サラリーマンが女子高生を救ったら、女子高生がサラリーマンのファンになってしまった。人生まだまだ捨てたもんじゃない。

チョコズキ

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ファン第一号と片思いの相手

第18話 浮かれ男と二日酔い

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 俺は今、翔と一緒に夜の居酒屋で酒を飲んでいる。
 既に二人とも相当酔っており、高笑いを上げながら肩を組んでいた。

 「アハハハハ!今日は俺の奢りだ!どんどん飲んでくれ!」
 「何だよ悟!そんなに良い事あったのかよー!アハハハハ!」
 「まあな!今日は祝杯だぜーーー!」

 俺たちは上機嫌でどんどん深酒をしていった。
 これぞまさしく最高の夜だ。

 だが、こんな状態になったのにはしっかりとした理由がある。
 それが例の件だ。

 心愛からのアドバイスを受け取った俺は、昼休憩に翔からあの事について聞き出した。

 アドバイス通りに話を進めていくと、全く怪しまれずスムーズに話を聞き出す事が出来たのだ。
 あれだけ悩んでいたのが馬鹿みたいに思えた。

 まあ今となっては結果論だが。

 それで、ずっと悩まされていた問題から解放された事が嬉しくて、この有り様と言うわけだ。

 「朝までコースだーーーー!」
 「とことん付き合うぜ悟ーーーー!」

 ジョッキに入ったビールを浴びる様に呑み続ける男たち。
 次の日の仕事の事なんてこの時は微塵も考えてはいなかったのだ。

 そしてその日、俺たちはぶっ倒れるまで呑み続けた。
 翔に関しては、何に俺が浮かれていたのかも分からないままずっと付き合ってくれていたのだ。

 本当いい奴だよ。

 ありがとう翔。
 ありがとう心愛。

 これで俺は、何とか早見ちゃんとの約束を守る事が出来たぜ。


 ◇◇◇◇


 次の日の朝、俺は完全に二日酔いになっていた。
 気分の悪さと寝不足、おまけに頭がガンガンと痛い。

 「やらかしたなぁ」

 ベットの上で後悔に苦しんでいた。
 そして最悪な体調のせいで、なかなか準備に取り掛かれないでいる。

 やばい……。
 このままでは完璧に遅刻だ。

 それに心愛との待ち合わせ……。

 枕元に置いてあったデジタル時計を見る。

 駄目だ、既にギリギリだ。

 俺はひとまず会社に連絡を入れて、直ぐに準備をし始めた。
 時間も時間なのでもう心愛はいないだろうと思いながらも、急いで商店街入り口地点へと向かう。

 たぶん俺の中で、少しでいいから心愛と話したいって気持ちがあったのだろう。

 ハァハァハァハァ。

 ゼェゼェゼェゼェ。

 全不調の体と、ジリジリと照りつける太陽のせいでいつもよりもへばるのが早い。

 こんなに遠かったっけ……。
 自分の家からさほど離れてもいない商店街が、かなりの距離に感じている。

 これは重症だな。

 必死に走り続けて、やっと待ち合わせ場所に辿り着いた。
 そして腕時計を確認する。

 時間は既に、30分以上も過ぎてしまっていた。

 すまない心愛。

 必死に走って疲れてしまった事と、心愛に会えなかったショックでその場に俺はしゃがみ込んだ。

 すると、誰かが近寄ってきた気配がした。

 「おはようです!神谷さん」

 この声に、この話し方。
 間違いない、心愛だ。

 ゆっくりと顔を上げ、相手の顔を確認する。

 そこには、少し心配そうな表情を浮かべている心愛が立っていた。

 「おはよ……心愛」
 「どうしたんですか?キングコングと偶然にも遭遇してしまった時の顔をしてますけど」
 「どんな顔だよ!て言うかキングコングと遭遇って、絶対あり得ないだろ!あんな怪物がこのリアルの世界にやって来たら、世界は一瞬で滅ぶぞ」
 「長々とツッコミをありがとうございます。これでいつもの神谷さんだと証明されました」
 「意味不明な証明法を考え出すのも、それを俺で実践するのもやめてくれないか」

 会って早々に、心愛は俺の事をおちょくってきた。
 しかし、それが嬉しかった。

 言葉には表せない妙な感情が、俺の中であったのだ。
 決してドMとかではないので、そこは安心して欲しい。

 「それで、どうしてこんな時間に心愛がいるんだよ」

 俺は立ち上がり、心愛に疑問を投げかけた。

 「だって神谷さんが、いつまで待っても来ないから心配で」
 「それは……悪かったな」
 「本当ですよ!どれだけ心配したと思っているんですか!」

 心愛が頬を膨らませながら、強く言ってくる。
 こんな心愛は初めて見た。

 本気で俺の事を心配してたと言う事が、心愛の真剣さからとても伺えた。

 「昨日ちょっと呑み過ぎてな」
 「確かに、少しお酒臭いです」
 「だよな。少し離れるわ」
 「別に大丈夫ですよ?」
 「俺が嫌なんだ。女子高生に酒の匂いって、悪影響だろ」

 あまり心愛には、酒の匂いと言うものを嗅がせたくはなかった。
 まだまだ純粋な高校生だしな。

 酒だのたばこだのは、心愛には無縁でいて欲しいと俺の中で勝手に思ってしまった。
 勝手な親心と言う物だ。

 「そう言うところ、神谷さんって優しいですよね」
 「別に、当たり前の事をしているだけだ」
 「またまた、褒められて照れてますね」
 「照れてねえよ!子供に褒められて照れる大人がどこにいるってんだよ」
 「ここにいます♪」
 「俺には見えねぇ」

 そんなやり取りをした後、昨日の事を心愛に報告した。
 そしたら心愛は自分の事のようにすごく喜んでくれて、俺たちはとてもいい気分に浸っていたのだが……。

 そんな時、俺がふと左腕に付けていた腕時計を確認する。
 その瞬間、一気に自分の置かれた状況を思い出した。

 「やばい!話に夢中になっていて、遅刻している事を忘れていた!」
 「神谷さんドジ過ぎです!」
 「心愛はどうなんだ!この時間なんだからもう学校始まってるだろ」
 「てへ♪」
 「てへやめろ!つか誤魔化すな!」

 俺たちは大急ぎで会社と学校へ向かう事となった。
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