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新プロジェクトとニューチューバー
第29話 心愛とタックトック
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俺は今、心愛と一緒に若者の聖地【シブヤ】へとやって来ている。
心愛のアドバイスのおかげで早見ちゃんとは良い感じの距離感を保てているし、今日はとことん付き合ってやりたいと思っているのだが……。
「な……何だこの人の量は……」
駅の中もそうだったが、駅の外はそれ以上に若者で溢れていた。
右も左もお洒落でキラキラしている若者たち。
自分では絶対に真似出来ない独特なファッションで身を包み、スマホの前で踊りを踊ったり写真を撮ったりしている。
「神谷さんもタックトック撮ってみます?」
心愛がニコッと微笑みながらスマホの画面を見せてくる。
そこにはタックトックと書かれたアプリが表示されていた。
「いや、遠慮しておく」
「ええ~~、絶対バズると思ったんですけど」
「こんなもん公開処刑だろ」
「若者の流行を経験する事も、神谷さんが成長するために必要な事ですよ?」
心愛がドヤっとした表情で、俺に訴えかけてきた。
しかし、こんな何百何千人が居る中で30歳の男が女子高生と訳の分からん踊りを踊るなんて想像しただけでも死にたくなる。
「悪いな。俺の成長プランに若者の流行は含まれていないみたいだ」
「そうやって新しい事へのチャレンジをしないまま、ずっと死ぬまで生活していくんですか?」
「それは……、いつかはやると思う」
「いつかはやる明日からやる。この類の言葉を使う人で、実際に行動へ移している人を私は見たことがないです」
全くその通りだと、不覚にも思ってしまった。
俺は小さい頃から嫌な事やめんどくさい事はいつでも後回しにして、結局やらずに逃げると言う選択ばかりをとってきていた。
そんなクソみたいな大人の姿を、俺のファンである心愛にこれ以上晒すわけにはいかないんじゃないか?
それに、いつまでも古い考えでは仕事や恋愛においても苦労するだろうしこの辺りでタックトックとやらをちょこっとやってみるのも悪くなさそうだよな。
「ようし分かった。心愛にそこまでお願いされては、これ以上断るのも大人としてちとあれだからやってやるよ」
「え?急にどうしたんですか?あっそっか。本当の事を私に言われて、神谷さんなりに少しでも変わろうと一歩を踏み出し始めたんですね」
「おいおい。勝手に答えを出して納得してんじゃないよ。……まあ、間違ってはないんだが」
「間違ってはないんですね。神谷さんのそう言う単純で素直な所が可愛いです」
は?可愛い?何これドキッとするんですけど。
女子高生から可愛いって言われて照れる30歳……普通にやばすぎだろ。
「んで、何をどうすればいいんだ?」
「そうですね。あの女の子達が移動しそうなので、あそこで撮りましょうか」
「お……おう」
ブレザーを着た女子高生三人組がタックトックを撮り終え移動したので、俺達は他の人に場所を取られないよう急いでお洒落なベンチ前へとやって来た。
すると心愛が手際よくスマホの設置をし、俺へ指示を飛ばしてくる。
「さあ神谷さん、あのスマホのカメラに向かって踊ってください」
「いやいや、俺この曲知らねえし振り付けもわからんぞ」
「そんなのフィーリングですよ。神谷オリジナルでバズらせましょー!」
「うわぁ。それ絶対バズらねえやつだわ。どちらかと言うと、心愛オリジナルの方がバズると思うぞ」
「か、神谷さんにしては目の付け所がいいですね。仕方ないので私が神谷さんの為に可愛い可愛い振り付けを考えてあげます」
「可愛すぎるのは俺のイメージに反するのでやめてくれ」
「そんなイメージどうでもいいので無理です」
そう言うと心愛が、タックトックの曲に合わせてダンスを始めた。
何パターンかの振り付けが決まり、心愛が満足そうな表情を浮かべて俺の座っているベンチの隣に座る。
「お疲れ」
「ちゃんとみてました?」
「ああ。心愛はダンスも上手いんだな」
「まあ私も、今どき女子ってやつですから」
「よ!今どき女子!」
「神谷さん……茶化してます?」
「す、すまん」
そんなやりとりをした後、心愛が一番気に入った振り付けを叩き込まれた。
女子高生からダンスのスパルタ特訓を受ける30歳男性って、周りから見たらどんな感じなのだろうか。
俺は周りの人の視線が怖すぎて、ほぼほぼ下を向きながらダンスを行った。
「さて神谷さん、そろそろ本番いきますよ」
「お……おう」
「何ですかその覇気のない返事は」
「……そうか?」
「まあ覇気がないのはいつもの事ですよね。目なんて死んだ魚のようですし、好きな人にはなかなか告白出来ないヘタレ……これ以上は可哀想なのでやめときます」
「もう手遅れだ。かなりダメージは入ってるぞ」
「あははは。気を取り直してタックトックスタート!てへ」
「てへやめろ」
こうして俺と心愛は超キュートで超ハッピーなダンスをシブヤ駅近くにある広場で全力で行った。
そして色々と心愛の手で編集が加わったダンス動画は、タックトックへと投稿されていった。
心愛のアドバイスのおかげで早見ちゃんとは良い感じの距離感を保てているし、今日はとことん付き合ってやりたいと思っているのだが……。
「な……何だこの人の量は……」
駅の中もそうだったが、駅の外はそれ以上に若者で溢れていた。
右も左もお洒落でキラキラしている若者たち。
自分では絶対に真似出来ない独特なファッションで身を包み、スマホの前で踊りを踊ったり写真を撮ったりしている。
「神谷さんもタックトック撮ってみます?」
心愛がニコッと微笑みながらスマホの画面を見せてくる。
そこにはタックトックと書かれたアプリが表示されていた。
「いや、遠慮しておく」
「ええ~~、絶対バズると思ったんですけど」
「こんなもん公開処刑だろ」
「若者の流行を経験する事も、神谷さんが成長するために必要な事ですよ?」
心愛がドヤっとした表情で、俺に訴えかけてきた。
しかし、こんな何百何千人が居る中で30歳の男が女子高生と訳の分からん踊りを踊るなんて想像しただけでも死にたくなる。
「悪いな。俺の成長プランに若者の流行は含まれていないみたいだ」
「そうやって新しい事へのチャレンジをしないまま、ずっと死ぬまで生活していくんですか?」
「それは……、いつかはやると思う」
「いつかはやる明日からやる。この類の言葉を使う人で、実際に行動へ移している人を私は見たことがないです」
全くその通りだと、不覚にも思ってしまった。
俺は小さい頃から嫌な事やめんどくさい事はいつでも後回しにして、結局やらずに逃げると言う選択ばかりをとってきていた。
そんなクソみたいな大人の姿を、俺のファンである心愛にこれ以上晒すわけにはいかないんじゃないか?
それに、いつまでも古い考えでは仕事や恋愛においても苦労するだろうしこの辺りでタックトックとやらをちょこっとやってみるのも悪くなさそうだよな。
「ようし分かった。心愛にそこまでお願いされては、これ以上断るのも大人としてちとあれだからやってやるよ」
「え?急にどうしたんですか?あっそっか。本当の事を私に言われて、神谷さんなりに少しでも変わろうと一歩を踏み出し始めたんですね」
「おいおい。勝手に答えを出して納得してんじゃないよ。……まあ、間違ってはないんだが」
「間違ってはないんですね。神谷さんのそう言う単純で素直な所が可愛いです」
は?可愛い?何これドキッとするんですけど。
女子高生から可愛いって言われて照れる30歳……普通にやばすぎだろ。
「んで、何をどうすればいいんだ?」
「そうですね。あの女の子達が移動しそうなので、あそこで撮りましょうか」
「お……おう」
ブレザーを着た女子高生三人組がタックトックを撮り終え移動したので、俺達は他の人に場所を取られないよう急いでお洒落なベンチ前へとやって来た。
すると心愛が手際よくスマホの設置をし、俺へ指示を飛ばしてくる。
「さあ神谷さん、あのスマホのカメラに向かって踊ってください」
「いやいや、俺この曲知らねえし振り付けもわからんぞ」
「そんなのフィーリングですよ。神谷オリジナルでバズらせましょー!」
「うわぁ。それ絶対バズらねえやつだわ。どちらかと言うと、心愛オリジナルの方がバズると思うぞ」
「か、神谷さんにしては目の付け所がいいですね。仕方ないので私が神谷さんの為に可愛い可愛い振り付けを考えてあげます」
「可愛すぎるのは俺のイメージに反するのでやめてくれ」
「そんなイメージどうでもいいので無理です」
そう言うと心愛が、タックトックの曲に合わせてダンスを始めた。
何パターンかの振り付けが決まり、心愛が満足そうな表情を浮かべて俺の座っているベンチの隣に座る。
「お疲れ」
「ちゃんとみてました?」
「ああ。心愛はダンスも上手いんだな」
「まあ私も、今どき女子ってやつですから」
「よ!今どき女子!」
「神谷さん……茶化してます?」
「す、すまん」
そんなやりとりをした後、心愛が一番気に入った振り付けを叩き込まれた。
女子高生からダンスのスパルタ特訓を受ける30歳男性って、周りから見たらどんな感じなのだろうか。
俺は周りの人の視線が怖すぎて、ほぼほぼ下を向きながらダンスを行った。
「さて神谷さん、そろそろ本番いきますよ」
「お……おう」
「何ですかその覇気のない返事は」
「……そうか?」
「まあ覇気がないのはいつもの事ですよね。目なんて死んだ魚のようですし、好きな人にはなかなか告白出来ないヘタレ……これ以上は可哀想なのでやめときます」
「もう手遅れだ。かなりダメージは入ってるぞ」
「あははは。気を取り直してタックトックスタート!てへ」
「てへやめろ」
こうして俺と心愛は超キュートで超ハッピーなダンスをシブヤ駅近くにある広場で全力で行った。
そして色々と心愛の手で編集が加わったダンス動画は、タックトックへと投稿されていった。
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