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獅子戸 直也
初恋 1
しおりを挟む「おっきくなったら、ぼくのおよめさんになってくれる?」
俺がまだ幼稚園の年中だった頃、父親の仕事の都合で引越しをした。
流石に幼すぎて当時の記憶はほとんど無いけど、一つだけ、忘れられないことがある。
引越した先で、すぐ近所に住んでいた一つ年上の男の子。
通う幼稚園が同じで、同じ園バスに乗るようになってからすぐに仲良くなり、帰宅してからも毎日のように一緒に遊んでいた。
俺達が通っていた幼稚園には制服があり、夏から秋に変わる頃と冬から春に変わる頃に衣替えがあった。
俺が転園した頃は春で、みんな上下体操服姿で登園していたから、初めのうちはその子のことをずっと女の子だと思っていた。
だけど夏から秋へと季節がかわり、上下体操服姿から上下指定の制服姿で登園するようになると、女の子だと思っていたその子が男の子の制服を着ていてびっくりしたのを今でも覚えてる。
まぁでも、相手が男だとか女だとかは関係なかった。
そもそも子供だからよく分かってなかったし。
まだ生まれて4年程度しか経ってないガキが何を生意気な、と自分でも思うけど、真っ白でぷくぷくとしたほっぺたに笑うと浮かぶ左右非対称なえくぼが他の子と違っていてすごく可愛くて、慣れない環境で戸惑う俺に優しくしてくれて、大好き、ひとりじめしたい、という特別な感情が芽生え、母親と一緒に見た恋愛モノのテレビドラマから得た知識で、これが恋なのだと
気付くのにそう時間はかからなかった。
そしてそれは、彼も同じだったと思う。
ある時、いつものように二人でその子の家で遊んでいた時のこと。
家族ごっこしよ~というその子の誘いに乗って、俺がお父さん役、その子がお母さん役、その子のお気に入りのぬいぐるみが子供役をやることになった。
おもちゃのおままごとセットを使って料理を作り、俺の前ににんじんとじゃがいもとりんごと目玉焼きが入ったスープを差し出したその子がにっこり笑って、「めしあがれ?」と言った瞬間。
子供ながらに俺達二人の将来が見えた気がして、俺はその子の両手を握り、プロポーズをした。
その時のその子の顔が今でも脳に焼き付いて離れない。
おっきなタレ目をまん丸に見開いたあと、ぷくぷくのほっぺをピンクに染めてふわっと嬉しそうに笑ったその子は、確かに、「うん」と言ってくれた。
嬉しかった。
これでこの子はぼくだけのものなんだ。
誰にもとられないんだ。
そう思った。
…でも俺は、その数ヶ月後、また父親の仕事の都合で遠い街へと引っ越すことになった。
その場所で俺は高校卒業までの時間を過ごして、中学生の頃には初めて恋人が出来た。
あの子と同じ、タレ目で真っ白な肌の女の子。
だけど、長くは続かなかった。
その後も中学時代に2人の女の子と付き合ったけどどちらともすぐに別れてしまい、高校に入ってからは女6人男4人と付き合ったけど、一番長くても半年程度しか続かなかった。
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