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柏木 雛汰
施設見学とグループ分け
しおりを挟むその後もなんとなく、なおさんとじゅんくんと3人でかたまって、建物の中を見て回った。
先程までいた『room A』の並びには、同じ大きさの部屋、『room B』がある。
この二部屋は主に講習用で、今後、タチネコで分かれて講習を受ける際には別々の部屋を使用することもあるらしい。
1階にはその他にもいくつか部屋があったが、そこはおれ達生徒が使用することは無いとの事で省略された。
この建物は3階建てで、2階はレーベルの人達が使用するフロアなので、ここもおれ達生徒が足を踏み入れる事は無い。
エレベーターで3階へと上がると、トイレとシャワールーム、少し広めのバスルームまで備えられたロッカールームに案内された。
「実践系の講習がある時には、ここで着替えたり、事前の準備をしてもらったりします。バスルームは撮影で使う事もあるよ」
──事前準備って、アレの事だよね…。
なんとなくの予備知識しか無いけれど、レイさんの言う事前準備が何をさしているのかはおれにも分かる。
この場所でそういった事が行われていると思うと、なんだか急に生々しく感じられ、ぼんやりと脳内に浮かんできたその光景をかき消すようにブンブンと首を横に振ると、隣にいたなおさんにちょっと笑われてしまった。
ロッカールームの隣にはメイクルームがあり、その隣に、実践系の講習で使用する部屋がある。
普段はAVの撮影に使われているらしいそこは、横長の大きな部屋が、更にタイプの異なる3つのブースに分けられていた。
入口から見て1番奥が、the 男の部屋、と言った感じのシンプルなブース。
真ん中が、ピンク、白、パステルカラー、キラキラ、フリフリをこれでもかと散りばめたキュートなブース。
1番手前が、モノトーンで纏められたスタイリッシュなブース。
そして、それぞれのブースには、雰囲気に合ったソファとベッドが設置されていて、そこを使って実践系の講習を行う。
──ここであんなことやそんなことを…。
想像力豊かなおれの脳内にはまたしてもいかがわしい光景が浮かんできたけれど、また首を振ってなおさんに笑われてしまったら恥ずかしいので、じゅんくんの自己紹介を思い出す事で脳内をリセットした。
この部屋で見学はお終いということで、おれ達はまたエレベーターに乗り込み1階のroom Aに戻ると、次はいよいよ実践系の授業を行うペアを決める。
実は先程見学の為に部屋を出る前に、全員、相手役は誰がいいか紙に書いたものをレイさんに渡していた。
タチは相手役になって欲しいネコを1人選んで名前を書き、ネコは相手役になって欲しいタチを5人選んで名前を書く。
それらを照らし合わせて、希望がマッチングした者同士はそのままペアとして決定し、マッチングしなかった人達は公平にくじ引きで振り分けるとの事だった。
隣室でトモさんとレイさんによるペア決めが行われ、おれ達はそれが終わるのをドキドキしながら待つ。
暫くしてペア決めを終えた2人が戻ってくると、部屋の空気が一気に緊張感に包まれた。
まずは、タチの生徒の名前が呼ばれ、5人ずつに分かれて座る。
──あ、なおさんとじゅんくん一緒だ。いいなぁ、おれ、あそこがいい…。
おれは、希望する相手役の名前になおさんとじゅんくんの名前を挙げていた。
その後も次々とタチの生徒の名前が呼ばれていき、最終的に5人ずつに分かれて座ったグループを見やると、なんとおれが相手役として希望していた人達が勢揃いしたグループが出来上がっていて、それを見てしまったらどうしたって期待が高まる。
レイさんに手を引かれ連れて行かれたのは、期待した通り、なおさんとじゅんくんがいるグループだった。
「っしゃー!ひなきたー!」
──もう、じゅんくんてば。そんな反応したら、折角相手役に誰を希望してるか分からないようになってるのにバレバレじゃん…。
なんて内心思いつつ、そんなじゅんくんの正直な反応にちょっとほっこりしてしまう。
──ていうか、自分で名前書いといてあれだけど…このグループ顔良っ!
この場にいる全員、顔面偏差値高めだと思っていたけど。
こうして見ると、今おれの目の前に集まっている5人はその中でも飛び抜けて顔が良い。
おれって面食いだったの…?
人生24年目にして知る衝撃の事実。
傍から見てもやっぱりこのグループはオーラが違うみたいで、トモさんも、アイドルグループみてぇだな…なんて言っている。
おれが名前を書いたのは、まず1番目になおさん、2番目にじゅんくん。
そして3番目には、こたさん。
なんとなく面白そうだったから…という、めちゃくちゃ薄っぺらい理由でこのスクールに入ったらしい彼は、人懐っこい笑顔が印象的で、仲良くなれたら楽しそうだな、と思って名前を書いた。
4番目は、りゅうさん。
彼はこのレーベルに所属している男優さんで、ゲイビデビューが決まっているのに同性とセックスをした経験が無い為、経験値を積むよう社長さんに言われてこのスクールに入ったらしい。
ものすごくガタイがよくて、あの太い腕に抱かれたらどんな感じなんだろう…という興味に突き動かされるまま、名前を書いた。
最後は、けいさん。
コテコテの関西弁で明るく話す彼が、時折見せる陰みたいなものになんとなくシンパシーを感じたのと、18人いる生徒の中で彼だけが唯一、このスクールに入った理由を話さなかったことが気になって。
ペアに選ばれて距離が近づいたら、その内聞き出せないかな…という野次馬心剥き出しで名前を書いた。
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