【R18】ウブな雛が猛獣と猛禽類と幻獣とえっちな勉強をする話

枯枝るぅ

文字の大きさ
上 下
2 / 61
柏木 雛汰

未知なる世界

しおりを挟む

「おっきくなったら、ぼくのおよめさんになってくれる?」


──昨夜の夢では随分と懐かしい場面を見た気がする。


懐かしいけれど、決して忘れる事の出来ない場面。
大好きで大好きで堪らなかった初恋の人。


「はぁ……」

長い溜息に切ない気持ちを込めて吐き出し、ベッドを抜け出した。
今日、これからおれは未知なる世界に足を踏み入れる。
不安が全く無いと言えば嘘になるが、今はそれよりもワクワク感の方が勝っていた。


──おれの名前は柏木 雛汰。ふつうよりちょっとかわいい成人男性。

そう、自分で言うのもなんだけど、おれはふつうよりちょっとかわいい。
なんならそこらへんの女の子よりかわいい自信がある。
子供の頃から、周囲に可愛い可愛いと言われて育ち、それを嫌だと思った事は無かったけれど、中学生になるとこの容姿は、思春期真っ只中の子供達のイジメの標的になった。

男子からは、
「男のくせに」
「オカマ」
「きもい」
などと言われ。

女子から好意を持たれ告白された事も何度かあったけれど、その度に断っていたらいつしか、
「調子に乗ってる」
「勘違い男」
「ホモ」
と言われた。

そうしてイジメられはしたけれど、おれは別に傷付いたりしなかった。
何故なら、調子に乗ったり勘違いしているつもりなど無く、オカマ…というのも少し違ったが、ホモという点に関しては間違いでは無かったから。
これまでの人生で恋人がいた経験は一度も無いけれど、きっとおれは同性愛者なんだと思う。
異性に全く興味が無かった為、告白されても頷く事が出来なかった。
毎日投げ掛けられる悪意を持った台詞のオンパレード。
傷付きはせずとも、それなりに嫌気もさしてきて。
おれは学校へ行くことを辞めた。

有難いことに両親は、もう学校へは行きたくないというおれに、深く理由を探る事なく通信教育という選択肢を与えてくれ、そうして高校卒業まで通信教育を受けたおれは、父親の知り合いが経営するカフェでアルバイトをはじめた。
ほとんど学校に通わなかったおれが接客業なんて出来るのかと不安もあったが、優しいオーナーや両親のサポートのお陰で大きなトラブルもなく、働き始めて早6年目。
家族や職場に恵まれてそれなりに幸せに過ごしてきたおれが、今直面している問題がある。

それは、これから先もずっと、誰とも愛し合うことなく一人で過ごすのかという寂しさや不安、焦り。
…早い話、いい加減恋人が欲しい。

元々おれは、自他共に認める甘えたがりで寂しがり屋。
愛する人に抱き締められながら眠りたいという願望は、ふわふわのぬいぐるみ達に囲まれて眠る事で抑え込み、人肌恋しい時には愛犬達を抱き締めてやり過ごした。
恋人を作ろうと思った事は何度もある。
でもおれは同性にしか興味が無いし、そもそも友達と呼べる存在すらいないし、どうやったら恋人が出来るかなんて分からなかった。

そして何より、おれにはこれまでの人生でたった一人だけ、どうしても忘れられない相手がいた。

まだおれが幼稚園に通うぐらいの歳だった頃、近所に引越してきた一つ歳下の男の子。
すぐに仲良くなり、幼稚園から帰ってくると毎日のように一緒に遊んでいた。
幼稚園児が、大人になっても忘れられないような恋心を抱くなんて、と、今思うと不思議だけれど。
おれは、無邪気な笑顔が可愛くて、けれど、幼稚園児のくせにどこか少し大人びている彼に、間違いなく恋をしていた。
そしてそれは、彼も同じだったと思う。


「おっきくなったら、ぼくのおよめさんになってくれる?」


ニコニコといつもの無邪気な笑顔で、向かい合い、両手を握られ、そう言われた。

嬉しかった。

ずっと一緒にいられるんだって思ったら、幼いながらにドキドキした。

…でも彼は、その数ヶ月後、両親に手を引かれて遠い街へと引越して行った。

それだけだったら、もしかしたら大人になった彼が、おれの元を訪ねて来てくれたかもしれない。
けれどおれも、彼が去って行った数年後に引越すことになり、それも叶わなくなってしまった。
つまり、多分もう二度と、彼に会うことはない。それでも。


──彼意外と愛し合うなんて考えられない。


それが、おれが今まで恋愛出来なかった一番の理由。

我ながら、なんてピュアなんだろう。
けれど、おれももう24歳。
いつまでもこのままではいられない。
寂しさを埋める術を探すべく、その日もいつものように、ゲイ専門の出会い系アプリを眺めていた。


「STS 6期生募集…?」


あてもなくぼんやりと眺めていたスマホの画面の中に、見慣れぬ文字を見つける。
元々好奇心も旺盛なおれは、湧き上がる興味に抗えず、控えめなサイズで記されたそのリンクをタップして…。
そのページを見た時の衝撃は、多分一生忘れないと思う。


Sexual Techniques School、通称STS。
女人禁制のそこは、早い話、ゲイ専門のセックスの学び舎という事らしい。


「セックスを学ぶって…バカなの?」


なんて、つい独りでツッコミを入れてしまったおれは間違っていないと思う。
だって、したことはないけれど、セックスって人から教わるものでは無い筈だ。
それともおれが無知なだけで、実はセックスって人から教わるものなの…?
イマイチ自分の中の常識に自信が持てず、そのままページを読み進めてみる。

講習は、毎週金曜日の18時から22時。
全16回。
内容としては、AV男優でもある講師による座学から始まり、映像や実技の鑑賞、生徒同士による実践も有りとツッコミどころ満載だ。
しかも、修了時発表なるものが有り、ペアを組んで全生徒の前で行為を見せ、投票で一位になったカップルは授業料免除らしい…完全にどうかしている。
募集要項は、20歳以上35歳未満の男性で、定員はタチネコそれぞれ15名。
定員を超えた応募があった場合は抽選になり、タチネコどちらかが定員割れした場合、1名に対して複数名の相手役がつく場合も有るそうで。
それってネコが定員割れした場合身体の負担が大き過ぎるのでは…?とか、そもそもこれはこの国の法律的にアウトなのでは…?などと色々思うところはあったけれど。
汗ばむ掌に握り締めたスマホの画面には、『受付が完了しました』と表示されている。

たとえば、スクール内では本名は伏せ、偽名を使わなければならない、とか。
予め性病検査を受けて、その結果を本人確認書類と一緒に送付しなければならない、だとか。
はちゃめちゃなスクール説明文の下に、そんな風にちょっとまともっぽい事が書かれていたものだから。
掲示板で知り合った見知らぬ誰かとマンツーマンで会うより、よっぽど安全なんじゃないか…?それに、同じセクシュアリティの友達ができるんじゃないか…?と思ってしまったんだ。

自分ではどうすることも出来ない程に膨れ上がった寂しさに押し潰されて息苦しさすら感じ、冷静な判断が出来なくなっていたんだと思う。
こうしておれは、未知なる世界への第一歩を踏み出した。




しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

カテーテルの使い方

真城詩
BL
短編読みきりです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

処理中です...