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佐々木 智久・菅原 玲弥
目覚めた場所は
しおりを挟む──いいにおい。なんのにおいだろう?それになんだか、すごくふわふわしてて気持ちいい…。
「………ん」
「よかった、気がついた」
重たいまぶたをゆっくりと持ち上げると、見知らぬ部屋の天井が目に入る。
ここは一体どこだろうと視線を巡らせると、おれの髪を撫でているレイさんと目が合ってにっこりと微笑みかけられた。
「……れいさん…ここは…?」
「俺達の家だよ。ひなくん、急に倒れちゃったから休ませなきゃと思って、一緒にタクシーに乗せて連れて来たんだ。STSのベッドの部屋は撮影で使われちゃってたから」
クソ野郎共から助けてもらっただけでなく、そんなご迷惑までおかけしていたとは。
物凄く申し訳なく思えてきて、「すみませんでした」と謝ると、レイさんは「いいんだよ」とまたにっこり微笑んで頭をぽんぽんしてくれた。
「気分はどう?熱は無いみたいだったから、きっと混乱しちゃったのかな」
「…はい、そうだと思います。でも、今はもう大丈夫です。ありがとうございました」
「それなら良かった。起き上がれる?今トモがミルクティーいれてくれてるから行こう」
レイさんに背中を支えられて起き上がり、ゆっくりとベッドから降りると、レイさんはおれの手を引いてリビングへと連れて行ってくれた。
広々としたリビングは、あまり物は多く置かれていなかったけれど、一つ一つの家具がセンスが良くて、きっとどれも高価なんだろうな…というのが素人目にも分かる。
そこではちょうどトモさんが人数分のマグカップとお菓子を用意してくれていて、おれとレイさんの姿を見るなりニカッと真っ白な歯を見せて笑った。
「おう!ひなちゃん、目ェ覚めたか!もう大丈夫か?」
「はい、ご心配をお掛けしてすみませんでした…。あと、助けて下さってありがとうございました」
「そんなん気にしない!ほら、座って。ミルクティーいれたから。ちゃんとふーふーして飲むんだぞー?」
レイさんに手を引かれてふかふかのソファに腰を下ろすと、トモさんがほわほわと湯気を立てるマグカップを手渡してくれて、わしわしと頭を撫でられた。
レイさんとトモさん、二人ともまったく違う手つきなのに何故かどちらも触れられるとすごく安心できて、まるで魔法にかけられたみたいだ。
言われた通りふーふーと息を吹きかけて少し冷ましてから、頂いたミルクティーを口に含むと、二人みたいな優しい味がした。
「今日はもう遅いからこのまま泊まってけよー。明日の朝、家の近くまで送ってやるから」
「そんな…!そこまでご迷惑お掛けする訳には」
「迷惑だなんて思ってないから。それにひなくん、俺達に何か話があってあそこにいたんじゃないの?」
そうだ。
あのクソ野郎共のせいですっかり忘れかけていたけど、元々おれはトモさんとレイさんに相談したいことがあってずっとSTSの前で待っていたんだった。
今からそれを話したら、きっと帰宅するには遅すぎる時間になってしまう。
だけどこのシチュエーションは、相談を持ちかけるには絶好のチャンスだ。
今を逃したらもうこんなチャンスは巡ってこないかもしれない。
クソ野郎共から助けてもらって、倒れたところを介抱してもらって、お茶までご馳走になって、その上夜遅くまでおれの相談事に付き合わせて家に泊めてもらうだなんて、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだけど。
こんな風に頼れるのも、この二人しかいないから。
「あの…実は…」
ここは、二人の優しさに目一杯甘えさせてもらうことにしたんだ。
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