!」
「……ああ、久しぶりだな。今日のは何だ?」
「マカロンです!結構甘いので、苦手な人が多いかもです」
「そうなのか。俺はかなりな甘党だから、好物入りするかもな」
「是非そうなって欲しいですね!」
こうして、俺は心愛からの差し入れであるマカロンを持って会社へと向かった。
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