禁断の青い果実

みのる

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束の間。そして………

ー夕飯時ー

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『ただいまー!』

仕事から帰ってきた「ヤツ」。

『聖人さん♡おかえりなさい♡』

今日は仕事が休みであった真希さんは、夕飯を作る手を休めてバタバタと玄関へ向かう。

『イィ匂いがするね?
本当にカレーにしてくれたんだ♪』

玄関からヤツの声が近づいてくる。
真希さんの声も後に続く。

『だって、聖人さんが食べたいって言ったから♡』

真希さんの会話の中の♡がいちいちうっとおしい。


『家族』で何度目かの夕飯を囲む。

カレーに、簡単なサラダ。

真希さんは料理は得意な方ではないようではあるが、いつもその懸命さは食卓より伝わってくる。


『おやまぁ、今日はカレーかね?』

ばぁちゃんも嬉しそうに席に座る。


『『『『いただきます。』』』』

その食卓で………辛口のカレーを食いながら、おれは真希さんに質問する。


『ねぇ………
おれたちの名字、変わらねぇの?』


そこで真希さんから少しだけ焦りを感じた。
   

『い、今は「夫婦別姓」が流行ってるでしょ?
だ、だから名字はそのまんまにしとこうと思って!』

もうひとつ、付け足した。

『ふぅん………
で、どうでもいいけどおれ……
実は「甘口派」なんだけど……
その情報は元・母ちゃんから来なかったの?』

すると更に!ウロタエる真希さん。

『え!ごめん、
それは陽香から聞いてなかった!!
次から気をつけるから……』


おれは、遂に初めてヤツと会話をする。

『ところで、聖人さん……だっけ?
「課長さん」なんだろ?
なのになんでいつも「普段着」なんだ?』

今度は聖人とやらもウロタエてシドロモドロとおれに返す。

『ぼっ………僕は!建設業の課長だからっ………!
仕事場で作業着に着替えてるんだ!』


ウソクセェ………


『まぁ、せっかく美味い夕飯を皆でいただいてるんだ。
楽しい話でもしようじゃないか?』


そう言いながら聖人とやらも口に運ぶスプーンのスピードが進んでいないようだ。

もしかして……ヤツも「甘口派」なのか?



ばぁちゃんだけはタダ、黙々とカレーを口に運んでいた。
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