17 / 61
熊谷 純平
キス 2
しおりを挟む「ひなくん、辛くない?おれ、しても大丈夫?」
「大丈夫だよ」
流石にちょっとなおが気の毒になって、肩をポンポン、と叩き慰めているうちに、こたのターンが始まった。
ひなを気遣うような言葉を掛けながらも、肩を抱き、太ももをさすっているところが抜け目無いなと思う。
「こたも、ちゅーしたこと、あるんだよね…?」
「んー?んーまあ、あるにはある…けど、別に好きな相手とかじゃなかったし、頼まれて仕方なく…って感じだったから、おれの中ではノーカン」
「そうなんだ…なんか、変なこと聞いちゃってごめんね?」
「ぜーんぜん気にしてないよ!それより、おれもちゅーとか慣れてないから、嫌だったら教えてね?」
「うん、わかった」
んじゃ、失礼しまーす、と、色気の欠片も無いセリフを口にし、ひなの唇に自らの唇を重ねるこた。
ただくっつけて離しただけのそれは、色事とはかけ離れていたけど。
たったそれだけで、ぽぽぽと頬を赤く染める2人を見ているとなんだか無性に応援したくなる。
「…いや、初々しすぎやろ」
けいの呟きにただただ頷くしかない。
指導に来たトモさんも、この二人見てると青春時代を思い出すなぁ、なんて言ってる。
こたは、ひゃー照れるー、なんて言いながらその勢いでひなをベッドに押し倒し、その胸元にグリグリと顔を擦り寄せている。
やっている事は結構大胆なのに、最早大型犬が飼い主にじゃれついているようにしか見えないのが不思議だ。
「ひなくんの唇柔らかいね」
「そうかな?」
「うん。ねぇ、もう一回してもいい?」
「いいよ」
飼い主のよしを待ってからご馳走にありつく、躾の行き届いた大型犬こと、こた。
「んーふわふわであまくておいしい…もっと…」
そう言うとその大型犬は、飼い主こと、ひなの唇をぺろぺろと舐め始めた。
「ん、んっ、ちょ、こら…っ」
「弟、息子ときて今度は犬か…すげぇなあいつ」
「俺も同じ事考えとったわ」
「まじかよ、オレもだわ」
いまだ撃沈しているなおを除くオレら3人にそう思わせるなんて、こたの犬っぷりはなかなかだ。
暫くそうして犬モード全開でひなの唇を舐めたり甘噛みしたりしていたこただったが、終了時間が来たことを告げられ身体を起こした途端、急に顔付きが変わった。
「…ごちそうさまでした」
今までの初々しさが嘘のようにセクシーな表情でニヤリと口角を上げ、自らの唇をぺろっと舐めてそう告げたこたに、組み敷かれたひなだけでなく、オレ達全員が呆気に取られてしまう。
しかしそんな雄臭い表情は一瞬で消え、今まで通りの甘えた表情でひなの口元を袖口でぐしぐしと拭っているこたを見ていると、まるで幻覚でも見せられたような気分だ。
「ごめんねぇ、口のまわりぐしょぐしょになっちゃった」
「…へっ?あ、う、うん、だいじょぶだよ」
「…ねぇ、お前それ無自覚?それとも狙ってんの?」
「え~?なにが?」
こたと場所を交代し、ひなを抱き起こしながら問い掛けるりゅうに、本気で分からないといった様子で首を傾げるこた。
「自覚無しとかマジかよ…」
「おれ、ちょっとどきっとしちゃった」
「えっ、ホント?超嬉しい!」
ひなの言葉に無邪気に喜んでいるこの男が、アレを自覚無しにやったのかと思うと末恐ろしい。
11
お気に入りに追加
817
あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集
あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。
こちらの短編集は
絶対支配な攻めが、
快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす
1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。
不定期更新ですが、
1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
書きかけの長編が止まってますが、
短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。
よろしくお願いします!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった
cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。
一途なシオンと、皇帝のお話。
※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる