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誓い

焦りと苛立ち

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...そうは言ったものの、なかなか思い通りにいかないのが現実というもの。

あの後、お互いを味わい尽くすようなキスをして、そのままセックスまでもつれ込みたかったところだけどそんなことをしたら徹夜の任務などこなせる訳がないので仕方なく荒ぶる息子を鎮めて仮眠を取り、へにょんと眉毛を下げて見送ってくれたルカに後ろ髪引かれる思いで家を出た。

それと同じようなことをもう二週間も毎日続けているのに、今まで毎晩現れていたという淫魔は一向に姿を見せる気配がない。

朝になり、帰宅する度に駆け寄ってきて「どうだった…?」と聞いてくるルカに無言で首を振り、それを見たルカが肩を落とす、その繰り返しもいい加減辛くなってきた。

何故俺が張り込み始めた途端に姿を見せなくなったのだろう。

カリーナが寝室で休んでいる間俺は寝室の隣にある物置のような部屋で待機し、気配を消す結界のような術を自分自身にかけている為、俺の存在に気付かれ警戒されているということはほぼ無いはずだ。

それに、初めてカリーナの家を訪れた時から感じていた違和感。
普通、一度でも悪魔の類が出入りしたことのある家は、ある程度時間が経過していない限りなんとなく気配が残っているものなのに、カリーナの家にはそれが全くない。

...一体どういうことだ?

今まで経験したことの無い状況に、焦りと苛立ちばかりがつのる。

そんな俺をよそに、依頼主であるカリーナは一時的にでも淫魔から解放された喜びからか、初めて会った時の怯えたような表情とは一変して毎日とても楽しそうで、夜になり、俺がカリーナの自宅を訪れると決まって夕食を振舞ってくれた。

正直言って俺はカリーナの手料理よりもルカの手料理が食べたいし、もっと言うとルカを食べたい。
とはいえ神父の俺が食糧を無駄にする訳にもいかず、毎晩有難く頂戴しているのだが。
ダイニングテーブルを挟んだ向かい側では無く何故か俺の隣に座り、甲斐甲斐しく世話を焼いてくるカリーナが気になって食事に集中出来ない。

気になる、というのは、悪い意味で、だ。

彼女の中にはパーソナルスペースという概念が存在しないのか知らないが、とにかく距離が近く、食事中に至近距離で見つめられるのは気が散るし、何かとボディタッチも多い。

それに、偶然を装って俺の腕に豊満な胸を押し当ててくるのも堪らなく不快だった。

恐らく、普通であれば男にとって垂涎もののシチュエーションだろう。

だけど俺はルカ一筋だし、興味の無い相手に勝手にベタベタ触られたり触らせられたりするのはただただ迷惑なだけだ。

ただ、それを指摘するのもそれはそれでこちらが意識しているようで面白くないので、至近距離から見つめてくる視線も無遠慮に押し付けられた胸も全て無視を決め込んでいる。
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