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忘れられた悪魔
助けて…
しおりを挟むハァっ……ハァ、…っ、ハァ……
リヒトが……あんなに毎日惜しみなく沢山の愛をくれた大好きなリヒトが、おれを、本気で祓おうとした…。
その事実に胸が張り裂けそうな痛みを感じながらも、追いかけてくるリヒトから必死で逃げていると、足が縺れて転んでしまったおれは、たまたま近くにいた小鳥に憑依し、リアム、カイ、ケンさん、クオンがそこにいることを願って祓魔師協会を目指し飛び立った。
「おー、ルカ。おはよ。……ルカ?」
「ルカ?!どうした?!」
「……たす、けてぇ……っ」
小さな羽を力いっぱい羽ばたかせ、なんとか協会の中庭に降り立つと、そこには不幸中の幸いと言うべきか、ちょうどクオンとリアムがいた。
憑依を解き、ふらつく足で二人に歩み寄ると、こちらに気付いたクオンが声を掛けてくれて、頼れる人達に会えた安心感から尻もちをつきそうになったおれの身体は、すんでのところでリアムの太い腕に抱き留められた。
「ルカ、何があったの?リヒトは?一緒じゃないの?」
「くおん…っ、りひと、おれのこと、はらおうとして…っ!」
「はぁ?!おい、どういうことだルカ!」
「落ち着けリアム。ルカも、大丈夫だから落ち着いて?何があったか話せる?」
「…っ、りひと…、りひと、が、おれのこと、忘れちゃって……それで、おれを…おれが、悪魔だから、はらうって……」
「…詳しいことはよく分からないけど、ここじゃもうすぐリヒトも来る。一度ケンさんのところに行って相談してみよう。ね?」
ボロボロと大粒の涙を零し、ひっくひっくとしゃくり上げながら助けを求めるおれにクオンが優しい声でそう提案してくれて、険しい顔をしたリアムに抱き上げられ、ケンさんの執務室へと向かう。
扉をノックし、中から出てきたケンさんにクオンが事情を説明すると、心配そうな表情のカイと共に中に招き入れてくれて、自分の仕事を中断してまでおれの話を聞いてくれて、彼らの優しさにまた涙が溢れて止まらなくなった。
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