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誓い
リヒトの危機
しおりを挟むその後ケンさんとクオンを執務室に呼び、カリーナの件を伝え、早めに帰宅してルカに事情を話し、仮眠をとってカリーナの家を訪れると、前回とは打って変わってただならぬ気配を感じ、背中を嫌な汗が伝い落ちた。
出された食事も喉を通らない程の緊張感。
祓魔師になってそれなりの年数が経っているが、ここまで空気が重いと感じることは滅多に無い。
前回と同じようにカリーナには寝室で休んでもらい、俺は隣の物置部屋で待機するが、前回のように余計なことを考えている余裕など一切無く、ただ息を潜めて十字架と聖書を握り締め、神に祈りを捧げた。
すると突然、気配だけだったそれまでとは比べ物にならない程空気が重くなった。
カリーナの悲鳴を聞くまでもなく分かる。
(…来た。)
そう確信した俺は物置部屋を飛び出し、寝室の扉を開けると同時に部屋に結界を張ろうとした。
…した、のだが、扉を開けた途端こちらに向かって飛んできた攻撃を躱すのが精一杯で、結界を張るどころでは無かった。
「今の躱せるのか!人間のくせになかなかやるなぁ!」
薄暗い寝室の中。
ベッドの上で震えているカリーナはこの前と同じ。
だけど決定的に違うところがある。
それは、大きな出窓の前にもう一つの影がある、ということ。
羽根の大きさからして恐らくリアムやカイと同じ中級だ。
背丈はルカとほぼ同じか少し大きいぐらい。
ただ、放つオーラの禍々しさが彼らとは圧倒的に違う。
「…お前、淫魔じゃないな?」
「おぉ~、流石祓魔師。やっぱバレるかぁ。まぁいいけど」
カリーナは「寝込みを襲われた」と言っていた。
だからてっきり前回と同じ…いや、前回のは結局嘘だったけれど、淫魔に襲われた、という意味だと思っていた。
だけどこいつは淫魔じゃない。
一体何が目的でカリーナの寝込みを襲っていたのだろうか…?
まぁでも、そんなことはどうだっていい。
こいつが淫魔だろうが淫魔じゃなかろうが、悪魔である以上祓うべき対象ということは変わらない。
十字架を掲げ、聖書を開いて祈りの詠唱を始める。
するとどうしたことだろう。
普通の悪魔ならここで抵抗を見せるというのに、今目の前に立っている悪魔は全く抵抗する気配を見せない。
それどころか、笑っている…?
今まで見たことの無い悪魔の反応に若干戸惑いつつも詠唱を続けていた、その時。
後頭部にビリッと痺れるような痛みを感じ、驚いて振り返るとそこには、前方にいる悪魔と全く同じ顔をした悪魔が、もう一体立っていた。
(…しまった、二体、いた…。)
気付いた時には、もう遅く。
ニヤリと笑う二体の悪魔の姿が次第にボヤけていき、目の前が真っ暗になった。
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